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京大、細胞膜シグナル伝達のためのラフト構造を解明

京大、細胞膜シグナル伝達のためのラフト構造を解明

従来、一般に広がっていた「ラフト」の概念を示した図

京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)・再生医科学研究所の研究グループは、細胞の働きを制御するのに重要な役割を果たすとされる細胞膜上のラフト領域の構造とシグナル伝達の仕組みを解明した。アルツハイマー病発症やHIV感染などの研究に貢献することが期待される。

今回の研究で、同大iCeMS・再生医科学研究所の楠見明弘教授、鈴木健一准教授らは、ラフト経由でのシグナル伝達をおこなうGPIアンカー型受容体に注目。研究チームは、まず、生きている細胞の細胞膜中で、ラフト経由でシグナル伝達を行うと考えられてきたGPIアンカー型受容体を、1分子精度で、多 数同時に追跡する方法を開発した。また、2種類の違う分子を同時に1分子追跡する(2色で同時に追跡する)方法を開発。

これによって、GPIアンカー型受容体は同じ分子同士で2量体を作ること、それらがコレステロールと結合して安定化され、寿命が0.2秒のラフトを作ることが分かりました。つまり、バターはオリーブオイル薄膜中では大きな塊を作っているのではなく、数個から数十個の分子が集まっただけの直径数ナノメートルの 小さい構造で、しかも、常にできたり壊れたりしていることが分かった。

さらに、GPIアンカー型受容体に細胞外からのシグナル分子が結合すると、2量体をもとに安定な4量体を形成する。この2量体を結合させる糊として、コレステロールを含むラフトが働く。このラフトの働きが、 GPIアンカー型受容体のシグナル伝達に必要であることが分かったという。

今後は、安定化4量体がどのようにして細胞内のシグナル分子に信号を伝えているのかを解明することが課題。有力な仮説は、膜の表裏をつなぐ貫通型タン パク質"X"がGPIアンカー型タンパク質の4量体形成依存的に誘導されることだ。また、アルツハイマー病の発症、エイズウィルスやBSEなどの感染でも、細胞膜上でタンパク質の会合が重要であることがわかってきているため、このような会合とラフト誘導との関係の理解、タンパク質集合の阻害法などの開発が今後の重要な課題となる。


本成果は米国東部時間2012年7月22日に米科学誌「Nature Chemical Biology」オンライン速報版で公開された。

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