MEDTEC Online

医療のトレーサビリティに革新をもたらすガンマ線滅菌対応のFRAM搭載RFID

医療のトレーサビリティに革新をもたらすガンマ線滅菌対応のFRAM搭載RFID

医療機器の放射線滅菌記録や検査・出荷・流通データを保持でき、機器の使用状況・在庫から廃棄管理までを一括管理できるようになれば医療機器のトレーサビリティ管理は飛躍的に向上する。その上、医療現場での安心・安全・作業性アップにも大きく寄与することは間違いない。

そのような医療分野でパラダイムシフトをもたらす可能性のあるICタグがある。富士通セミコンダクター株式会社が開発した不揮発性メモリFRAM(Ferroelectric Random Access Memory)を搭載したRFID (Radio Frequency IDentification)タグ用LSIシリーズ「FerVID family(ファービッドファミリー)」だ。

従来の自動認識技術(RFID)タグでは、放射線を使った滅菌処理をすると記憶されたデータが破損する恐れがあったため、滅菌される前に医療器具につけることが難しいと考えられていたRFID。同社は、これに強誘電体メモリのFRAMを搭載することで、滅菌処理に使われるガンマ線や電子線の照射を受けてもデータを確実に保持できるRFIDを展開している。

FRAMは、強誘電体薄膜(Ferroelectric film)をデータ保持用のキャパシタに利用した不揮発性メモリで、ROMとRAMの両方の性質を併せ持つため、高速書換え・高書換え耐性・低消費電力・耐タンパーといった多くの特長もある。電源が遮断されてもデータ保持できる点も魅力だ。

「医療機器の製造時にこのタグを取り付ければ、機器の出荷から廃棄までライフサイクル全体を管理ができるようになります」と語るのは富士通セミコンダクター社システムメモリ事業部ソリューション技術部システムコンサルティングの寺前淳一氏。

「病院内でスマートフォンやタブレット端末をRFIDリーダに用いればタグの情報を電子カルテシステムと共有することも可能になります」(寺前氏)とRFIDが、さまざまな医療アプリケーションに応用できる可能性を示した。

富士通セミコンダクターのFRAM搭載RFID用チップが採用されている凸版印刷の「オートクレーブ滅菌対応のICタグ」(超小型コイン型)

医療用途向けとして記憶に新しいところでは、昨年、凸版印刷株式会社が富士通セミコンダクターの「FerVID family」を採用して開発した「オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)滅菌対応ICタグ」がある。

外装には医療向け特殊樹脂を採用しているのでガンマ線滅菌だけでなく、オートクレーブによる滅菌にも対応でき、単回使用のガーゼの他、繰返し使用される手術器具や滅菌器具などに取り付けることを想定したものだ。

用途に応じた形状にも対応できるようにICタグのサイズもHF帯の超小型コイン型(直径6.5mm厚さ2mm)、コイン型(直径15/22mm厚さ2mm)、UHF帯のラベルタグ(40mm x 90mm)を用意しており、管理対象物に合わせて取り付けられる。

特にガーゼへのタグの適用は、手術前後での数量照合としてのニーズも高く、これまで手作業で管理していた作業の効率化のみならずヒューマンエラーの撲滅にも寄与することが期待される。「RFIDを実装したガーゼは国内の学会でも紹介されており、反応がよい」(寺前氏)という。

現在、医療器具や機器の情報の管理という側面だけからみると、まだまだ安価で汎用性のあるバーコードが主流だ。しかしバーコードは認識対象の機器・器具を1つ1つ手にとってスキャナでバーコードをスキャンする必要があり複数認証ができないこと、放射線照射による滅菌処理を必要とする検体容器をはじめ、低温・冷凍環境で保管管理される容器には水滴や霜などが付着することも多く、バーコードの正確な読み取りが難しくなるなどさまざまな課題があった。

オートクレーブ滅菌対応ICタグは用途に応じてUHF帯のラベル形状のタグも開発されている。

そのため医療分野でもバーコードではなく非接触で複数一括または同時読み取り可能なRFIDタグによる管理を行いたいというニーズは多くあったものの、従来のEEPROM搭載LSIを実装したRFIDタグは、ガンマ線の照射でデータが消失してしまうため、RFIDの医療シーンでの活用が進んでいなかったという事情があった。「FerVID family」のような放射線滅菌に耐えるFRAM搭載のRFIDタグ用LSIは、まさに待望のRFIDタグ用LSIといえよう。

RFIDタグは、これまでも、輸液ポンプやシリンジポンプなど病院内を移動するものに電池を内蔵して数十メートルの長距離での交信が可能なアクティブタイプを取り付けることでポンプの所在の把握・管理などに利用されている例があるが、電池を内蔵しないパッシブタグは電池の心配もなく医療器具等の管理に適している。

富士通セミコンダクターのRFIDタグ用LSIは、データを記憶するための大容量メモリ、データ送受信回路、通信エリア内に存在する複数のRFIDを認識できるようにする技術などを一つのチップに集積したもの。現在、13.56MHzのHF帯に対応した「MB89R118C」(メモリ容量2048バイト)と「MB89R119B」(同 256バイト)、860MHz~960MHzのUHF帯に対応した「MB97R803A/B」(メモリ容量4000バイト)と「MB97R804A/B」 (同4000バイト、シリアル・インタフェース搭載)を提供しており、8月には9KバイトのFRAMを搭載したHF帯RFIDタグ用LSI「MB89R112」を発売する。

富士通セミコンダクターの「FerVID family」は、不揮発性メモリであるFRAMを搭載することで、従来のEEPROMやフラッシュメモリに比べて書き込みが高速で低消費電力、ほぼ無限の書き換え回数、優れた耐タンパー性などさまざまな特性を備えたRFIDタグ用LSIだ。しかも医療分野で要求されている25kGy(キログレイ)以上の線量のガンマ線照射による滅菌処理を施してもデータを保持できることで、医療シーンでの応用がますます広がりそうだ。

 

富士通セミコンダクター株式会社

神奈川県横浜市

http://jp.fujitsu.com/group/fsl/

 

カテゴリー: