欧州医療機器規制管理プロセス ―重要な問題の研究、検討、解説―

規制管理の問題により、医療機器をタイムリーに市場に投入できなくなるケースがある。 本記事では、欧州における医療機器の販売に先立って克服しなければならない重要な規制管理の障害について論じる

新技術の研究開発に力を注いで臨床問題を解决する企業は、主な精力を最適化した技術と会社の財務安定維持に集中させる必要があり、この点はよく理解できる。但し、開発プロジェクトの早期段階で規制適合性に関する問題を考慮しないと、その製品の発売準備時に問題が生じることがあり、非常に重大な製品発売時期の延期を引き起こすことがある。これは重大な連鎖的またはマイナスの影響につながり、特に発展早期の企業にとっては衝撃がより大きくなるため、重要な投資の節目を乗り越えることができないと、企業の生き残りにまで影響する。

早期に規制管理問題を考慮

企業の初期ビジネスプランにはマーケティング戦略と密接に対応する規制管理戦略を含めるべきである。事実、規制管理戦略がマーケティング戦略の発展を推し進めることがよくある。

企業の早期段階であっても、信頼できるプロフェッショナルな規制管理に関するアドバイスを得ることは、技術と臨床の進歩が規制管理の問題に対する理解不足によって無駄になることがないよう確約する鍵でもある。そのような助言は、従業員またはコンサルタントから得ることもできるが、こうしたアドバイスが事業の行方を左右することがある。

二大市場、二つの体系

ほとんどの企業は最終的に機器を米国と欧州の市場で発売しようとする。しかしながら、これら二大市場の規制管理体制には大きな違いがあるため、これら二つの体系を理解することが非常に重要である。これは一部の機器が一つの体系下でもう一つの体系下よりも容易に認可を獲得して販売できる場合があり、それが企業の前進方向に重大な影響を生じることがある。

これら二つの体系はいずれも患者に対する認知されたリスク(Perceived Risk)に基づいて機器を分類しているが、最終的に形成される分類が同じではない。各体系下の分類が確定した後、「市場へのルート」の要件と選択がよりクリアになるため、企業はこれに基づいてその規制管理とマーケティング戦略を確定し、必要とされる自信を投資家に対して示すことができる。

本記事では、欧州の医療機器規制管理体系を重点とする。米国の体系は別の記事で紹介する。

欧州医療機器指令

欧州医療機器指令は主に、医療機器指令(MDD; 93/42/EEC)、能動体内埋め込み型医療機器指令(AIMDD; 90/385/EEC)、体外診断用医療機器指令(IVDD; 98/79/EC)の三つがある。

本記事では重点的にMDDを紹介する。MDDは市場におけるほとんどの医療機器を網羅している。MDDとAIMDDの最新版は2010年3月発効の指令改訂版(2007/47/EC)であり、本記事では2007/47/EC改訂版MDDについて論じる。これら三つの指令の最新統合版は欧州委員会ウェブサイトで取得することができる。

これら指令は現在すでに次の国家で完全な認可を獲得している。

オーストリア、ベルギー、ブルガリア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スイス、英国。

このほか、それぞれ異なる連合加入段階にある欧州連合の「候補国」には、クロアチア、マケドニア、セルビア、トルコがある。

——欧州の規則体系

欧州MDDが対象とする医療機器は、市場へのルート確立の鍵が機器分類を確定することにある。欧州の分類体系は「規則に基づく」ものであり、製造業者がその生産する機器の分類確定の責任を負う。これら規則はすべて番号順にMDD付属書IXに記載されているが、決定木としてみなすこともできる。欧州の分類規則適用公式ガイドラインMEDDEV 2.4/1第9版にはプロセスチャートが含まれており、製造業者が正確な分類決定を行うために役立つ。

欧州では、認知されたリスク(Perceived Risk)の程度に基づいて医療機器は四つのクラスに分類される。

クラスI: 最低リスク

クラスIIa: 中リスク

クラスIIb: 中高リスク

クラスIII: 最高リスク

能動体内埋め込み型医療機器には専用の指令があるが、この規制管理の概述においてはそれらをクラスIII相当の機器とみなすことができる。

機器分類は製造業者に市場へのルートの選択(「適合性評価ルート」)を提供する。

認知されたリスク(Perceived Risk)の高まりは、機器が欧州市場で認可を獲得して発売される前の規制管理審査レベルの上昇につながる。実質上、MDD要件に基づくと、クラスIの機器に対しては、製造業者がMDD付属書I中の基本要求(ER)を満たしたと確信する場合、MDD付属書VII(「EC適合宣言」ルート)の要求に従って自己宣言過程を完了すれば、CEマーキングを獲得することができる。

中の臨床リスクレベル

規則に基づく欧州分類体系は、侵襲性と使用期間に基づいて機器を異なる臨床リスクレベルに分類している。このほか、別途「能動」機器(人体または重力の作用により生成されるエネルギーではなく、電源からの給電に依存する機器で、エネルギーを変換して作用を発揮する必要がある)とその他特定の機器タイプ(例:薬剤と機器の組み合わせ製品、避妊器具、血液袋、乳房移植物)に対する追加規則がある。2種類の異なる規則が1つの機器に適用可能な場合、より高いクラスの規則を適用する必要がある。

製造業者が各種機器タイプに対して準備する技術資料には分類の理由を含めなければならない。

公認機関の関与

クラスI機器において、滅菌機器または測定機能を備えた機器として販売される場合のみ、欧州連合加盟国の1つが指定する公認機関(NB)が第三者監督を行う必要がある。その場合にも、NBの活動は機器の上述の特定面に限定される。

クラスIIaとIIbの機器に対しては、NBの関与が必須であり、その職責は次のとおりである。

1) 付属書II(全面品質保証、ISO 13485:2003の要件と類似)、付属書V(生産品質保証)または付属書VI(製品品質保証)の要件に基づき、製造業者の品質マネジメントシステムを評価する。

または、

2) 付属書III(EC型式検査)に基づいて機器がすでに「型式検査」を経ており、且つ指定の機器設計を満たすことを確認する

または、

3) 付属書IV(EC確認)に基づき、各機器(または機器各ロット)の発売前に機器に対して試験を行う。

クラスIIa機器は、製造業者が別途付属書Vまたは付属書VIで品質マネジメントシステム認証を行うことを選択した場合に限り、付属書VIIを採用することができる。反対に、クラスIIb機器のリスクは比較的高いため、製造業者は付属書VIIを採用することはできない。

NBはまたクラスIII機器のCEマーキング認証プロセスにも関与する必要があり、次の二つの異なる方式を含む。

1) 製造業者はNBにその全面品質保証システムに対して認証を行うよう申請することを選択できる(付属書II)。但し、「設計書類」をNBに提出し、審査を受ける必要がある(付属書II第4款)

または、

2) 型式検査(付属書III)とEC確認(付属書IV)の2つのプロセスまたは生産品質マネジメントシステム認証(付属書V)を完了することができる。

上述のいずれのルートもクラスIII機器の発売前に、その製品設計が正式なNBによる評価と認可を経る必要があることを意味する。

適合性評価ルート

初心者にとって、適合性評価ルートの選択は複雑に見えるかもしれない。このため、製造業者が選択可能なオプションを確定する支援として図が多用されている(下表1を参照)。

 

表1:欧州医療機器適合性評価ルート(クリックで拡大)

 

クラスI機器については、製造業者が設計過程の初期段階でその関連の欧州指令遵守を考慮し、かつ開発の各段階で関連の基本要件をきちんと考慮していれば、CEマーキングの獲得が相対的に早くなる。

 

NBの関与が必要な場合、できるだけ早く選択し、NBが製造業者の品質マネジメントシステムの準備状況、または機器型式検査までの時間を評価するための事前監査訪問を手配できるようにするとよい。設計書類審査を行う必要がある、または型式検査的クラスIIIの機器については、選択する前に複数のNB候補機関の時間見積表を取得すべきである。

 

規格の使用

欧州医療機器規制管理体系は医療機器指令付属書Iに簡潔に記載した要件一覧が含まれているが、大部分の詳細情報は欧州整合規格中に記載されていて、この規格に従うことで基本要件に対する「適合の推定」が可能である。欧州委員会ウェブサイト(http://ec.europa.eu/enterprise/policies/european-standards/documents/harmonised-standards-legislation/list-references/index_en.htm)で関連規格を閲覧することができる。

整合規格の1つがEN ISO 13485:2003、「医療機器 —品質管理システム— 規制要件」である。この規格に従うことで指令の品質保証要件への適合を推定できる。

品質マネジメントシステム要件

前述のように、クラスI機器は欧州において品質マネジメントシステム(QS)が不要である。このほか、EN ISO 13485の設計管理条項はクラスIIa、Iib、III機器に対してはオプションである。但し、設計管理がなされていないクラスIIbとIIIの機器に対しては、NBが型式検査手順で製品の代表的サンプルに対し審査と認定を行う必要がある。

会社がそのマーケティング活動を米国または欧州のどちらに集中させるかの選択に基づき、会社は会社の目標と規制要件を満たすQSを選択かつ確立する必要がある。QSRとEN ISO 13485の2組の要件を完全に満たすQSは完全に達成可能であるものの、両方の要件を満たすQSの開発時には違いを考慮する必要がある。

基本要件を満たす

MDDの付属書Iには約90条の基本要件(ER)が列記されている。特定の機器が関連のERを満たすことを示すために用いられる方法が、各機器に対するERチェックリストを作成することである。これは表形式のERリストであり、各欄をERが対象機器に適用されるか否かの表示、適用される欧州整合規格の表示、確定された規格またはERを満たすことを証明する内部または外部試験報告書の参照の提供に使用することができ、さらに「備考」欄を追加することができる。

このチェックリストは一般に設計と開発の過程で記入され、すべての適用されるERについて該当する欄に検証の参照先が記載される。完成させたら、適合宣言を行い、機器のCEマーキングを獲得することができる。

臨床評価

欧州規制管理要件を満たすため、各機器の技術書類には臨床試験以外のみに基づいて機器の安全性と性能を宣言できる場合を除き、臨床評価を含める必要がある。臨床評価は定義済みかつ妥当な手順に従って次のいずれかの面で評価を行う。

欧州委員会が公布済みの臨床評価ガイドラインMEDDEV 2.7.1、これは国際整合化会議(GHTF)がこれ以前に公布したSG5/N2R8:2007指針報告書ときわめて類似している。

リスク管理

リスク管理は欧州医療機器規制管理体系の基礎であり、開発の早期段階で正式なリスク分析を行い、かつその後の設計過程で適宜更新する必要がある。初期のリスク分析結果は機器の設計インプットの1つであると捉える必要があり、かつそれはすべてのERへの適合性を証明するために人体臨床研究を実施する必要があるか否かを確定する鍵となる文書となる可能性がある。リスク分析の過程では可用性を考慮に入れ、予見できる誤用のリスクをすべて考慮して、それらを減少する必要がある。

市販後要件

「市販後要件」は製造業者が生産後の段階に行うべき活動であり、機器の不具合事象の適切な管理、販売済みの機器に対する適切な是正措置および予防措置を含む。

上述の活動を描写するために異なる用語が使用されており、米国と欧州で用いられる語彙そのものに違いがある。欧州では次の用語を用いている。

• 医療機器安全性監視システム(Medical devices vigilance system):(欧州で)不具合事象の報告と市販後是正措置の両方に適用されるシステム。

• 安全性監視報告書(Vigilance report):不具合事象の詳細に関して欧州所轄当局に提出する報告書。

• 市場安全性是正措置(FSCA):販売済みの機器に対する市販後活動であり、死亡リスクまたは健康状態に重大な悪化を引き起こすリスクを削減することを目的とする。

• 市場安全性通知(FSN):FSCAに関連する顧客に対する連絡。

三つの欧州医療機器指令はいずれも機器製造業者の市販後調査要件を含んでいる。

すべての指令が製造業者に対し、生産後の段階において取得された機器の状況に対して審査を行い、適切な手段で必要な是正措置を採り、生産後の状況に対して審査を行うための体系化した手順確立を要求している。このほか、次の状況が見られた場合、所轄当局に通知する必要がある。

• 機器の特性および/または性能に故障または劣化が現れ、使用法の説明不足が患者または使用者の死亡または健康状態の重大な悪化を引き起こす可能性がある、またはすでに引き起こした場合。

または、

• 機器の特性または性能と関連がある任意の技術または医学的原因が上述の原因による機器システムの回収につながった場合。

「医療機器の安全性監視システムに関するガイドライン」(MEDDEV 2.12-1第6版、2009年12月更新)は、指令の安全性監視要件適用に関する包括的なガイドラインを提供している。

この文書は不具合事象の報告を含むだけでなく、不具合事象の報告または(保守報告書など)その他情報源からの情報の結果として、製造業者が実施することを決定した任意の市販後の措置について所轄当局に適宜知らせることも要求している。

以下のような措置がFSCAとみなされる。

• 製造業者への医療機器の返却

• 機器の改造

• 機器の交換

• 機器の破壊

• 製造業者の製品に対する改造または設計変更の購入者による改造

及び、

• 機器の使用に対する製造業者によるアドバイス。

 

ここでいう機器の改造には、以下の要項が含まれる。

• ラベルまたは使用説明書の永久的または一時的な変更

• ソフトウェアアップグレード、リモートアクセスにより実施されるものを含む

• 特に機器の特性に関連する死亡または健康状態の重大な悪化のリスクに対応するための患者の臨床管理方法の変更、及び

• 機器の使用方法の変更に関連するアドバイス。

MEDDEV文書はさらに必要なFSCAを使用者に通知するために用いるFSNテンプレートを含む。またガイドラインには初期及び最終報告書用の汎用書式も含まれているが、多くの欧州所轄当局が専用の書式またはオンライン報告システムを採用している。

米国と欧州で、規制管理当局に報告する必要がある不具合事象のタイプは非常に類似している。提供する情報のタイプも同じである。ただし、使用される書式には多くの明らかな違いがあり、並行した報告が要求される場合、個別の書式が必要となる。世界の規制管理当局は、現在不具合事象とFSCA情報を交換しているため、ある所轄当局に報告書が提出されると、往々にしてその対象機器が所轄の市場で販売されているかどうかについて各国・各地域の当局から問い合わせを受けることになる。

補完性

指令の一部要素は「補完性」のものであり、これは加盟国が指令中に列記されたオプションから自由に選択できることを意味する。補完性の内容は、ラベル言語、より高クラスの機器の地域登録、臨床調査の授権要件を含む。このため、指令は欧州の医療機器方面の多くの要件に対して整合を行っているが、各加盟国間には一部違いがあり、当該地域で機器の販売を行う前にそれらを理解しておく必要がある。

図1——CEマーキングプロセスー主要手順を表示(画像クリックで拡大)

正式代理人

欧州以外の製造業者は、欧州で正式代理人(AR)を指定する必要がある。これは、欧州以外の製造業者の欧州における姉妹企業、または一定の専門知識と経験を有し、製造業者の欧州における規制管理に係る利益を最も代表することができる独立企業とすることができる。

指令によると、ARが担う法律責任はかなり限られているが、双方が同意すれば、製造業者は特定の規制管理責任をARに自由に委任することができる。

このほか、適格なARは常に欧州の規制管理要件を満たすことができるように、欧州以外の製造業者に貴重なサポートを提供することができる。

終わりに

CEマーキングを取得するルートは、主要手順のフローチャートで表すことができ、図1に示すように、そのうちのいくつかの手順を同時進行で行うことができる。

適した市場へのルートを確定する鍵は機器分類であり、適合性評価ルートと会社のマーケティングプランを関連付けられるように開発の早期段階で確定すべきである。

 

 

<著者>

ロジャー・グレーは、Donawa Consulting社の品質および規制部長であり、企業の欧州認定代理人のポートフォリオを管理することに加え、医療技術関連の顧客が欧州と米国の両方で販売許可を取得するためのサポートを担っている。

機器産業で25年以上にわたる経験を有し、医療機器指令作成の初期段階に携わった。機械工学理学士。

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