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バイオ分子の挙動を標識分子なしでリアルタイムに画像化

バイオ分子の挙動を標識分子なしでリアルタイムに画像化

東北大学の研究グループらが、バイオ分子の分布が変化する様子を応答電流の変化からリアルタイムに画像化することができるセンサシステム「バイオLSI」の開発に成功した。脳の疾患と関係する神経伝達物質の放出の様子の観察や、移植用組織の検査などへの幅広い応用が期待される。

今回開発されたバイオLSIは、最先端LSI技術とMEMS技術を融合することにより作製されたもので、東北大学マイクロシステム融合研究開発センター原子分子材料科学高等研究機構の研究グループが、日本航空電子工業株式会社、株式会社トッパン・テクニカル・デザインセンターとともに開発した。画像化だけでなく、各画素を1つのセンサとして使用することで、多くの細胞を同時に計測するなどの同時多サンプル計測に利用することもできるという。

本研究は、JSTの先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムのひとつであるマイクロシステム融合研究開発拠点で実施したものであり、2012年6月13日付けの英Lab on Chip誌電子版に研究成果が掲載された。

バイオ分子の挙動をリアルタイムに画像化する技術は、生きている細胞同士のコミュニュケーションの解明や病気の診断など、基礎研究と実用技術の両方の分野 で求められている。特に、生殖医療、神経科学、薬剤スクリーニングなどの観点から、細胞の活性の指標となる呼吸量評価や、細胞―細胞間のコミュニュケー ションに利用される神経伝達物質を、定量的に捉える技術が求められている。
バイオ分子の画像化には一般的に蛍光標識法が用いられているが、蛍光物質で目的のバイオ分子を標識する必要があり、標識が邪魔になって本来のバイオ分子の状態を観察することができないという問題があった。

本研究で採用したアンペロメトリー法は、電気化学計測法のひとつで、電極を用いて溶液中の化学物質を酸化/還元する際の電流変化から、化学物質の濃度を知ることができる。一般的にバイオ分子の画像化に用いられる蛍光測定法と比較して、標識蛍光物質が不要なため、本来のバイオ分子の挙動を観察できる利点があるが、アンペロメトリー法は通常、1本の電極を用いて行うため、ある1箇所の分子濃度を測定することはできても、その分布を画像化することはできなかった。

これまでにアンペロメトリー法で分子分布を画像化するための手法として、2つの方法が検討されてきた。ひとつは電極を 走査して画像化する方法で、もうひとつは多数の電極を並べたチップを作製する方法。電極を走査する方法は、走査型電気化学顕微鏡(SECM)と呼ばれ、微小電極を利用することで高解像度に細胞から放出される物質を画像化することに成功しているが、走査に時間がかかるため、リアルタイムの測定は困難だった。他方、多数の電極を並べる方法は、従来のマイクロシステム技術(MEMS技術)では集積化に限度があり、100個を超える電極を1枚のチップ上に 作製することは困難だった。

今回開発されたバイオLSIでは、アンペロメトリー用電極の作製にLSI技術を用いることで、10.5mm四方のチップ上に高感度電極を400個集積することが可能になり、バイオ分子の高感度二次元にマッピングに成功。さらに、ビデオカメラと同様の信号処理法をLSIで行うことにより、1/8スケール以下で動画化ができるようになった。この結果、本研究グループでは、酵素の働きによって生成したバイオ分子が広がってゆく様子を200ミリ秒間隔で捉えることに成功した。

現在、貸し出し用のバイオLSIシステムを複数台用意しており、実用センサへの応用研究を実施する提携先を募集している。

 

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)

www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/index.php

東北大学 マイクロシステム融合研究開発センター

www.mu-sic.tohoku.ac.jp

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