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Imec、オープン・イノベーション型の共同研究で日本企業との提携を拡大

 

ベルギー王国に、Imec (Inter-university Micro Electronics Center)という世界最大の独立系マイクロエレクトロクスの研究機関がある。「オープン・イノベーション」型の研究を推進し、優れた知的財産ポリシーを保持する同研究機関には、各国の大手電機メーカーや半導体メーカー、ヘルスケア関連企業や研究機関がこぞって共同研究契約をもとめてやって来る。日本でもこの10年間でパナソニック株式会社、株式会社カネカ東北大学などの研究機関を含む70社がImecとパートナーシップを締結している。

Imecは、1984年にベルギーのフランダース政府により設立され、開設当初は70名程度の大学関係者でスタートしたが現在は、独特なハイテク環境を備え、約2000名の研究者やスタッフが人類と持続可能な社会実現に貢献すべく研究を行っている。その急成長を遂げる同研究機関が、昨日(2012年6月12日)東京で「Imecエクゼクティブ・フォーラム」を主催し、日本企業とのパートナーシップの成功例を披露した。

まず、Imecの社長兼CEOのリュック・ヴァンデンホッフ(Luc Van den hove)氏が、研究から製造まで全て工程を自前でおこなう垂直統合型のイノベーションの限界を指摘。今まで大企業を中心に進めてきた<研究・開発・製造>をすべて自前でおこなう『完全拘束モデル』は、コストがかかりすぎて非効率で時代遅れ、と断言。「これからは、「研究」を「開発・製造」と切り離し、システム企業・サプライヤーだけでなく産学を連携して共同研究を進める『オープン・イノベーション』モデルが望ましい」と強調。

フォーラムでは、ヴァンデンホッフ氏の講演の後、パナソニック、東京エレクトロン株式会社、カネカ、ルネサスエレクトロニクス株式会社の各企業からImecと共同研究を進めるメリットについての発表がおこなわれた。

パナソニックは、2004年よりImecの半導体微細プロセス分野の共同研究に中心メンバーとして参画し、この分野でのオープンイノベーションを加速している。さらに2008年には半導体・ネットワーク・ワイヤレス・バイオメディカル分野における最先端技術の包括共同研究契約も締結している。

東京エレクトロンは1998年より、ルーベンにある200mmプロセス対応の193nmリソグラフィー研究施設において、線幅測定技術や157nmリソグラフィー技術等に関する共同研究を行っており、2010年にはEUV(極端紫外線)露光技術において、これまでの協業を拡大し、次世代の新技術や新事業の共同開発している。

一方、カネカはフォーラム開催日に、Imecと共同開発した太陽電池のヘテロ接合太陽電池セルが22.68%の電力変換効率を達成したと発表。変換効率を高めるだけではなく、製造コスト低減も実現したという。本日13日からドイツのミュンヘン市で開くインターソーラーヨーロッパ2012で研究開発の成果の発表も予定されている。

今年の2月に次世代広帯域無線規格であるLTE-Advancedや次世代Wi-Fi(IEEE802.11ac)の受信用途に向けて、電力効率と変換速度を劇的に改善した画期的な逐次比較型(SAR)アナログ/デジタル変換器(以下SAR-ADC)をImecと共同開発したルネサス エレクトロニクスは、今後も同研究機関との共同研究に力を入れていくという。

各社ともImecの推し進める「More than Moore」という技術の融合やナノテクノロジーを駆使した技術開発を高く評価していた。これまでの半導体は、「ムーアの法則」に沿って「More Moore」をめざす形で発展してきたが、微細化だけでは技術的な限界がある上に、たとえ技術的に可能でもコスト面で問題が出ていた。そのため、微細化に伴なうスケーリング則からの逸脱を図る「More than Moore」を導入。「ムーアの法則」には従わないが多機能をデバイスにもたせることでユーザーに多くの付加価値を与えられるという考え方を取り入れてきた。

このように日本でもImecの「More than Moore」研究におけるオープン・イノベーションへの賛同企業が増加傾向にあるが、そもそも、オープン・イノベーションは、1990年頃に技術開発面で遅れをとっていたヨーロッパで誕生した概念。

日本も、半導体分野で世界レベルでまだまだ弱小企業だった1970年代には、オープンな環境で技術開発することもあったようだが、80年代に飛躍的発展を遂げ自社で独自開発ができるようになり自前主義が定着。しかし、景気低迷が長引く中、無尽蔵に研究費を投下することが困難になりつつあり、オープン・イノベーションが研究開発の効率化の手段として注目されつつある。

とはいうものの、多くの日本企業は、技術ニーズの開示や、利害関係者同士による情報のやり取りなどに不安を残しているのも事実。フォーラムでは、半導体を対象とする市場調査会社である英Future Horizons社の会長兼CEOのマルコム・ペン(Malcolm Penn)氏が、「Imecのオープン・イノベーションモデルを実践すれば、技術ニーズの開示はコントロールでき、各社の具体的なニーズに対して複数の提案を比較評価することは想像より容易」と指摘。研究成果は「1+1=2」ではなく「1+1=3」にできると強調した。

Imecの今年度の予算は3.2億ユーロ(約320億円)。予算の一部を支出するベルギー・フランダース政府のイノベーション大臣イングリッド・リエテン(Ingrid Lieten)氏は、ヘルスケア部門を中心とする研究への継続支援を表明したが、予算の大半はパートナーを組む民間企業からの開発委託費でまかなわれており、それだけでもImecに対する企業の信頼の高さが伺われる。

ちなみに2011年度の総研究費(収益)は前年比5%アップの3億ユーロ(約300億円)。昨年の全従業員1980名の内、366名はパートナー企業からの客員研究員で、PhD研究者は207名が在籍。国籍も73ヶ国と多様だ。パートナー企業は600超にのぼり、208の大学とも共同研究を進めている。昨年発表した研究開発に関する論文数は1,773で、うち41が賞を受賞している。特許の取得件数は132、特許申請件数は133だった。Imecはベルギー・ルーベン市に本部があるが、日本にも連絡事務所を置いて活動している。