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新しい分子連結法—金属素材に代わるプラスチックの生産効率化に期待

新しい分子連結法—金属素材に代わるプラスチックの生産効率化に期待

 

分子レベルで整列したポリスチレンの電子顕微鏡写真

京都大学は、伊ミラノ・ビコッカ大学と協力し、多孔性物質のナノ空間を反応場とすることで、プラスチック分子の一本一本を同じ方向に高精度で整列させる新しい分子連結法の開発に成功した。

京大の植村卓史 工学研究科准教授、北川進 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)長・教授らの研究グループは、高分子の 鎖同士を結びつける架橋部位を導入した多孔性金属錯体(PCPもしくはMOF、以下PCPという)を用い、その規則的な一次元細孔内で高分子の合成を行うことで、鎖の配向が一方向に制御された高分子材料を開発。高分子の鎖同士が精密に架橋されているために、熱や溶媒に対しても鎖の整列状態が安定に保たれ、従来法でできるプラスチックに比べて高密度で高強度な材料となることがわかった。

本成果を応用することで、金属に代わるプラスチックとして医療機器でも需要が高まっているエンジニアリング・プラスチック(エンプラ)を簡便かつ効率的に生産できる新手法になることが期待される。

ホスト-ゲスト架橋重合法

分子が鎖状にいくつも連なった高分子からなるプラスチックは、医療器具、繊維、樹脂材料などに用いられる重要な材料だが、普段使用しているプラスチック中の高分子鎖は、通常、糸がぐしゃぐしゃに絡まり合ったようにして存在しており、潜在的に有している特性を生かし切れていない。この高分子鎖の絡み合いをほどいて、精密に整列させることができれば、力学物性、光学特性、異方性において優れた材料を産み出すことが可能になるはずで、これまでに電界処理、延伸、摩擦、液晶基導入などにより、高分子鎖の配向を制御し、強くて耐久性のある繊維や機能性光学フィルム、エンプラ材料といった材料の開発が行われてきた。しかし、このような従来法でできる高分子の配向構造においては、完全に鎖を整列させることは困難で、熱や溶媒処理に対して弱いものも多く、色々な高分子材料に適用できる方法ではなかった。

今回、研究グループはPCPの一次元ナノ細孔内で高分子の合成と架橋を同時に行い、反応後にPCPを除去することで、一本一本の高分子鎖が同じ方向に整列した新しいプラスチック材料を開発することに成功。この手法により、元来、整列しないものであったビニル高分子を分子レベルで整列させることができ、低性能な汎用プラスチックを簡便かつ合理的にスーパーエンプラ材料へと高性能化できる可能性を示した。

主鎖同士の結合に用いるPCPは、金属イオンとそれをつなぐ有機物で構成されており、nmサイズの1次元空間(細孔)が規則的に並んだ構造となっている。細孔内にスチレンモノマを導入して一方向に並べた後、PCPの骨格の一部に埋め込まれたジビニル基によってモノマの連結および架橋を行い、最後に PCPのみを除去してポリスチレンを得る(ホスト-ゲスト架橋重合法)。

このホスト-ゲスト架橋重合法は、ポリスチレン以外にもさまざまなビニル樹脂に適用できる。実際、原料モノマーをスチレンからメタクリル酸メチルに置き換えた実験でも、ポリスチレンと同様の整列構造を持つポリメタクリル酸メチルを合成できたという。

本研究で開発したホスト-ゲスト架橋重合法を利用すれば、汎用プラスチックをエンプラやスーパーエンプラへと簡単に「レベルアップ」できる可能性があることから、従来の高機能プラスチックに代わる幅広い分野での利用が期待される。

 

本研究成果は、ロンドン時間2月24日18時(日本時間25日3時)に英科学誌「Nature Chemistry(ネイチャー・ケミストリー)」オンライン速報版で公開された。

 

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