MEDTEC Japan2012トップインタビュー 【医療機器イノベーション関連セミナー】座長 原澤 栄志氏

MEDTEC Japan2012トップインタビュー

【医療機器イノベーション関連セミナー】座長 原澤 栄志氏

---日本発の革新的医療機器をグローバル展開するために---

日本では世界に誇れる基礎研究成果(シーズ)がありながら、それをなかなか医療機器として実用化できないことが問題となって久しい。もはや医療機器メーカー1社だけの努力だけでは、厳しい国際競争を勝ち抜けない状況となっており、産官学の連携は必須だ。

4月18日(水)に開催されるMEDTEC Japanの「医療機器イノベーション」セミナーでは、各企業のグローバル展開を視野に入れながら、具体的に日本の優れた技術をどのように医療機器ビジネスとして展開していけるかについて、政府の最新政策方針といった国家レベルの戦略から、臨床研究や特許出願の手引きといった企業の細かいビジネス戦略まで網羅して、各分野の専門家が解説をする。

今回のイノベーションセミナーの座長を務められる日本医療機器産業連合会 (以下、「医機連」という)産業政策会議 議長の原澤栄志氏にセミナーの内容、および革新的医療技術の実用化への課題について伺った。


『医療設計&製造技術』(JMDMT): 今回の「医療機器イノベーション」セミナーでは、まず内閣官房「医療イノベーション推進室」の八山幸司 企画官が登壇され、政府の取り組みについてご講演されます。

原澤 栄志氏(以下、原澤氏):  丁度、今年の3月末で政府が2007年に発表された「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」が終了となります。内閣官房「医療イノベーション推進室」では、新室長として松本洋一郎 東京大学副学長が就任され、現在「次の5カ年計画」も練られており、4月のMEDTECセミナーでは、八山企画官から最新の方針についてお話をして頂けると思います。

また八山氏は、2月末に日本貿易振興機構(JETRO)が主催し、医機連がサポートしているインド医療機器現地セミナーにも参加するなど、アジアについても詳しいので成長著しいアジアの医療機器業界の動向などを織り交ぜてお話頂けると期待しております。

最近、日本の企業の間でも、人件費や単価が高騰する中国からインドに関心がシフトしつつあるので、そういった面からもアジアへのビジネス展開を視野に入れたイノベーション推進のヒントが得られるのではないでしょうか。

JMDMT: 確かにアジアを中心に国家レベルで医療機器の技術開発に取り組んでいる国が多い中、日本もこの流れに取り残されないようにしないとなりません。

原澤氏: 医療機器だけでみると日本の市場規模は約2.3兆円ですが、医療という分野全般で捉えると何十兆円という規模になり、政府も「ライフ・イノベーション」(医療・健康・介護分野)で、2020年までに45兆円の市場と、280万人の雇用を生み出すことを目標にかかげています。

このように日本政府も医療関連産業を国の成長牽引産業として明確に位置づけていますが、高度成長期と違い、経済成長をうながすために、昔のように国が産業振興として莫大な資金投下ができない上に、高齢化で医療費の高騰が心配される状況にあります。日本は世界で最も早く「高齢化」時代を迎えますが、逆転の発想でその対応に革新的な技術をもって取り組み、医療費を適正にして国民の健康面・医療面での向上を図り、合せて、医療関連産業を活性化させることが出来れば、医療と産業の両面からもプラスになります。

高齢化は、日本だけの問題ではなく先進国ではどこでも深刻な問題となりますので、そこに産業として対応出来るならば、そのノウハウを持って、他国向けの輸出も可能です。そこで、今後どうすれば革新的医療機器の開発ができるかという実際の方法論になるわけですが、そうなると国の管理下にある「規制」と「保険収載」が重要なポイントなってきます。つまり、革新的医療機器の開発は、企業単独ではできず、国別対抗の要素もあるので、産官学連携がどうしても必要になってくるわけです。

JMDMT: この5年を振り返っても、産官学連携はかなり政府も積極的に推進されているように思います。

原澤氏: 確かに政府が、革新的技術の開発を阻害している要因を克服するために、研究資金の特例や規制を担当する部局との並行協議などを試行的に行う「スーパー特区」を創設するなど、ただ予算をばら巻くのではなく、選択集中させたことは大きな成果でしょう。

また、イノベーションといっても5年先10年先に花開く再生医療やゲノム医療技術への支援だけでなく、早く役に立つ機器への支援も必要ですので、経済産業省の「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」に補正予算がついたことも大変意義深いことで、今後の開発力を大きく後押しするでしょう。

もともと医療機器は医薬品とは異なり、現場のニーズに応えて常に改良・改善を加えていく性質のものなので、全く新しい技術を開発というよりは、他の分野の技術をうまく移転して製品開発を行う要素が強いのです。ですから課題解決型医療機器の開発・改良に着目して進める支援事業は非常に重要なのです。

JMDMT: こうした政府の動きと呼応して、原澤様が事務局長を務められる医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS)も重要な役割を担ってきました。セミナーでもMETISの活動について原澤様ご自身からご説明頂けるようですが、2001年の設立時と比較すると人々の医療機器に対する意識も大きく変わったのではないでしょうか?

原澤氏:歴史的に振り返ると、1980年台半ば、日米貿易摩擦の中で、医療機器に対しても国内市場開放が行われ、それと並行するような急激な円高進行により医療機器は輸入超過となりました。そんな中、我が国としても医療機器業界側の窓口を一本化する必要性にせまられ、1984年に日本医療機器産業界(医機連)の前身である日本医療機器関係団体協議会(日医機協)が設立されました。さらに米国が産官学連携体制を敷いていることから、日本もアカデミアと産業が国の政策と歩調を取ることが大切ということで有志によってMETISが設立されました。

METISの第1期(2001年4月〜2004年3月)では活動の方向性を固め、第2期(2004年4月〜2007年3月)に具体的なテーマ「日本発の革新的医療機器の製品化を促進」を絞り込みました。第3期(2007年4月〜2009年3月)には、医療機器産業を取り巻く規制や仕組みを改善させるために働きかけ、薬事法の審査体制を増員して強化するなどの審査迅速化アクションプログラムや、治験活性化のためのアクションプランなどが設定され、5か年計画で現実に推進されました。また「スーパー特区」に採用されている内容が、METISの重点テーマの中からかなりピックアップされています。

今は第4期ですが、今までの成果にさらにドライブをかけるために、革新的医療機器・技術の実用化とレギュラトリーサイエンス、医療機器産業の基盤整備として、未承認医療機器の臨床評価や医療機器の適正評価、「アジア医療圏」構想などの提言を推し進めています。

METIS立ち上がりの時期は、まだまだ医療機器に目を向ける人は少なかったのが、最近では医療機器が注目されるようになったことは嬉しいことです。

JMDMT: 産官学の取り組みも全国各地で進んでいますが、いくつか具体例を挙げて頂いてもよいですか?また、スーパー特区の成功例なども教えて下さい。

原澤氏:それぞれに熱心にやっておられますが、大阪商工会議所「次世代医療システム産業化フォーラム」、神戸市「神戸医療産業都市構想」、福島県「うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト」、岡山県「メディカルテクノおかやま」など、それぞれコアを持ってうまくやっておられます。スーパー特区では、2008年に採択されたナカシマメディカル株式会社の人工関節が産業的にも成果を上げていると思います。ナカシマプロペラさんは、船舶用プロペラで世界トップシェアを持っておられましたが、プロペラ加工職人の技を見た医師からの助言で医療機器部門を立ち上げ、人工関節の開発・商品化に成功した良い例でしょう。

JMDMT: そういう意味でも医療機器産業への異業種からの参入は、これからも期待できるでしょうか?

原澤氏: これからは在宅医療が重要になりますので、家電関連会社も参画してくるでしょうし、ソフトウェアの法制化も検討されているのでソフトウェア関連企業も興味を持っていると思います。

JMDMT: ただ日本ではベンチャーが育ちにくいといわれ、起業してまで医療機器産業に参入してくるような新しい動きは出にくいのかもしれません。

原澤氏: 日本でベンチャーが育たないのではなく、まだまだ終身雇用のようなシステムのある日本では、ベンチャーに人が集まりにくいということだと思います。知識を持っている人が流動していないのが一番の問題です。

厚生労働省のまとめた資料によると日本での医療機器産業の雇用は約11万〜12万人で、米国のカリフォルニア州とミネソタ州の2州を合わせた医療機器関連の雇用者数と同程度です。米国全土では約42万人の人材が医療機器分野で働いているので、そもそも規模にも差があるのですが、さらに、これらの人材が流動しているのでベンチャーも成功しやすいのだと思います。日本は、日本流のやり方を模索している途中といえるかもしれません。

また、医療機器はニーズから発想する方が多いので、米国では医師がベンチャーを起業する例が結構あります。これは教育システムの違いが大きいと思うのですが、米国では医学部に進む前に4年間一般学部を履修しているからでしょうか、ビジネスに意欲的なドクターも多いようです。日本では最初から医師になろうとして医学部に行きますので、起業家になる方が稀なのは当然だと思います。

JMDMT: 臨床ニーズと技術シーズのマッチングも必要になってきます。

原澤氏: 医療機器メーカーが臨床現場のニーズにどう巡り会うかも非常に重要です。医療イノベーション推進室は、臨床のニーズに異業種の方が持っているシーズで積極的に参加できるように尽力しています。

現実的には、現場のニーズでも重たいニーズと軽いニーズがありますので、一定の資金で短期間に完成するものと、確かに現場では困っているかもしれないが、実現には治験も必要で、億単位のお金が必要な重たいテーマもあるわけです。いずれにしても、フィージビリティ・スタディーが容易に出来るのかどうかメーカーにとっては重要なポイントで、METISが進めてきた「未承認医療機器による臨床研究」の手引書はどちらかと云えば、前者の場合に大いに役立つでしょう。

この「未承認医療機器を用いた臨床研究実施の手引き」は既に全国の治験や臨床研究関連施設に500部以上、配布済みでフォローアップを進めているところです。

JMDMT: 今回のセミナーでもオリンパス株式会社・研究開発センター医療法務本部 医療品質保証部の中里適部長が未承認医療機器を用いた臨床研究実施の手引きの概要を紹介される予定になっています。

原澤氏: 今まで臨床研究に未承認医療機器を使うのは薬事法違反なのではないかという不安もあったと思いますが、厚生労働省から昨年ガイドラインが出て、医師主導による臨床研究に対してメーカーからの機器提供のあり方が明確になり、手順もわかりやすくなったのは大きな前進です。今後はスムーズに臨床評価が出来るようになることを期待しています。

JMDMT: その他、近著『「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!』が大評判の北原脳神経外科病院の北原茂実委員長からの大胆な提言も期待できそうです。

原澤氏: 北原先生はカンボジアをアジアの医療の拠点として成長させる狙いでプノンペンに同国初の総合医科大学と付属病院設立を構想しておられますが、それだけでなく、東北復興活動にも積極的に取り組まれています。国際的視点を持ちながら震災からの復興という日本が今置かれている立場から医療メーカーが危機をチャンスに変えるためのさまざまなアイディアが飛び出してくるはずです。

JMDMT: アジアといえば現地で生産拠点展開されているマニー株式会社CFOの髙井壽秀氏にもご登場頂くようですね。

原澤氏: マニー株式会社は会社の規模はそれほど大きくないのですが、ビジネス戦略が非常にユニークで、隠れたグローバルカンパニーです。輸出率が高く、アジアにも食い込んでいるので実証的な形で色々なお話をして下さるはずです。

昨年のMEDTEC Japanセミナー風景

今年は、初日を「医療機器のイノベーション」、二日目を「医療機器に関する規制関連」のテーマに絞って開催する。

JMDMT: 今までのお話を伺うと、午前の部と午後の部を通してとても体系だったセミナー構成になっています。

原澤: 医療機器メーカーが今後、革新的医療機器を事業として展開していくには、グローバル化は避けて通れない重要なポイントと考えています。今回のセミナーでは、グローバル事業展開を主眼に置いて、産官学の連携をどのようにやっていくかという観点から、まず冒頭に国の政策・新しい展開とアジアでの取り組み方をご披露頂くようにプランニングしました。

具体的案件として北原先生の実証的なお話、そして、マニー株式会社のように頑張れば中小企業でも海外で大活躍できるという実例をご紹介し、午後のセッションでは、各論として、臨床研究実施の手引き、産官学連携の取り組み、特許取得の重要性といったお話や、METISの活動報告と今後の展開をご紹介する予定です。グローバル展開を見据えた上で、今後どのように日本の医療機器技術を推進していくかが大きな課題ですが、今回のセミナーで来場者の皆様には沢山のヒントを見つけて頂けると嬉しいです。

 

 (取材・文責:編集部 安西)


原澤栄志氏:日本医療機器産業連合会 産業政策会議 議長、日本光電工業株式会社 取締役 専務執行役員


 

*MEDTEC Japan二日目のセミナーは、法制度関連に特化した講演と討論です。セミナーの座長を務められる日本医療機器産業連合会の法制委員会委員長でサクラ精機株式会社グループ統括本部・担当部長の飯田隆太郎氏のインタビューはこちらをご覧下さい。

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