MEDTEC 会議を前に: 薬事法に基づく承認申請のノウハウ伝授(サクラ精機、飯田氏)

「MEDTEC Japan2011」の国際会議で「薬事法に基づく承認申請等の手続きについて」(6月30日、木曜、午前11時15分〜55分)の講義をされるサクラ精機株式会社グループ統括本部担当部長 飯田 隆太郎氏に、会議を直前に控え、色々とご意見を伺った。

 

 

「薬事法に基づく承認申請等の手続きについて」のご講演で一番伝えたいことは何ですか?

わが国においては、医療機器を「業」として取り扱うためには、薬事法に規定されるさまざまな要件を満たすことが必要になります。それは製品そのものに関する要件だけでなく、人と組織に関する要件も必須になることから、予め全体の規制システムを理解しておくことが重要となります。特に医療機器業界への新規参入を計画されている方について言えることですが、法規制の全体像を把握することなしに設計開発のみを先行させた場合など、手順が混乱し、結果として“行ったり来たり”の非効率な活動となり、全体のプロセスが破綻するか、あるいは時間、労力、コストを甚だしく浪費することにもなりかねません。

また、リスクマネジメントを含む設計開発プロセスを適正に回すことによって得られるアウトプットが、そのまま承認申請用の資料を構成することからも、当初から周到な計画に基づく活動を前提としなければ早期の承認取得も困難となります。

本講ではこの点に留意し、法規制の全体像を示すしつつ、企業として必要な対応を概説いたしました。

東日本大震災以降の日本の医療機器業界はどうなるでしょうか?

今般の未曾有の大震災は、医療機器業界においても多大な影響がありました。震災直後の交通網の遮断による供給手段の喪失、深刻な燃料(ガソリン)の不足をはじめとして、原材料や部品供給の途絶、計画停電による在宅人工呼吸器等への影響、また電力不足による生産計画の見直し等々、時間の経過とともに各種の問題が相次いで生じる中、各企業とも安定供給の維持に向けて懸命の努力を払い、またそれは現在も続いております。

今般のように多方面に壊滅的な打撃を与えるような天災を前提に企業としてのリスクマネジメントを行おうとすれば、海外への移転を含む生産拠点の分散化、原材料調達先の多重化・分散化、大型自家発電機の設置などが挙げられるものの、いずれも現実性を持たない対策であり、今般の大震災を踏まえた医療機器業界のあり方(わが国の医療を適正に存続・維持させるための安定供給体制の確保)については、今後とも各種の議論を継続することが必要だと思います。

政府の成長戦略の要として革新的医療機器への開発推進は進んでいくでしょうか?

政府の新成長戦略に基づく革新的医療機器の開発推進ですが、先ず必要になるのは「環境の整備」だと思います。医療機器の開発は会議室で行われるのではなく、医療の現場で行われるものである以上、安全性の確保を前提に、各種の臨床研究が円滑に実施できる医工連携体制(組織)の確立と、このような研究開発活動を支援する制度の導入、また法規制の大幅な改善など、医療機器・医療技術の新たな開発を推進するための環境の整備を先ず先行させることが重要であると考えます。

わが国においては医薬品と同一の法律で医療機器が規制されているために、医療イノベーションを推進する観点から必ずしも適正な規制体系になっているとは言えず、「日本発の革新的医療機器の開発推進」という大看板を掲げても、なかなか地に足のついた議論にならない状況があると思います。基礎工事を抜きにしては高層ビルも建たないということでしょうか。

現在、医療機器業界が抱える一番の課題は何でしょうか?

平成17年以降、審査の長期化が深刻な問題となっています。いわゆる“デバイス・ラグ”の問題ですが、PMDAでは特に新医療機器の審査迅速化に注力し、現在では諸外国と大差のない審査期間を達成しているようですが、新規性の低い改良医療機器や後発医療機器については、未だに審査期間の短縮が見えてこない状況です。

審査に要する期間が具体的に見えないと企業も経営計画が立たず、新たな製品開発や既存品の改良計画などにも無視できない影響が生じることとなります。このような状況下において、欧米諸国のみならず、中国や韓国などのアジア諸国にまでどんどん追い越されてしまうという危機感が日本の医療機器業界には広がりつつあります。日本は、“国策”としてこの状況にどう対処するのか、が問われているのだと思います。

今後、医療機器業界はどのように変化していくとお考えですか?

既存の医療機器はますます小型化と高性能化が進むと思いますが、在宅医療の需要も継続して増大することが予想されるため、これに特化した機器の開発もますます盛んになると思います。また手術のミクロ化と低侵襲化に伴って、Computer Aided Surgeryの分野も拡大・精緻化すると考えられますが、新たなテクノロジーの投入と安全性の確保が適正なバランスを取りながら進歩していくことが、この分野では重要な課題になってくるものと思います。

また、工学技術に基づく人工臓器や、組織生体工学に基づく人工臓器の開発も継続的に発展すると考えられます。「QOLの向上」というテーマは医療機器にとって終わることのない挑戦を誘引するものだと思います。

今まで開発された医療機器の中で、一番画期的なデバイスは何だと思われますか?

平凡かも知れませんが、パルスオキシメータだと思います。開発されたのは70年代ですが、これは日本発の画期的、革新的、あるいは革命的とさえ言いうる発明品だと思います。経皮的に動脈血酸素飽和度を測定するこの装置は、当初は麻酔中のモニタリング機器として定着しましたが、小型化と高性能化が進み、現在では患者さんの呼吸動態、循環動態を簡便にモニタリングできる有効な機器として幅広く使用されるに至っています。最近では高山病予防の目的で登山者が用いる例もあります。

このパルスオキシメータの発明によって、SpOが重要なバイタルサインの位置づけを得ました。画期的な医療機器というのは、鳴り物入りで華々しく登場し、特定の疾病に対して有効性を発揮し、一時期だけは脚光を浴びるものの、次の時代には全く別の機器に取って代わられるようなもの(つまり破壊的イノベーションの波に呑み込まれてしまうようなもの)ではなく、たとえ登場の仕方は地味であっても、改良・改善が継続して行われるにつれて臨床上の適用範囲もどんどん拡大し、医療現場の認識すらも変革し、果たして長命を続けるようなものが該当するのではないかと思います。

パルスオキシメータは、今では可愛い子供のおもちゃのような姿をしていますが、文字通り歴史を変えた医療機器であり、日本人が誇りとすべきものではないかと思います。

 

飯田氏は、会議二日目(6月30日木曜日)の午前11時15分〜55分に、「薬事法に基づく承認申請等の手続きについて –医療機器を製造販売するために必要な手続きとは?–」と題した講演をされます。


飯田 隆太郎氏

サクラ精機株式会社グループ統轄本部 担当部長 

医療機器メーカーにて開発、薬事、QMSの責任職を歴任後現職。
日本医療機器産業連合会 法制委員会 委員長
一般社団法人 日本医療機器工業会 薬事委員会 委員長

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