マーケット分析

大手医療機器メーカーの仕入先・購買方針を分析(1)、帝国データバンク

−購買方針を見極めた企業誘致の有効性

医療機器産業の地域振興には、(1)産官学連携や共同研究開発支援など地域における企業の自律的発展の誘発させるイノベーション政策と、(2)大企業と地元企業をマッチングする政策が進められている。

特にマッチングの取り組みは全国各地で盛んに行われているが、多くの場合、地域企業側の「片思い」で終わってしまうという。その一つの原因は、大企業であることが多い買い手の購買方針を理解しないまま、地域の中小企業を押しつけてしまうことにあると考えられる。ローラー作戦も体力のあるうちは確かに成果が出るが、各地の取り組みが飽和してしまうと、結果として有利な条件を持つ地域や企業が勝ち残るのである。

帝国データバンクでは、大手医療機器メーカーでも医療用品や比較的小型の機器を製造している大手メーカー3社(ニプロ株式会社、テルモ株式会社、シスメックス株式会社)の仕入先を分類することで、取引構造(仕入)の特徴を、仕入先企業を分類することによって分析した。

今後、大企業と地域企業とのマッチングによる産業振興をはかる上での有効な調査結果だ。

<調査結果まとめ>

1. 医療用部品・部材は、「サプライヤー(製造業)」から買うのか、「商社(卸売業)」から買うのか」?

医療機器メーカーの仕入状況を比較(帝国データバンク調べ)

3社の一次仕入先に占めるサプライヤーと商社の割合は、サプライヤーが6割強と3社に共通した傾向がみられ、精密・医療機器では商社の数がメーカーとほぼ拮抗している。これに対して、合成樹脂の場合は商社がごく少数で、メーカーからの仕入れが大部分を占めて、仕入れている商材によって傾向の違いがみられた。

2.仕入れている商材の種類は何か?

ニプロとテルモでは似通った結果が得られたが、細かく見れば、ニプロでは電気機器の商社からの仕入が目立って少なく、テルモでは一般機器のサプライヤーからの仕入が特に多くなっている。他方、シスメックスの仕入構造はこの2社と異なり、精密・医療機器や一般機器のウェイトが小さく、電気機器のサプライヤーからの仕入がかなりの割合を占めているのがわかった。

類似産業分野の企業であっても、産業大分類別・種目分類別に見ると、取引構造は必ずしも同じでない。地域振興をはかる場合、例えば中小の電気機器メーカーを多く抱えている地域であれば、テルモよりもシスメックスに似た仕入構造を持つ企業を誘致するほうが、マッチング政策としてはより効果的と考えられる。

3. 仕入れ種目分類にみると、地域ではどこのサプライヤーを利用しているか?

3社とも、一次仕入先は本社所在地域の都道府県が最も多い(仕入先全体の3割弱を占める)。

ただし、2番目に仕入先数の多い地域には際立った違いが見られた。テルモでは、工場が2か所ある静岡県が本社のある東京都とほぼ並んでいるが、ニプロでは工場所在地域からの仕入が非常に少ない。つまり、工場所在地域からの仕入が多いか少ないかは企業によって異なっていると言える。

また、兵庫県に本社工場のあるシスメックスでは、大阪府が東京都を抑えて仕入先の第2位となっているほか、第4位には京都府が入るなど、近畿圏の企業が存在感を持っている。テルモの場合も、本社や工場から近い神奈川県や埼玉県が第3位、第4位である。しかしながらニプロの場合は、第2位が東京都、第3位が埼玉県と、本社とも工場とも離れた地域が上位となっている。したがって、仕入先企業数は本社や工場の所在地からの距離とも必ずしも対応していないということになる。

以上のように、大手医療機器メーカーが「どこから仕入を行っているか」については、本社所在地域が多いということは言えても、地域分布全体については企業の個性が表れるため一概に言えない、ということになる。大手企業とのマッチングを考えていく上では、こうした企業間の違いをふまえて進めていくことが肝要と言える。

4. 精密・医療機器の仕入れ先の傾向は?

ニプロやシスメックスでは工場所在地域からの仕入がないのに対し、テルモでは工場所在地域からの仕入が一定の割合を占めているからである。シスメックスは、精密・医療機器や電気機器ではその他地域のウェイトが大きいが、一般機器は本社所在地域から、合成樹脂は大阪府から主に調達している。

このように、「どこから仕入を行っているか」という問いへの答は、「仕入れている商材の種類は何か」によって変わってくる。同じ医療機器メーカーであっても、購買方針は決して同じではない。このことを踏まえずに売り込みをはかっても、新たな取引関係の構築にはつながりにくいであろう。

5.【発展事例】青森オリンパス(株)の取引構造分析

青森県黒石市に本社工場を置き、内視鏡処置具を製造している青森オリンパス株式会社の取引構造(対象はサプライヤーに限定)は、一次仕入先のうち、本社工場所在地域(青森県)にあるのはいずれも中小企業で、金属あるいは一般機器の分野で強みを持っている。

これに対して精密・医療機器では青森県内に仕入先がなく、グループ企業2社(うち一方は親会社)が存在感を持っている。青森オリンパスと青森県企業のマッチングを考える上では、金属/一般機器と精密・医療機器のどちらを重視するかが一つのポイントとなるであろう。(調査の全文は添付のPDFを参照下さい)


帝国データバンクでは、大規模データをベースに、特定産業(任意設定が可能)をターゲットとして新たに項目設定を行い、独自の方法で取り出した特定産業をデータパッケージとし、急成長企業やその要因、さらには地理的分布などの視点で分析している。

株式会社帝国データバンク

産業調査部産業調査課

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