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無菌性に優れた完全閉鎖系の小型細胞自動培養装置を試作

無菌性に優れた完全閉鎖系の小型細胞自動培養装置を試作

東京女子医科大学先端生命医科学研究所と株式会社日立製作所は、ヒト由来細胞から再生医療に用いるシート状組織(以下、ヒト細胞シート)を自動で培養可能な、完全閉鎖系の小型自動培養装置の試作 に成功した。

本装置を用いることで、外部からの汚染を低減し無菌性に優れた環境で、ヒト細胞シートの自動培養が可能となる。今回試作した装置は、 容量900L、設置面積0.6m2、医薬品や医療用具などの製造における安全性や品質を定めた基準(GMP(*2))に準拠して設計したもの。本装置を用いて、実験用に市販されているヒト細胞から角膜ならびに食道の再生医療に向けたヒト細胞シートの培養試験を行ったところ、従来の手作業による培養と同品質のヒト細胞シートの培養が確認できた。

近年、障がいや欠損を起こした組織や臓器を根本的に治療する次世代の革新的な医療として、細胞を用いて組織や臓器を再構築し、病変部へ移植する再生医療が注目されている。東京女子医大は、培養したシート状組織(細胞シート)を損傷なく回収する独自技術を確立し、角膜、心筋、食道、肺、歯周、軟骨や肝臓などの疾患への適用をめざした基礎研究、臨床研究に取り組んでいる。

試作した完全閉鎖系の小型細胞自動培養装置(左)と試作装置を用いて培養したヒト培養シート(右)

従来、細胞シートの培養では、細胞播種(種まき)や培養に必要な栄養を含んだ培地の交換などを、細胞培養技術者が手作業で行ってきたが、今後、再生医療が普及するにつれて人材不足や、低コスト化が課題になると予想されることから、培養工程の自動化による細胞シート製造の効率化が求められている。

また、細胞シートの培養には、厚生労働省の指針に沿った培養環境の空調管理や清浄性保持、作業記録等の厳密な管理が求められることから、無菌性に優れた環境 で細胞シートを培養できる閉鎖系の自動培養装置の開発が望まれている。


このような背景のもと、東京女子医大と日立は、独立行政法人新 エネルギー・産業技術総合開発機構の「組織再生移植に向けたナノバイオインターフェイス技術の開発」に参画し、2006年に準閉鎖系の自動培養装置を試作し、移植可能な品質の動物細胞シートの自動培養に初めて成功させた。さらに、2009年からは、文部科学省の先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム「再生医療本格化のための最先端技術融合拠点」に参画し、再生医療用のヒト細胞シートの培養に適した自動培養装置の開発に取組んできた。

今回、複数枚のヒト細胞シートを同時に自動で培養可能な閉鎖系の小型自動培養装置を試作すると共に、本装置を用いたヒト細胞シートの培養試験を行い、装置の有用性を検証した。


(1)モジュール型の細胞培養空間を用いた小型閉鎖系自動培養装置
自動培養装置では、細胞の播種、培養中の培地交換など、細胞の状態に合わせた様々な処理を細胞培養空間内で行う。培養空間は、細胞培養容器と、培養容 器へ培養液を送るための流路部から構成されているが、今回、流路の切換弁やポンプ等の処理機構を細胞培養空間外に設置することで、培養中に外部から汚染されることのない完全閉鎖系構造を実現させた。また、細胞培養空間を装置から丸ごと着脱可能なモジュール構造としたことで、患者ごとに単回で使用でき、患者間の交差汚染の回避が可能となっている。

(2)角膜ならびに食道の再生医療向けヒト細胞シートの培養実験
試作した装置を用いて、実 験用に市販されているヒト細胞から、角膜ならびに食道の再生医療用のヒト細胞シートの自動培養実験を行い、培養した細胞シートを評価したところ、従来の手作業により製造された細胞シートと同品質であることを確認し、試作装置の有用性を実証した。
 

東京女子医大と日立では、今回開発した自動培養装置の試作をもとに、臨床研究用自動培養装置の開発を推進いく方針だ。

 

 

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