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アウトソーシングの革新的な方法

アウトソーシングの革新的な方法

患者がどれだけ満足したかという「エンドユーザーの満足度」に基づいた医療機器の製造を実現するためには、医療機器メーカーとOEM受託製造企業の連携方法を見直す必要がある。

 

By: Peter Harris

医療機器産業では、アウトソーシング(業務委託・業務請負)による製造及び設備へのシフトが増加している。これは自動車、家電、医薬品、パーソナルコンピュータなどの他の産業が辿った道と同じであり、これからも別の産業が追随することが予想されるため、他のモデルと対照比較してみたい。

アウトソーシングの増加の背景にある2つの主な要因は、コストの削減と製品のイノベーション速度である。理論上、医療機器メーカーにとって製造はそのコアコンピテンスの中に含まれず、製造を外部委託することで、臨床教育、研究開発、製品マーケティングなどの中核的活動に重点を置くことができるようになりので、よりよい製品をより迅速に、より低コストで市場に投じることができる。1  委託製造に向けた動きは、医療機器産業など製品とプロセスにおける技術の変化速度が速い産業でより活発であることが示されている。2

実際のところは、製品革新の高速化及び品質の実現には落とし穴がたくさんあり、医療機器メーカーとその契約パートナーの両方に、過去の考え方に対して積極的に疑問を投げかけることが求められている。そうしないと、理論上の的を現実では外してしまうことになる。

企業の境界(例えば、どのくらいの作業を内部で行い、どのくらいを委託するか)と製品アーキテクチャ、及び設計間の相互依存性が他の産業で研究されており、かなり緊密なつながりがあることが示されている。3

医療機器産業において強い製品の革新力を保つには、アウトソーシングの増加につれてこれらのつながりがどのように変化するかを理解することが重要である。

具体的には、製品革新をプロセス革新と結合するプロセスは、機器メーカーとそのパートナーにとって、特に考慮がなされていない限り、革新を加速するのではなく遅らせることにつながる主要な領域となる。委託を受けた業者は、製品を既存の保有設備に合わせようとするよりも、製品革新を支援する製造プロセスの革新を提供する必要がある。

自動車産業におけるアウトソーシングの製品性能に対する影響を調査した2007年の興味深い研究(「アウトソーシングが製品性能のどのような影響を与えているか?自動車産業のデータからの考察」共著者:S. Novak氏とS. Stern氏)がある。その中では、高級車市場における主要なモデルが評価されており、それらの一部は委託製造されたもので、その他は垂直統合型自動車企業によって製造されたものであった。4

最初の製品評価では、委託製造されたモデルが社内で開発・製造されたものより高いスコアとなる傾向があったが、その後5年間にわたる比較では、垂直統合型企業によって製造されたモデルが追い付いている。

委託製造されたモデルでは当初、革新性が高かったが、以降の改良は垂直統合型企業のモデルのほうが優れていた。この違いは特に医療製品のアウトソーシングに関連があることから、その理由を理解するために、まず潜在的な各経路間の主要な違いを検討する。

垂直統合型モデルでは、ソーシング企業が特定の製造技術と設備を所有しており、それらを熟知している。この限定された出発点によって、新たな限界へと拡張する能力に一定の制限が形成される。所望する製品の属性が、製造能力に照らして検討されるが、これはよくDFM(design for manufacturability;「製造性考慮設計」)と呼ばれる設計と製造の最適化を図り、製造容易性を実現しようとする手法だ。製造能力の限界を押し広げる製品の機能は、既存の設備の現実を反映して削減され、その結果、革新性が損なわれる。

対照的に、医療機器メーカーが委託製造(OEM)を選択した場合、自社の設備だけでなく、他企業が保有する各種設備にもアクセスすることができる。これらの企業の設備は自社をはるかに超える能力を有することがあり、アウトソーシングを選択することで製品機能の実現性を大幅に拡大することができる。

従って、初期段階はこの経路のほうが設備による制限が少ないため、より大きな製品におけるイノベーションが可能になる。既存の垂直統合型設備の使用に比べ、アウトソーシングを選択することで製品機能の向上を加速できることは容易に理解できる。しかし、アウトソーシングのこのメリットは、正しいパートナーシップ、期待、関係モデルの形態において実現することができるので、1つの小さなステップでしかない。

限界を押し広げる

医療機器メーカーが、患者の治療成果と臨床経済性を向上するために、機器の性能の限界を押し広げようとするのに合わせ、プロセスの限界も押し広げる必要がある。製造技術が製品開発と同じまたはそれ以上のペースで革新され、製品の機能向上が製造面での制限にほとんど拘束されない状況が理想である。アウトソーシングにより選択可能な技術の範囲は広がるが、最初に選択肢が多いということと製品をサポートするための中核的なプロセス革新は同じではない。長期的に、製造プロセスの革新は、製品開発を意味のあるものにするために、堅牢である必要がある。

世界のDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)産業に関するある調査で、研究者らは、垂直統合型企業のほうが非垂直統合型競合企業よりも市場投入までの時間の面で優位性を達成できると結論付けている。5 しかしながら、非垂直統合型競合企業にとっての主な酌量要素は、機器メーカーが必要とされるコンポーネント技術についてどの程度理解していたかである。つまり、プロセスと製品間の知識のつながりを維持することが不可欠である。

医療機器メーカーとアウトソーシング(OEM)製造業者間の一般的な関与戦略には、定期的な対話の繰り返しが含まれる。機器メーカーは一連の製品要件を詳細に示した製造図を委託先に提示する。受託製造業者は自社保有の設備ベース(及び時に調達可能であると分かっている設備)に要件を照らして図面をマークアップし、機器メーカーの設計者が受託業者保有の設備ベースに合わせて製品の要望を調整してもよい場合、注文を勝ち取ることができる。ほぼ当然のこととして、開発プロセスにおける出来事の順序は製造法で始まり、製品を保有設備の制限に合わせることが試みられる。

流れを逆転させる

従来の受託製造業者の多くがおこなってきた受注までのサイクルは次のように表すことができる。

  • 我々は特定の製造プロセスを専門としている
  • 製造上の制限がある既知の設備でこの専門性をサポートする
  • 自社の設備の制限に照らして新しい製品設計を評価する
  • 医療機器メーカーの設計チームが我々のプロセスの制限を受け入れる場合、注文を得る

これとは対照的に、上述の流れを逆転させ、製造設備の選択を最後にしてみるとどうなるだろうか。最大限の製品革新を可能にするには、製造プロセスの選択は最初の手順ではなく最後にすべきである。医療機器メーカーとOEMパートナーの両方が、最初に患者の治療成果と関連の試験法に合わせて考慮し、その後この成果を実現するための主要な製品仕様を考え、最後にその製品をどのように製造するかを検討する必要がある。

ここではプロセスの逆転を治療成果に基づいた製造と呼ぶ。流れは次のようにまとめることができる。

  • 患者、介護者またはその両者に提供したい改善された成果はどんなものか。
  • この成果を実現する機器の機能的属性は何か、またそれはどのように試験できるか。
  • 機器のどの機械的な性質及びその部品がこの機能的属性を実現するのか。
  • どの製造プロセスが必要な仕様を達成するために最も適しているか。

後者の方法のほうが製品革新をサポートするプロセス技術の革新につながる可能性がずっと高い。限界を押し広げる製造法の機会が大幅に高められ、プロセス革新をサイクルの一部とすることで製品革新を促進する。このアプローチを採る企業は、より多くの「まったく新しい」プロセスのブレークスルーを有し、従来の製造設備では不可能な製品機能を実現することで、最終的に医療機器メーカーにより多くの価値をもたらすことができる。

アウトソーシングが増加するにつれ、すべての当事者が2つ目ではなく1つ目の相互作用の方法に陥りやすくなる。Novak氏とStern氏が結論付けた垂直統合が後の製品向上をもたらすメリットの潜在的な力は、製品設計者と製造技術間の距離と独立を保った関係に由来する可能性がある。

医療機器メーカーと契約製造業者の両方が成果に基づいたプロセス選択を重視しない限り、アウトソーシングは真のプロセス革新ではなく、ベンダーの最初の選択を通して革新を加速するだけとなる。実際、適切な管理が行われないと、アウトソーシングは革新を妨害することがあることを示す合理的な研究もある。6

医療機器メーカーは、次の簡単な一連の質問を通し、両方のパラダイムに対してサプライヤとの関係を評価し直すことができる。

アウトソーシングパートナーは患者志向の使命を持っているか、または特定の製造能力を主としてきちんと事業を定義しているか(例:「我々は精密プレスの会社である」というような専門性をアピールできるか)が重要なポイントとなる。

委託する側の使命に寄り添ってくれるパートナーであるほど、患者の治療成果を重視してくれる可能性が高くなる。一流アウトソーシング企業の綱領を見ると、患者、介護者、臨床医にいずれかに言及しているのは25%未満である。より小規模なサプライヤではこの割合はさらに低下する。

我々の機器の目標を支持するためにパートナーが提示した新しい技術を挙げることができるか。パートナーが成果志向を理解しているなら、機器の開発目標を支持するプロセス技術革新の実績を示しているはずである。

パートナーは設備及びプロセス開発のリスクを取るか、または発注を受けた後に能力を配備するのか。最高の製造技術革新者は、技術の限界を押し広げる自社の能力に自信を持っており、最先端へと歩みを進めるためにタイトな契約を待つことはない。

委託先のパートナーは我々の機器のための機能試験開発にどのくらい頻繁に参加するか、またはそれを先導してくれるか。最高のパートナーは機器の試験開発に対し、図面上の特徴で自身の関与の境界線を引くのではなく、大いに関与する必要があることを理解している。

パートナーは技術面での貢献が大きい下級供給業者への可視性を形成してくれるか。Thomas Choi氏とTom Linton氏による最近の研究に記述があるように、価値連鎖全体にわたる主要な技術への可視性は、一流アウトソーシング企業のベストプラクティスである。7

結論

製品設計者とプロセスのイノベーター間の距離が、インソーシングとは対照的に、アウトソーシングを通して拡大するにつれ、価値連鎖の中のすべての当事者にとって、製品とプロセスの両方で最大の総合的な革新性を目指すことが不可欠になる。

Erica Plambeck氏とTerry Taylor氏による、他の産業における革新へのアウトソーシングの影響に関する研究(「サプライヤーにビジネスをコントロールさせないために」)では、適切な管理が行われないとアウトソーシングは設備稼働率の向上を通してコスト目標を改善できる一方で、産業の革新に対する全体的な刺激を弱める可能性があることが示されている。8

医療機器産業は、機器メーカーと受託製造(OEM)パートナーの両社が、製品を既存の設備に合わせて製造するように強いるのではなく、製品とプロセスの両方の革新を最大化するビジネスモデルを採用することで、そのような結果を招くことを回避できる。

患者満足度に基づいた製造の哲学を積極的に追求することを通して、アウトソーシングパートナーは顧客である医療機器メーカーと共に、患者の治療成果を向上させることができる。そうすることで、ミクロ管理の中心となる臨床経済学(clinical economics)においても重要な違いをもたらすことができる。

参考文献:

  1. B Dunn and J Finn, “A Strategic Review of Outsourced Manufacturing for Medical Devices,” (Boston, Covington Associates, 2007).
  2. A Bartel, S Lach and N Sinkerman, “Outsourcing and Technological Change,” (National Bureau of Economic Research(NBER)/Columbia University, 2010).
  3. S Fixson, Y Ro and J Liker, “Modularisation and outsourcing: who drives whom? A study of generational sequences in the US automotive cockpit industry” International Journal of Automotive Technology and Management 5, no. 2 ( 2005): 166–183.
  4. S Novak and S Stern,“How Does Outsourcing Affect Performance Dynamics? Evidence from the Automobile Industry,” NBER, 2007.
  5. R Adner and R Kapoor, “What Firms Make vs. What They Know: How Firms’ Production and Knowledge Boundaries Affect Competitive Advantage in the Face of Technological Change,” Atlanta Competitive Advantage Conference Working Paper, 2009.
  6. RA Bettis, SP Bradley, G Hamel “Outsourcing and Industrial Decline,” Academy of Management Executive 6 (1992): 7–22.
  7. T Choi and T Linton, “Don’t Let Your Supply Chain Control Your Business,” Harvard Business Review, December, 2011.
  8. Plambeck and Taylor, “Sell the Plant? The Impact of Contact Manufacturing on Innovation, Capacity, and Profitability,” Management Science, January, 2005.

筆者:

Peter Harris is chairman and CEO of Cadence, Inc. Areas of expertise include strategy development, change management, transaction development, corporate governance, corporate finance, and values-based leadership. Harris is a public speaker who also teaches leadership and change management at the University of Virginia’s Darden School of Business. He has an undergraduate focus in mathematics and Mandarin, as well as an MBA from the University of Virginia. He is dangerously rusty in Mandarin, but can do rudimentary arithmetic with a calculator.

 

本記事の初出は、2012年6月29日付け弊紙姉妹誌MD+DI誌。

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