METIS・医機連、アジア医療圏構想を政府に提言

「医療機器」官民一体でアジア市場開拓、医療機器と医療技術の統合で輸出拡大

産学官からなる医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS:共同議長、荻野和郎日本光電工業会長、梶谷文彦川崎医療福祉大学副学長)と日本医療機器産業連合会(医機連:荻野和郎会長)は、急成長するアジア医療機器市場の市場獲得に向け、官民一体となった市場開拓を求める「政策提言」を取りまとめ、内閣官房 医療イノベーション推進室(室長、中村祐輔 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長)はじめ関係府省庁に提出した。

この「医療技術のアジアとの連携・交流に向けた政策提言」(以下「政策提言」)は、世界の医療機器市場が2015年には25兆円(現在は20兆円)に拡大が見込まれるなか、人口40億人以上を擁し年率12%もの成長が見込まれるアジアを広くひとつとした「アジア医療圏構想」による官民一体の市場開拓を目指すために、オール・ジャパンとして推進が必要な政策提言項目でまとめられている。主な項目は以下の通り。

  • 1.国別・分野別に課題を絞り込み、政府を「司令塔」にして工程表・成果指標などを策定する。
  • 2.医学会からの機器ニーズとビジネスのマッチング、事業化支援、現地に適した改良・改善・技術開発、コンソーシアム形成支援、などパッケージ型政策支援スキームの構築。
  • 3.オール・ジャパン体制による海外展開関連の施策の推進

    ①官民一体の海外市場開拓の実践 

    ②政府の働きかけによるビジネス環境整備 

    ③公的機関による海外ビジネス支援策の拡充 

    ④日本初の革新的医療機器・技術の開発・実証・普及の加速化    

    ⑤ODA事業とビジネスの連携促進

  • 4. 医学会によるアジアとの交流の促進策と人材育成
  • 5.「アジア共同臨床研究拠点」の構築
  • 6.「国際医療交流」による海外展開の促進
  • 7.  中小企業支援策の拡充
  • 8. 「日本ブランド」の確率・展開

これらの「政策提言」の背景には、経済成長や人口増加に伴うアジアの医療ニーズの拡大がある。日本を除くアジアの総医療費は1兆ドル。年間増加額は、豪州一カ国分に匹敵。こうした有望市場に向けて欧米諸国が、政府を巻き込んだ売り込み攻勢をかける中、日本でも官民一体となった売り込みが不可欠とした。医学会の危機感もある。METISが昨年日本医学会の108医学会に実施したアンケートでは、アジアとの交流・連携に向けた行政の支援と産業界の協力を求める声が多く寄せられた。

「政策提言」では、日本のものづくりの力を結集した医療機器と医療技術をパッケージ化し、アジア諸国の医療ニーズに適合させて、大きな成長が見込まれる中国、インド、中東などのアジア諸国を中心に、国別に戦略を策定し、診断機器や治療機器を組み合わせて投入する海外展開や海外における薬事承認や保険収載といった規制・制度上の課題解決、医学会の交流促進、日中韓の「共同臨床研究拠点」の構築、官民ミッションの派遣や展示会への出展の強化等を揚げている。例えば、今年4月16日-19日に、中国の深圳で開催された中国国際医療機器博覧会(CMEF)では、日本貿易振興機構(JETRO)がジャパンパビリオンを展開。医機連のブースも設置された。

震災対応の経験をアジアと共有

また、政策提言は、東日本大震災以前に行われた議論に基づきとりまとめられているが、「アジア医療圏構想」では、震災などの大規模災害に対する海外への情報発信について、日本の医療ネットワークの対応システムの課題検討を行っている。

アジア諸国は、2008年の中国四川大地震、2004年のスマトラ沖地震・大津波のような大規模災害に度々見舞われており、災害に強い医療情報システムに対する関心が高い。今般の東日本大震災への対応では、日本独自の透析患者の移送ネットワークなどが重要な役割を果たした。また、医療機器製造のための部品・部材のサプライチェーンの確保や医療施設や医療機器企業と在宅医療等の停電対応などについても多くの教訓が得られている。こうした日本の経験を、共同研究などを通じてアジア諸国と共有しながら実現につなげたいとしている。

「官」の取り組みも本格始動

医療機器に関する政府の政策は、これまで国内市場に向いており、海外市場開拓には関心が薄い傾向があった。東大日本震災を踏まえた新成長戦略の再設計・再強化に向け、5月19日に政府が、海外市場開拓開戦略を重点的な政策課題と位置づけたことを受け、省庁や政府関係機関も、医療機器分野の取り組み強化を開始。経済産業省が、医療機器の海外展開ビジョンを策定し、ビジョンの具体化に向けた取り組みを本格化するなど、関係省庁の支援体制も整いつつある。

今後有望視される医療分野を巡っては、最近、ソニー、キャノン、トヨタといった異業種からの大手企業の参入が相次いでいるが、官民を挙げた体制構築により、アジア等の新興国を中心に海外市場の開拓を急ぐ。

JETROは、重要支援分野として医療機器の海外市場開拓を掲げ、海外展示会への出展や商談会開催などの事業を拡大。皮切りとして、6月23日には、医機連とJETROの共催により、「アジア医療機器ビジネスセミナー」を開催。同セミナーには、本年1月に内閣官房に設置された「医療イノベーション推進室」の妙中次長も参加し、政府の取り組みについて講演。官民一体となった、新たな売り込み方策を探る。

技術開発の面でも、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、本年度からの新規事業として、医療分野の国際研究開発・実証プロジェクトを開始。3年間で、我が国が有する医療分野や異分野の技術を組み合わせたシステムを構築し、アジアの現地国と連携した、先進的医療機器システムを実証する。27日に公募を締め切り、「ナショナル・プロジェクト」を選定、プロジェクト実施に乗り出す。

 

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