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次世代カテーテルなどに応用できる折り曲げ自在の集積回路

次世代カテーテルなどに応用できる折り曲げ自在の集積回路

IC1東京大学染谷隆夫教授と関谷毅講師を中心とした研究チームは、世界初となるくしゃくしゃに丸めても電気的特性が変化しない極薄シート状の集積回路の作製に成功した。このシートをカテーテルの表面に巻きつけることで血管内での圧力分布や、酸素濃度などを広範囲で連続的に観測できるようになるという。 「今回のウルトラフレキシブル回路の開発では、実際に血管内で圧力分布や酸素濃度は測定していないが、カテーテル表面にも集積化できることを証明した」(染谷教授)。研究成果は英科学誌ネイチャー・マテリアルズの12月号に掲載される。 柔らかさに加え、大面積かつ電気的特性にも優れているこの極薄シート状の集積回路は、室温で製膜できるポリイミドの自己組織化単分子膜をゲート絶縁膜として作製。研究チームは、既に2009年12月に同材料を用いて有機フラッシュメモリシートの作製に成功しているが、限界折り曲げ半径は4mmまでだったのを今回、12ミクロンの極めて薄いプラスティックフィルムの表面を原子レベルで平滑化する独自のプロセスを用いて、2ボルト駆動ながら高い移動度を有する有機トランジスタの作製を実現した。 東京大学の研究チームが2005年に発表したウルトラフレキシブル有機トランジスタには、500nmの厚みを持つ有機高分子ポリイミドをゲート絶縁膜に用い、限界折り曲げ半径は、0.5mmを記録したが、駆動電圧は40ボルト以上必要で、実用化に向けての課題となっていた。「今回は、プラスティックフィルムの表面を原子レベルまで平坦化するプロセスを開発し、プラスティック基板上に自己組織化膜を用いて数ナノメートルの薄膜構造を形成できるようにして、トランジスタの性能を堅持したまま駆動電圧を2ボルトまで低減できた。さらに、この技術を用いることで、有機CMOS回路を作製でた。プラスティックフィルム基板上に数ナノメートルの構造体を安定にできるプロセロを開発したことが最も大きなブレークスルー」と研究チームは語る。「この技術を応用すると、ユニークな機器デザインが可能となり、医療用デバイスなど新用途が拡大する」という。

 

薄膜プラスティック上に作製されたウルトラフレキシブル有機CMOS回路。プラスティックフィルム表面を平滑化するポリマーと室温で製膜できる自己組織化単分子をゲート絶縁膜に用いることでプラスティックフィルム上に低電圧駆動有機CMOS回路の作製に成功。さらに、歪み緩和する構造を用いることで、折り曲げに対して極めて強い回路が実現した。

薄膜プラスティック上に作製されたウルトラフレキシブル有機CMOS回路。プラスティックフィルム表面を平滑化するポリマーと室温で製膜できる自己組織化単分子をゲート絶縁膜に用いることでプラスティックフィルム上に低電圧駆動有機CMOS回路の作製に成功。さらに、歪み緩和する構造を用いることで、折り曲げに対して極めて強い回路が実現した。

トランジスタ形成において基幹技術となるのがゲート絶縁膜の形成であるが、今回研究チームに独マックスプランク固体物理研究所のHagen Klauk博士が加わることで、博士らが2004年、2007年に開発したリン酸系の自己形成能力を持つ自己組織化単分子(SAM)膜のプロセス技術を発展させプラスティックフィルム上に均一な薄膜形成をさせることができた。SAM膜は室温での製膜が可能であるため多くのプラスティックフィルムに適応することができる。表面平滑化技術とSAM技術を融合することで、市販されている薄膜プラスティックフィルム上に、2ボルト駆動可能な有機トランジスタ、有機集積回路の作製を実現した。

さらに有機半導体にダメージを与えない有機高分子を使った歪み中間構造を構成することにより、電気回路が実現された。その結果、曲率半径0.1mmまで折り曲げても特性に変化なく動作する集積回路を作製できるようになった。「連続的な折り曲げ試験は現在も行っているところだが、1mm程度の折り曲げ半径であれば1000回以上の耐性がある」(染谷教授)という。

有機トランジスタは、シリコンなど従来の無機材料素子とは違って、低温プロセスでプラスティックフィルム上に形成できるため、軽くて、曲げられる電子機器を作ることができる。また、印刷技術で製造できるため、面積の大きなものを作る場合の製造コストもシリコンに比べて格段に安い。「今回、自己組織化単分子膜は有機溶剤に浸漬することで製膜し、電極、有機半導体層は真空蒸着法により製膜いたが近い将来は、すべて印刷で製膜できる材料で構成されているため量産が可能」(染谷教授)という。 柔らかい集積回路は生体との整合性が良いため、本技術は、皮膚の上から生体情報を取り出すウェアラブルエレクトロニクスへの応用や、体の中に埋め込みより直接的に生体情報を取り出すインプランタブルエレクトロニクスへの応用も期待される。

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