課題解決型医療機器開発で「伴走コンサルティング」が好走

平成22年(2010)度の補正事業としてスタートした「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」(以下、課題解決型事業)。

経済産業省が、中小企業や異業種のモノづくりの力を活用し、医療現場における課題解決に資する医療機器・関連機器の開発・ 改良を促進することを目的として始めた事業だが、初年度に経産省から事業管理支援法人として事業運営を任されたのが、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(以下、MURC)だ。

同社は、MUFGフィナンシャルグループのシンクタンクとして、官公庁・地方自治体、民間企業が抱える諸課題の解決に向け、調査研究、戦略構築・実行を支援しているが、同社が課題解決型事業において事業運営の委託を受ける大きな決め手となったのは、同社が提案した「伴走コンサルティング」のスキームだ。マラソン走者に伴走するようなイメージで、事業期間の最初から最後まで、各実証事業にコンサルタントが「伴走」し、薬事関連などのコンサルティングを行うものだ。

課題解決型事業に採択される企業は必ずしも医療機器メーカーではなく、医療機器分野に新規参入する企業も多いため、医療機器開発における「薬事」と「(臨床を踏まえた)事業化」に関する専門知識を有するコンサルタントによる支援は、プロジェクトの事業化の促進に大きく寄与した。

特に初年度は、公募事業303件から36件が採択され、実施期間も1年間という短期間ということもあり、多くの実証事業者が伴走コンサルティングが役立ったと評価している。実際にソフトケア有限会社が中心となって進めた「眼底血流画像化装置」と「血管年齢解析・表示ソフト」は製造販売を開始している。また、来年度の上市をめざしている福井工業大学機械工学科が中心として進めた「脳卒中患者に対する上肢機能訓練用医療機器」の開発でも、伴走コンサルティングが「非常に役立ち、今後もこうしたサービス提供があれば活用を強く勧める」と福井工業大学機械工学科の古荘純次教授は語る。

今回、医療機器開発の「伴走コンサルティング」を主導したMURC主任研究員の柏野聡彦氏は、大学でも生体制御工学を専攻し、医療機器分野での調査・コンサルティングに長年従事してきた専門家。薬事分野では財団法人医療機器センターと、事業化ではNPO法人医工連携推進機構とタッグを組み、「伴走コンサルティング」体制を構築した。

伴走者から見た成功の秘訣

「伴走コンサルティング」は事業者のニーズに応じて1事業者あたり最大6回実施された。柏野主任研究員は、伴走コンサルティングの経験から、「医工連携による医療機器開発」の成功のポイントは以下の4点に集約されると語る。

臨床現場の「課題」と「解決法」が適切に設定されていること

臨床現場の「課題」について、ごく限られた医師ではなく広範な医師のニーズであるかどうかを見極めること。そして「解決法」についても、開発機器の機能・構造・費用がニーズに即しているかをきちんと判断すること。

製造・販売を担う企業のイニシアティブが発揮されていること

大学の研究者はその見識・中立性・指導力からチームの統括者として圧倒的だが、薬事も事業化も企業の責任で行うものであることから、製造販売を担う企業が、(できれば実証事業を自社経営計画に明確に位置づけて)プロジェクトを強力に牽引することが望ましい。

薬事戦略(特にクラス分類)が適切に設定されていること

「クラス分類」は薬事対応の手続きに影響するので、不必要に高いクラスを目指さないこと。設計の初期段階のコンサルティングでクラスIV相当(承認、要治験)がクラスI(届出)で済んだケースもあった。

開発内容が既存品の改良などであること

短い実施期間に事業化に到達した2件は、医療機器産業の仕組みをよく理解し、身の丈に合った形で自社製品の改良を行っていた。特に中小企業で医療機器産業に参入を考えている企業は、自社の技術をベースに体力を付ける必要がある。

いずれの場合も、「研究開発開始後の体制・内容の変更は極めて困難であるため、計画の段階からコンサルティングを活用するなど、効率よく事業化することが肝心」(MURC・柏野主任研究員)という。

経産省では、初年度の「伴走コンサルティング」の成功を踏まえ、平成24年度以降の課題解決型事業においても「伴走コンサルティング」のスキームによる事業化支援を拡充、実施する。平成23年度以降は「課題解決型医療機器等開発事業」を実施期間3年として展開している。平成23年度(2年目)は、公募183件から12件が採択された。

平成24年度(3年目)の実証事業は2012年5月9日(水)締切で公募が行われ、事業運営およびコンサルティングは三菱グループの株式会社三菱総合研究所が担当する。

伴走コンサルティングの先鞭をつけたMURCは、今後は課題解決型事業のフォローアップなど側面支援を継続しながら、医療機器業界再編の大きな流れを見据え、MUFGフィナンシャルグループのシンクタンクとして個別の企業・大学・医療機関・行政機関のパートナーとなって伴走コンサルティングを展開する。

自動車や家電の産業構造が激変する中で医療機器産業は大きな期待を背負う。内閣官房医療イノベーション推進室(室長:松本洋一郎 東京大学副学長)が設置され、医療機器法の制定を目前に控えている。課題解決型事業をはじめ大規模な国家予算が投入される今、まさに医療機器産業が飛躍するチャンスといえる。「その飛躍の現場を支援することこそが医工連携に携わるコンサルタントの使命です」(MURC・柏野主任研究員)という。

 

医療機器開発における「MURC伴走コンサルティング」に関するご相談とお問い合わせは、MURC事務局(電話: 03-6733-1625、電子メール:ikou[アットマーク]murc.jp)まで。

 

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