整形外科インプラントの設計におけるシミュレーション法の利用

筋骨格系内におけるインプラントの機能的性能をより理解するために使用される、新たな仮想テスト法 L. Rickey MSC Software、米国カリフォルニア州サンタ アナ 整形外科は、特に生体力学性能シミュレーションの領域において、大きな革新的可能性を有する医療機器分野の一つです。インプラントのコスト上昇、高価で難しい物理的試験、健康な動作を理解するための挑戦に伴い、整形外科市場は競争上の優位性を獲得するための新たな方法を模索し続けています。 これまでインプラント企業は、股関節、肩関節、膝関節置換、そして脊椎インプラントの信頼性と規制認可をテストするために、物理的なプロトタイプの生産に頼って来ました。しかしながら整形外科向けの機器メーカーは、有限要素解析 (FEA) と筋骨格系の全身シミュレーションを行うための生体力学シミュレーション技術に対しより投資をするようになっています。身体のターゲット部位には、腰椎融合、人工股関節全置換、膝関節全置換、頚部シミュレーションなどが含まれます。 生体力学シミュレーション技術は、より優れた性能の製品をより迅速に製造するために機械技術者および生物医学技術者のアイデアを実現し、彼らがより速く革新を実行し、装置設計のコンセプトを外科医に提供できるよう助けます。この技術を利用し、ユーザは設計の早期段階で製品がどのように作用するかを、よりリアルに視覚化することができます。そして、外科医は装置をどのように身体に埋め込むかをより効率的に練習することができます。 従来の方法

 ダイナミクス イベント シミュレーション。

図 1: ダイナミクス イベント シミュレーション。

従来の製品開発プロセスは、コンピュータ支援設計 (CAD) 図面から開始し、高い歪み領域を調べるために装置および(または)周囲の骨に対する一連の応力分析をモデリングし、実施する FEA ソフトウェアの使用へと進めて行きました。 これが整形外科の市場の多くが採用してきた一般的なアプローチです。FEA 実行の要件には、部材とそれが動作する環境のモデリングが含まれます。これには非常に時間が掛かることがあります。 モデリングが完了した後、特に膝のシミュレーションの実行に準静的解析法を使用し、増分でのシミュレーションを一つ一つ行うような場合、分析に長い時間が掛かることがあります。このプロセス単独で一日または数日かかる場合さえあります。しかし、この情報は重要です。なぜならば、FEA を完了すると、技術者は装置の強度や耐久性、摩耗性などの更なる解析に使用できる情報を取得できるからです。FEA が完了すれば、技術者はハードウェア プロトタイプを作成し、臨床試験を開始できます。ここでの運動性能を確認するプロセスは、完了までに通常 4~6 ヶ月掛かります。しかしながら技術者は、往々にして臨床試験を始めるまでに 、3~4 回の設計の反復とプロセスの繰り返しを必要とするため、平均的な合計設計時間は 1 年半かかっています。結果として、設計は漸進的で保守的なものとなってしまいます。 仮想法 実験室と同じ結果を生み出す仮想シミュレーション環境の中で、実験室で行われるインビトロ テストを模擬することによって、設計反復の数を減少させるテスト法が開発されています。インビトロのシミュレーションがモデリングされ、有効性が確認されたら、インビボのシミュレーションを仮想環境中で実行することができ、階段を上がる、座る、立つ、跳ぶなどの現実の事象を模擬することができます(図 1)。最終的に、現実世界でのシミュレーションでインプラントの性能が評価可能となります。

 マルチボディ ダイナミクス シミュレーション。

図 2: マルチボディ ダイナミクス シミュレーション。

このプロセスは、技術者が生体力学シミュレーションを使用して強度と耐久性を含む全体の運動性能を確認し、そしてデータを FEA にエクスポートし、システム レベルのシミュレーションを実行することを可能にします。これにより、テスト プロセス全体をより迅速に進めることができます(図 2)。有効性が確認されたら、仮想テストをより全体的、より反復的な方法で行うことにより、技術者は実験テストの回数を減らし、より迅速に臨床試験に到達することができます。 両技術の粋 このように、最適なシミュレーションのプロセスは、マルチボディ ダイナミクス シミュレーションと FEA を使用します。計算量を最小にし、かつマルチボディ ダイナミクスの範囲を広げるため、両方法の最も優れた面を結合させています。材料がどのように挙動するか、または装置の部品がどのように脛骨等の骨と相互作用するかを評価するために、ポリエチレンやセメント荷重などの重要な非線形性を評価します。 従来、FEA が唯一のアプローチでしたが、FEA は境界条件がどのようであるかや、装置が正確であり、かつ臨床試験で確認された通りになる様に保証するために、どのように装置を適切に取り付けるかを技術者に教えてくれません。今日、多くのメーカーが FEA 分析に適用するために全身シミュレーションを利用し、機械的負荷を収集して、より正確に装置の性能を理解しようと努めています。例えば、装置設計または分析を 90 パーセンタイルの男性に適用できるでしょうか? 仮想環境中で様々なグループの解剖学的モデルに対する研究を行うことで、技術者は装置の性能に関してより良い答えを得ることができ、サイズ、形状、重量においてばらつきのある人々のより多くの人口に適合するように設計を最適化することができます。共通のツール セットで作業し、効果的に FEA と生体力学間で負荷を移動させることでプロセスを効率化し、従来のテスト法よりも迅速で正確な結果を技術者に提供することができます。 FEA 技術とマルチボディ ダイナミクス シミュレーションは同時に統合することができます。これにより、力学的境界条件と負荷が自動的に FEA モデルに転送され、少しの変更とそれらの力学的性能(生体力学的な動作範囲または体内の装置の性能)に対する影響を評価することが可能になります。この完全に統合されたシミュレーション ソリューションで、技術者は全身の歩行モデルを可視化し、負荷がどのように掛けられているのかを目で確認することができます。 将来的発展 更なる改良が進められています。それは、FEA と生体力学の統合性の向上と筋骨格モデル内のポリエチレン、およびセメント荷重を最高の忠実度で考慮した、マルチボディ環境における非線形過渡解析の完全な評価能力に関する改良です。これは完全なハイブリッド ソリューションとなります。最近では、運動性能とそれがどのように筋骨格系と患者の筋肉効率と接触力に影響するかが研究されています。また、セメントと骨における摩耗と応力歪みの評価要素、そしてより効率的な仮想テストと設計を確約するために、設計チーム全体の技術者に結果を配布するより良い方法についても研究が進められています。 Leslie Rickey― MSC Software社 製品マーケティング部シニアディレクター。(会社所在地:  2 MacArthur Place, Santa Ana, California 92707, USA、電話+1 714 540 8900 email:leslie.rickey@mscsoftware.com, www.mscsoftware.com MSC Software 社は LifeModeler (www.lifemodeler.com) と提携しています。 本記事は、Medical Device Technology 2009 年 9 月号に英語で掲載されました。 Copyright ©2009 Medical Device Technology

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