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モバイル・アプリケーション(App)に対するFDA規制

モバイル・アプリケーション(App)に対するFDA規制

最近の携帯機器アプリケーションの急速な普及を受け、米食品医薬品庁(FDA)はモバイル医療アプリケーション用ガイドラインの草案作成しており、既に医師用のモバイル・ヘルスケア・アプリケーションで510(k)申請を許可した事例もある。今後、ますます医療・ヘルスケア分野におけるITの応用範囲が広がっていくものと思われるが、本記事では、米国薬事専門家のケン・ブロック氏が、モバイルアプリに対する最新のFDA規制動向を解説している。

By: ケン・ブロック、RAC(米国薬事専門家)

 

<背景>

ソフトウェアは、使用目的によっては医療機器のFDA定義に当てはまる可能性のある装置である。 FDAが規制する医療機器ソフトウェアになり得るのは以下の通り:

・より複雑な「完成機器」のコンポーネント

・「完成機器」の「付属品」のコンポーネント

・スタンド・アローン型「完成機器」

・スタンド・アローン型「付属品」

・ユーザーとの相互作用を伴う「ソフトウェア」、ユーザーとの相互作用を伴わない「ファームウェア」、ソフトウェア/ファームウェアの組み合わせ、その他

iPhone と iPadのアプリケーションも含め、FDAはこれまでに「モバイル・アプリケーション(mobile apps)」に対する数件の510(k)申請を認可した。 これまでのところ、医療画像表示、モバイル血圧監視計、医療機器データシステム(2011年に新しいFDA規制が発表されたMDDS)などがある。

FDAの医療機器の定義に当てはまるものはいずれも、医療機器として規制され、モバイル・アプリケーションのような新しいテクノロジーも該当する。 2011年のFDAドラフト・ガイダンスは非常に有益であり、モバイル・アプリケーションの状況を説明し、どのように規制されるかを記述している。

FDAの定義:モバイル・プラットフォーム

「商用オフザシェルフ(COTS)コンピューティング・システム、無線接続性あり又はなし、手持ち式。 これらモバイル・プラットフォームの例としては、 iPhone、BlackBerry 、Android 、タブレット・コンピュータ、一般的にスマートフォンや携帯端末(PDA)として用いられるその他のコンピュータなどが挙げられる。」

FDA の定義:モバイル・アプリケーション(App)

「モバイル・プラットフォームで実行できるソフトウェア・アプリケーション、又は、モバイル・プラットフォームに合わせてあるが、サーバーで実行するウェブベースのソフトウェア・アプリケーション。」

FDA の定義:モバイル医療アプリケーション(App)

「連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)のセクション201(h) での「機器」の定義に当てはまるモバイル・アプリケーションであり、以下のいずれかである:

・規制される医療機器の付属品として使用される。または

・モバイル・プラットフォームを規制された医療機器に変える。

モバイル・アプリケーションの使用目的によって、「機器」の定義に当てはまるかどうかが決まる。 21 CFR 801.4で述べられているように、使用目的とはラベリングでの主張、宣伝資料、製造業者やその代理人による口頭または記述での説明によって示される可能性がある。モバイル・アプリケーションの使用目的が、疾病その他の状態に対する診断であったり、疾病の治癒・軽減・治療・予防である場合、或いは人体の構造や機能に影響を与えるよう意図される場合には、モバイル・アプリケーションは機器である。」

モバイル医療アプリケーションの製造業者ではないのは誰か?

モバイル医療アプリケーションの特約販売店である企業。なぜなら、特定のモバイル・プラットフォームに対する全アプリケーションの特約販売店であるから。 例: Apple iTunesストア、ブラックベリー・アプリケーション・ワールド。 従って、FDAはこれらの企業を規制しない。

モバイル医療アプリケーションの製造業者であるのは誰か?

医療機器に該当する「一般的な」ソフトウェアの製造業者に対する定義と同じ。 FDAの定義として、「仕様・設計・ラベルを開発する者、或いは、全体として、または複数のソフトウェア・コンポーネントから、ソフトウェア・システムやアプリケーションを作成する者は、いかなる者でも含まれる可能性がある。」モバイル医療アプリケーション(App)の製造業者に該当する多くの可能性が存在するが、FDAは以下の2つの例を挙げている:

・「モバイル・プラットフォームで使用されることを意図したモバイル医療アプリケーションを作成する者、或いは、機器としての使用意図を持つモバイル・プラットフォームへのハードウェア付属品によって支援されるモバイル・アプリケーションを製造する者。」

・「モバイル・プラットフォーム上で、使用のための「ウェブ・サービス」や「ウェブ・サポート」を通して、モバイル医療アプリケーションの機能性を提供する者。」

除外

FDAはまた、特定の種類のアプリケーション(App)をFDA規制から除外しており、それには以下の例がある:

・電子的な教科書・参考文献・医療教材

・薬の服用のリマインダー、カロリー計算機、健康なライフスタイルを送るための運動の提案などのような、一般的な保健および健康のために使用されるアプリケーション

・請求書作成、アポイント、保険などのようなオフィス業務

・ユーザーに対して何らかの支援を行うものの、医学的使用を意図した方法によらないアプリケーション

・電子的健康記録、個人的健康記録(実際の医療機器からデータを電子記録に取り込む場合には、アプリケーションはMDDS、モニター、その他に該当する。)

モバイル・アプリケーションのFDA製品コード

FDAは、米国市場の全ての種類の医療機器を分類するために、アルファベット3文字(ABC、XYZのような)による製品コードを使用している。各製品コードは、21CFRのパート862~892に述べられたFDA分類規制の特定の部分と関連している(例えば、21CFR886.1400二酸化炭素ガス分析器:FDA製品コード「CCK」、21CFR892.1710マンモグラフィーX線システム:FDA製品コード「IZH」など)。FDAはモバイル・アプリケーションに対する新しい製品コードは作らない。各モバイル医療アプリケーションに適切なFDA製品コード(複数の製品コードを取る場合もある)を判断する際に考慮すべき点は以下である:

・FDAが規制するほかの医療機器と同様に、使用目的による。

・今あるFDA製品コードが適用される。

・「スタンド・アローン」機器である可能性

・今ある機器への付属品である可能性

・510(k) 免除の可能性

・510(k) の可能性

・PMA の可能性

現行のFDA製品コードが何百も存在することに注意する必要がある。また、米国で販売される機器に対しては複数のFDA製品コードが適用されることがある。特定の製品に対して追加的FDA製品コードが適用されることを明確に述べたFDAガイダンス文書が存在することもある。適切な医療機器分類のためのFDA要求事項を理解し、コンプライアンスを確保するため、入念に戦略を構築すべきである。

また、モバイル医療アプリケーションは、現行FDA製品コードの下でFDAに規制されることも理解しなければならない。下に示すのは、新しいガイダンス文書の中で、FDAが挙げている例であるが、モバイル医療アプリケーションが、既に確立されたFDA医療機器規制の下で規制されている事実を見ることができる:

・「機器(単数または複数)を制御する目的のために、または、患者特有の医療機器データを表示・保管・分析・伝達する目的のために、医療機器(単数または複数)に接続することにより、一台または複数の医療機器を拡大するモバイル・アプリケーション」

・「アタッチメントや表示画面やセンサーを用いることによって、或いは現在医療機器として規制されているものと同類の機能性を含めることによって、モバイル・プラットフォームを医療機器に変えるモバイル・アプリケーション」

・「ユーザーが、患者特有の情報をインプットできるようにし、数式を使用したりアルゴリズム処理をしたりして、臨床診療で用いられたり臨床判断を行う助けとなる患者特有の結果・診断・治療勧告を出力することができるモバイル・アプリケーション」

例えば弊社では最近、X線画像での乳がん検知を助けるクラス3ソフトウェア・アプリケーションに対して、FDA査察準備およびソフトウェア・バリデーションの支援を実施した。そのソフトウエアにはPMAが必要であった。そのため、将来同様の機能を持つモバイル・アプリケーションを作成するのであれば、そのモバイル・アプリケーションはクラス3でありPMAが要求されるであろう。モバイル機器は「小型」(携帯型)であったり、ソフトウェアがウェブサイトから「簡単に」(クリック一つで)ダウンロードできるものであったりしても、FDAが考慮するのは、そのソフトウェアの使用目的であることに注意する必要がある。

FDAのモバイル医療アプリケーションの定義に当てはまるモバイル・アプリケーションが開発される場合が数多く存在する。FDAは多くの例を挙げているが、モバイルアプリケーションが以下のように用いられる場合もある:

・「医療画像の表示、処理、保存のための医療撮像機器への接続;

・医療機器へ無線で接続し、警報を中継したり発生させたりできる;

・医療機器のプログラミングや制御などのような無線リンクによって、遠隔制御・設定変更・読み出しを行う。」

FDAが規制する作業:モバイル・アプリケーション

モバイル医療アプリケーションはFDAが規制する医療機器であるため、従うべきFDA規制が数多く存在する。例えば以下のようなものである:

・施設をFDAに登録する

・製品をFDAにリストする

・特定の製品を市場に出す前に510(k) または PMA を取得する

・品質システム、設計管理、リスク分析

・ラベリング(マーケティング用情報も含む)

・傷害の報告、製品リコール、その他

・IDE、いつ新規510(k)を提出するか、その他

モバイル医療アプリケーション(App)に対する510(k) のソフトウェア文書

FDAに対する510(k)申請を必要とするモバイル医療アプリケーションがある場合、要求された全てのソフトウェア文書を用意しなければならない。それは、懸念レベルおよび説明、ソフトウェア要求および設計仕様、製品およびソフトウェアのリスク分析、検証およびバリデーション、ソフトウェア・アーキテクチャ、開発環境、トレーサビリティー分析、改訂履歴および異常などである。FDAが効率的に510(k)申請を審査し、認可が受けられることを確実にするためには、正しい形式と内容でこれらの文書を用意しなければならない。更に、モバイル医療アプリケーションにもFDAのソフトウェア・バリデーションの原理が適用されることに注意する必要があり、ソフトウェア・バリデーション・プロトコルおよび結果については、FDAが期待するものを用意しなければならない。


著者:

米国薬事専門家(RAC) ケン・ブロック

有限責任事業組合ケン・ブロック コンサルティング(東京)の代表取締役。ケン・ブロック コンサルティングでは、日本の医療機器業界に対するFDA規制コンサルティングを提供している。ケン・ブロックは特化された教育を受けているため、FDA関連の教育訓練、FDAが要求するソフトウェア文書の作成、FDAが要求するソフトウェア・バリデーションなどを実施しており、数多くの510(k)申請を成功に導いている。ケン・ブロック コンサルティングは、FDAコンプライアンスのあらゆる側面の援助を提供することにより、日本からの医療機器輸出の増大を支援している。

 

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