損傷した神経を再生する「神経再生誘導チューブ」

東洋紡績株式会社は病気や事故などで損傷した神経の再生を促進させる、新しい治療用医療機器「神経再生誘導チューブ」を開発した。

神経再生誘導チューブの外観写真

一般に、病気や事故などで神経が損傷した場合、患者は「自家神経移植」や「神経縫合」などの外科手術を受ける。「自家神経移植」は、患者自身の健常な神経(例えば足の神経)を採取し、受傷部に移植する治療法だが、健常な採取部に傷が残ったり採取部に痛みやしびれが現れるなど、患者に大きな負担がかかる。

一方「神経縫合」は、切れた神経同士を直接縫合する治療法だが、その際、張力がかかると治癒せず知覚異常や痛みが残るなど、挫創などへの治療法としても適していない。また、受傷して救急病院へ運び込まれた患者の場合、切れた血管や骨をつなぐことが優先されるため、やむを得ず神経をつながないこともある。

これらの問題を解決するため、従来よりヘパリンコーティングをはじめ生体適合化技術を開発研究してきた同社は、「神経再生誘導チューブ」を開発し、以下の優位性が確認した。

・本チューブを断裂した神経の欠損部分(ギャップ)にはめ込み、固定することで中枢側より神経が本チューブの内腔を伸長し、末梢側の神経とつながって機能が回復する。また本チューブ自体も、ポリグリコール酸(PGA)などの生体内吸収性材料で構成されているため、約3カ月で分解・吸収され消失する。

・本チューブは、 新たに開発された日本ハム製の医療用コラーゲン(「NMPコラーゲンPS」)を使用しており、このコラーゲンを、チューブ外面に塗布するとともに、チューブ内腔にも充填しているため、これを足場としてチューブ外側からも栄養血管を誘導するなど、神経が伸長、再生しやすい構造になっている。

チューブの断面拡大写真

従って、「神経再生誘導チューブ」を使用すると以下のメリットが享受できることが確認された。

(1)現行の治療法である「自家神経移植」や「神経縫合」と同等かそれ以上の治療効果(知覚の回復など)が期待される。

(2)自家神経移植のように、患者の健常な部位の神経を採取する必要がないため、新たに傷つけることがなく、その分、施術時間も短縮されるため患者の負担は大幅に軽減できる。

(3)特別な手術設備(たとえば顕微鏡手術の設備など)が不要なため、いわゆる一次救急病院でも使用することができ、患者の術後早期のQOL(Quality of Life)回復、社会復帰に貢献できる。

本製品については、手、指の神経損傷に対して、薬事法に基づく臨床試験を実施した結果、84.2%の有効性(知覚回復効果)が認められ、神経欠損部の長さ(欠損長;ギャップ)が20mmを超える症例でも、有効性が確認されている。2012年2月に厚生労働省へ製造販売承認申請を行い、現在審査中という。

 

東洋紡績株式会社

大阪府大阪市

www.toyobo.co.jp

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