多数個取り金型ホットランナにおける発展

多数個取りホットランナシステムの特定分野における技術開発は、品質管理および再現性の向上と、成形サイクルの短縮につながっています。ここでは、多数個取り金型の金型内クローズドループ充填制御、およびサーボ作動バルブゲート、同期化されたバルブステムなどの発展について論じます。 P. Glendenning Micro Systems (UK) Ltd, Warrington, UK 多数個取り金型 多数個取り金型という16、32 またはそれ以上の成形品を備えた金型は、成型医療部品の大量生産の伝統的な方法です。これら金型の充填は、ホットランナシステムと、往々にして空圧で作動するバルブゲートにより行われます。事前に設定されたゲートを閉じる正確な時間まで金型ゲートを溶融状態に保つことができるため、バルブゲートは他のタイプのホットランナチップより高い精度を実現できます。にもかかわらず、多数個取り工具で成型されるすべての部品の精度を制御することは困難であり、工程管理向上のため、様々なシステムが開発されています。 金型内に組み込まれたクローズドループ制御 キャビティ圧力と温度、またはマシンのノズルの射出圧力のモニタリングには、射出成形向けのセンサシステムが長い間使用されてきました。これらシステムは、品質監視やプロセス立ち上げの最適化に使用できますし、金型キャビティ圧力のあらかじめ設定されたレベルに基づいた保圧への切り替えを開始させるためにも使用できます。 最近では、外部のパーソナル コンピュータ (PC) プラットホームまたはラップトップによって制御かつモニタリングされる金型内多数個取り金型のクローズドループ充填制御もできるようになりました。この場合、金型の個々のキャビティに流し込まれるメルトフロントの位置は、特定の各キャビティのゲートで注入されるポリマーの制御に関連しています。

glendenning-Fig-1_a small

図 1: システムがオフ(左)とオン(右)時の温度上昇。

図 1 では、システムがオフのとき(左)とオンのとき(右)の 32 の金型キャビティにわたる溶融物の射出による温度上昇が示されています。この図は全てのキャビティにおいて、制御システムがどのように充填物の温度分布を瞬時に相互に近付けるかを表しています。 各金型キャビティの注入口の終端付近に温度センサーを設置し、これを関連のホットランナチップの温度制御装置に接続することによって、システムを動作します。射出された高温のポリマー溶融物がセンサに達すると、温度が急速に高まります。PC が各キャビティについて温度上昇の開始を記録し、バルブ ゲートコントローラに各バルブ ゲートの温度を上げる、または下げるよう自動的に指示します。バルブゲートの温度を変えると、そのポイントでのポリマー溶融物の粘性が変化し、金型キャビティに流入するポリマーの速度を部分的に変化させます。各キャビティの充填速度が自動的に調整されるため、メルトフロントが正確に同一の時間にセンサーに到達するようになります。

図 2: 成型部品のゲート付近とフローの終端部で測定された厚み。 青: ゲート付近赤: ゲート反対側。              (左がシステム オフ、右がシステム オン)

このタイプのシステムを多数個取り金型に導入することで、成型プロセスの精度と再現性を大幅に向上することができます。図 2 では、医療部品用の成型部品のゲート付近とフローの終端部で測定された厚みを示しています。部品の両方の箇所での名目上の厚さは 0.8mm です。バルブゲートのクローズドループ制御システムを使用することで、これら 2 点間の厚さの違いを大幅に減らすことができます。

図 3: キャビティ毎の厚み差(ゲート付近 - ゲート反対側)。赤:システム オフ;青:システム オン。

図 3 は各キャビティの厚さの違いを示しています。厚さのばらつきは 22 ~ 54 ミクロンから 18 ミクロン未満に減少し、一部のキャビティでは 5 ミクロン未満に減少しているのがわかります。 図 4 は、このシステムを使用して成型された部品であり、バルブゲートとセンサの位置が図 5 に示されています。ここで示されている流動シミュレーション(Moldflow、www.moldflow.com)は、温度センサがどのようにフローの終端部近くに配置されているかを表しており、この場合、センサの直径は 1 mm です。

図 4: 金型内に組み込まれたクローズドループ制御 システム使用の成型部品。

サーボ作動バルブゲートと同期化バルブステム バルブゲートの大多数は空圧作動です。清潔さが重要ではなく、大型部品が成型される産業においては、油圧手段で作動されるものもあります。医療用装置の業界では空圧システムが一般的ですが、それは空圧システムが比較的清潔であり、簡単に生産システムに組み込めるためです。一般に、空圧システムは信頼性の高い作動と効果的なバルブゲート技術を提供することができ、システムのメンテナンスも比較的単純です。空圧作動バルブゲートの限界は、ゲートを作動させるために利用できる圧力にあります。このため、好ましいものより大きいシリンダの使用が必要となり、金型内のバルブゲートのスペースがより大きくなることがあります。システムの立ち上げもバルブゲートのピストン間の遅延によるキャビティ充填のばらつきを回避するために特に注意が必要です。 近年開発された電気作動のバルブゲートは、空圧システムにおける圧力とスペースの制限を克服し、クリーンルーム環境に適したセットアップを保つことができます。サーボモータ、軸受け、カムによって電力が機械力に変換されるため、埃や破片、油の問題がありません。電気作動のバルブ ゲートは、空圧と油圧システムの欠点を取り除いた利点のみを提供するといえます。バルブ制御にサーボモータを利用することで、バルブステム速度を調整でき、高いステム力によって優れたゲート品質を実現できます。

図 5: バルブゲートとフロー終端付近に配置された  温度センサ。

金型内のプレートにバルブステムを結合することで、動きを正確に同期化させることができます。これにより、空圧システムで時折見受けられる遅延をなくし、ゲートの開閉中、各ステムが正確に同位置にあるよう確約することが可能になります。さらに、この方法でバルブステムを共に結合し、電気作動システムを利用することで、バルブゲートを相互により近付けて配置することができます。例えば、18 mm という小さいバルブゲートピッチ寸法が使用されています。1 時には、バルブゲートを個別にシャットダウンする必要が生じることがありますが、プレートを使って同期化されたバルブゲートは、必要時に個別のバルブステムをプレートから取り外すことができるように設計されています。またシステムは、ゲートで閉塞が発生した場合、あらかじめ設定された力で自動的に外れるように設計されています。同期化システムを利用できない具体的な唯一の例は、個別にバルブを作動させなくてはならないシーケンシャル射出が必要な場合のみです。 マニホールドのバランスと温度制御の向上 技術的難度が高い部品向けのホットランナの設計は、ここ数年でより優れたゲートバランス、再現性、温度制御を提供できるように変化を遂げました。ゲートバランスと再現性は、小型部品を多数個取り成型システムで成型する場合、特に重要です。 一部の材料は特に感熱性やせん断感受性が高く、これらタイプの材料でプロセスがどのように実行されるかにおいて、ホットランナ・システムの設計が非常に重要となります。通常、加熱ゾーンの使用が多ければ多いほど、ホットランナはホットスポットを回避し、マニホールド全体にわたって温度のばらつきを最小化するよう設計されます。マニホールドは、特定の材料および射出量または充填速度に合わせ、せん断率が高すぎないように設計することができます。正確なホットランナ・マニホールドの設計の総合的な目的は、プロセスウィンドウをより利用可能なものとし、プロセスの信頼性とコスト効率をより向上することにあります。 成形サイクル削減のためのコンフォーマル冷却 コンフォーマル冷却の原理は、金型内の冷却水を金型キャビティの形状にできるだけ近付けて密着させ、冷却時間を削減し、より均一な温度分布と収縮を提供するというものです。この技術の採用はこれまでのところ限られているが、多くの興味を引き付けてきました。 コンフォーマル冷却路は次の3 つの方法のいずれかによって形成されます。2  最も古い方法は、個々がそれぞれ切削された冷却路を有するプレートを積層し、真空ろう(臘)付けによって結合したものを利用する方法です。より最近の方法は、鉄粉を溶解させて固体鉄鋼三次元チャネル設計を構築するレーザー焼結を利用する方法、または金型インサートに事前に導入されたキャビティに拡散接合により焼結された高熱伝導性を持つ合金を利用する方法です。 これらの方法のいずれかを使用することで、従来の手段では製造できなかった新たな冷却路の設計が可能になります。これにより、相互間が接近して配置された個別制御可能な冷却路やサイクルタイムの短縮などの更なるオプションを含め、より効率的な冷却が促進されます。 開発現況 ホットランナプロセスおよび多数個取り成型は、多くの人から成熟した技術であると見なされていますが、さらなる品質管理、再現性、サイクルタイムの短縮を実現するため、特定分野における開発が継続しておこなわれています。 参考文献 1. M. Baumann and A. Bouti, “Electrically Actuated Valve Gates: An Emerging Hot Runner Technology”, Moldmaking Technology, 2008 年 8 月www.moldmakingtechnology.com/articles/080801.html 2. R. Westhoff,“ Thermal Balance:Conformal Cooling on the Advance”,Kunststoffe International,8,24–26 (2006) Paul Glendenning 氏は MicroSystems (UK) 社の事業開発部長です。会社所在地 101 Golborne Enterprise Park, Warrington WA3 3GR, UK,電話+44 1942 290 960,電子メール:paulg@microsystems.uk.com, www.microsystems.uk.com 本記事は、Medical Device Technology 2009 年5/6 月号に英語で掲載されました。 Copyright ©2009 Medical Device Technology

カテゴリー: