医療用インプラントの機械的試験

インプラントおよびその製造に用いる材料には、原材料、部品、システムの静的および動的機械特性の評価を含む包括的な試験が行われる。これら試験の多くが国際的に標準化されている。その他の試験手順は特定用途に特化されている。いずれの場合も、高度な試験器具およびクランプ用治具に加え、柔軟なプログラムが可能な試験ソフトウェアが関連データの測定と分析において役立っている。

By: Toby Kemp, High Wycombe/UK; Jim Ritchey, Norwood, MA/USA; and Erik Schmidt-Staubach, Pfungstadt/Germany

医療用インプラントメーカーは、部品またはシステム障害のリスクを慎重に検討し、それらに対して充分なリスク軽減がなされていることを示す必要がある。そのため、認可に先立ってインプラント製品には、材料試料に対する単純な引張試験から、組み合わせ圧縮試験、捻り試験、曲げ試験、さらには定義された環境条件下における完全なインプラントシステムに対する圧力脈動の模擬まで、多様な機械的試験が行なわれる。

以下に例を挙げてさまざまな試験への適用について紹介する。

人工膝関節置換術脛骨トレイの疲労挙動

膝脛骨トレイの疲労破壊は、人工膝関節全置換(TKR)の障害メカニズムでもっともよく報告されるものの1つである。これは、土台の骨の支えが失われることが原因で引き起こされ、インプラントが機械的に不安定になる。

通常の歩行で伝わる繰り返し荷重によって疲労亀裂が生じ、最終的には致命的障害につながる。ISO 14879-1規格1には、さまざまな設計の脛骨トレイの疲労特性を測定するための一般的な試験パラメータ群が規定されている。

実際には、インストロン社のモデル8870など、油圧サーボ試験システムが疲労亀裂伝播に対する耐性などの基礎的材料特性の導出と脛骨トレイ全体の試験の両方で非常に安定性があることが分かっている。完全に支えられた関節をシミュレーションするために、クランプ用治具を用いて脛骨トレイの半分が固定される。他方の支えのない関節には、生理学的な負荷がかかる。

図1:コンパクトで小型な卓上型試験システムだが、衝撃により対象部材表面に生ずる変形を精度良く評価できる。

この種の試験に頻繁に用いられる疲労試験システムは、小型卓上型試験システムであるインストロン社のモデル8872である(図1)。公称荷重容量25 kNのこのシステムは、特に生体医療用途向けの材料と部品の静的および動的試験に適している。

ロードセルが実装される油圧サーボアクチュエータを搭載した調整可能なクロスヘッド、ドレイン溝の入った耐腐食性Tスロットベースが、液槽内での試験、およびその他幅広い試験において、器具を非常に安定した状態に保つ。コンソールソフトウェアが信号生成、較正、リミット設定、状況のモニタリングなどを含め、試験システムをPCから制御できる包括的な機能を提供する。さらに、繰り返し試験にはWavematrixブロックプログラミングソフトウェアを使用できる。

通常、動的負荷下で測定を行うとき、システムの部品に加速度が作用し、それらが試料に加えられる実際の力に重畳される。このため、ロードセルはそれ自体の移動からの力と、付随するクランプ用治具の力も記録する。

Dynacellロードセル(荷重容量範囲250 N~2500 kN)は高頻度の試験でもこれらの影響を軽減する。付属の8800デジタルコントローラとの組み合わせで、加速度および液槽内での試験時に発生する流体力学的影響により引き起こされる慣性エラーの自動補償が実現される。

脊柱:静的試験、捻り試験、疲労試験


脊椎固定用構成品は、大きな荷重が致命的な障害になることがある。このため静的試験を実施して、脊椎固定用構成品の破壊を引き起こす圧縮、引張、ねじり荷重を評価する必要がある。

また、実際には疲労障害が致命的障害より一般的であるため、脊椎固定用構成品の耐用試験が極めて重要である。一般に、負荷は定振幅、荷重制御の正弦波形を使い、500万サイクル以上実行される。

ASTM F1717規格2は、静的試験と疲労試験両方の方法を規定している。試験は通常脊椎骨に起因する誤差を排除するため、脊椎骨ではなく、超高分子量ポリエチレン(PE-UHMW)のブロックで行われる。

万能試験システムは、一般に静的引張試験および圧縮試験に適している。荷重対変位曲線の記録、規格が指定する計算の実行には、標準の試験用ソフトウェアパッケージ(例:インストロン社のBluehill 3)を使用することができる。捻り歪みの用途には、インストロン社の55MT MicroTorsionなどの卓上型ねじり試験機(多回転向けの設計)が適している。

図2: エレクトロダイナミック試験システムは、幅広い周波数レンジにわたる卓越したレスポンスと精度の評価に適している。

±135度の回転角度で充分な場合、軸および捻り疲労試験の両方に対応するモデル8874疲労試験システムが効率的なソリューションである。この卓上型の二軸油圧サーボ試験システムは、ツインコラムフレームと、上部クロスヘッドに搭載された軸および捻りが組み合わされた動的アクチュエータが特徴である。

そしてここでも、8800デジタル電子コントローラおよびDynacellロードセル、そしてコンソールおよび(または)WaveMatrixソフトウェアの組み合わせがシステムを理想的に補完する。

脊椎固定用構成部品の耐久性試験を行う必要がある場合、および幅広い周波数レンジにわたる卓越したレスポンスと精度を必要とする場合は、インストロン社の全電気式試験機(ElectroPuls E1000、図2など)とWaveMatrixソフトウェアの組み合わせで必要な機能が提供される。

これらの高度な機器はデジタル制御システムを搭載し、試料の硬度に基づいたループチューニングも簡単にできる。

システムは単相AC電源のみで駆動でき、基本操作にその他のユーティリティ(圧縮空気や油圧、水など)は不要である。

 

ステント:材料と構造の効率的な疲労試験

従来のASTM F2477–073などの規格に照らしたステント試験、ステントグラフト試験は、事前指定のサイクル数の血流をシミュレーションした圧力脈動をデバイス全体にかけることが含まれる。代表的な試験片サンプルを評価して、試験時間全体を短縮できるよう、1つのシステムで複数の試料の試験を行う必要がある。

図3:マルチスペシメン型の治具。各試験片ステーションは、疲労試験用ロードセルと正確なアライメント調整、被験材料または構造に応じた専用のグリップを装備している

この要件に対応するため、インストロン社はマルチスペシメン型の治具、ElectroPuls E3000試験装置(図3)を開発した。各試験片ステーションは、疲労試験用ロードセルと正確なアライメント調整、被験材料または構造に応じた専用のグリップを装備している。

アセンブリ全体が温度制御された槽に入れられ、試験片の生体外試験が行われる。試験は、液槽の統合温度制御や各ロードセル読み取り値のライブ表示、各試験片破砕を測定する力の傾向監視などの機能を備えたWaveMatrixソフトウェアによって制御される。
 

多様な体験


上述のソリューションは、インストロン社が医療機器業界のユーザーと緊密なパートナーシップの下に開発した多様な標準化および特定用途向け試験ソリューションの一部である。より包括的な概要は同社のウェブサイトで参照できる。

いかなる場合でも、試験システムメーカーのアプリケーション専門家は、メーカーおよびユーザーとの緊密な連携の下、特定の試験要件向けにカスタマイズした試験システムを構成したり、困難な試験の課題に対して型にはまらないソリューションを開発できるよう準備を整えていている。

 

参考文献:

1. ISO 14879-1: Determination of endurance properties of knee tibial trays
2. ASTM F1717: Standard Test Methods for Spinal Implant Constructs in a Vertebrectomy Model
3. ASTM F2477–07: Standard Test Methods for in vitro Pulsatile Durability Testing of Vascular Stents

 

 

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