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「臨床試験と承認審査」の実態が明らかに:医療機器産業研究所主催の研究会

「臨床試験と承認審査」の実態が明らかに:医療機器産業研究所主催の研究会

医療機器産業研究所は、医療機器の「臨床試験と承認審査の間にあるもの」と題した第4回医療機器産業研究会を先月(2012年2月)20日に開催した。今まで医療機器の特性を踏まえた臨床試験の実態はあまり明らかにされていなかったが、今回の研究会では、臨床や承認審査の現場での実体験を踏まえた講演や討論が繰り広げられた。

まず基礎研究から治験まで実施している愛媛大学医学部付属病院臨床薬理センター野元正弘センター長からは、実際の臨床試験の現場の実態・問題点・解決策などが提示された。本臨床薬理センターでは、敷地内に臨床試験専用病棟を併設しており、同大学発のベンチャー企業アドメテック社が開発した治療装置をはじめとして、現在までにクラスIからIVまでの医療機器に関する治験を7件実施している。医療機器治験を担当したCRC(臨床研究コーディネーター)に聞き取り調査をおこない、その結果から問題点を2種類に分類。1つ目は依頼者側(医療機器メーカー)が試験計画書の作成に不慣れで、性能評価と臨床評価を混同するなど計画立案段階に問題が発生するケース。2つ目は、治験の実施施設側の技量不足や、医薬品治験のやり方との違いから戸惑いが発生するケースだ。これらの問題を解決し、さらなる治験機関の短縮化を図るため、同センターでは医療機器向けのCRC担当者を育成し、各診療科へのコンサルティング体制を充実させるとともに、「瀬戸内国際臨床試験カンファレンス」など施設間で治験経験を共有・蓄積する体制作りを強化しているという。

「臨床試験をどう考え医療機器開発を行うか」については、米FDAで医学審査官を務め、ボストンサイエンティフィック社で医療ディレクターとしてプロトコル作成にも携わった現Necess Medical社CEOの内田毅彦氏が講演。機器開発のスタート時に臨床上の有用性というゴールをしっかりと見据え、ビジネスのストラテジーも同時にしっかりと立てながら開発を行うことの重要性を指摘した。また承認審査官の免責制度のあり方にも問題を提起。米FDA審査官が審査結果に関して「事実上免責」であるのに対し、日本の審査官に免責が保証されていないため、より多くの情報やデータを要求することで審査期間が長期化するなど、革新的医療機器の承認の遅れにつながる可能性もあることに触れた。「この問題は単に日本の審査官を免責すれば済むという話ではなく、国民が、どの程度の安全性を望み、一方で、どの程度早く最新の医療を享受したいか考えた上で決められるべき。また、審査機構のリソースも無料ではないのだから、体制を充実させる前に、審査にどれ位のコストをかけたいのか、国民の間できちんと議論がなされてから、今後の我が国の審査体制のあり方を決めていくべきだ」との考えを示した。

主催者の医療機器産業研究所の中野壮陛主任研究員からは、昨年中野氏が発表したリサーチペーパー「米国の医療機器臨床試験の現状分析」をもとに、今後の我が国の臨床試験・承認審査体制を検討する上で参考になるポイントなどが挙げられた。例えば、米FDAでは企業が臨床試験を依頼する前に無料で相談にのっているだけでなく、それぞれのリスクに応じて審査も柔軟に対応している。また米国では実施機関も競争環境にあるため、試験メニューも豊富だ。中野氏は「日本でも治験拠点(ハード機能)の開発だけでなく、規制側が事前に無料で相談に応じたり、手順や文書を整備をするなどソフト機能の充実化が重要」と強調した。

また、同研究所の入村和子主席研究員は、FDAのドラフト・ガイダンス〔2011年8月15日発行〕に記載されているリスク・ベネフィット判断要素からFDAの医療機器の承認条件を検討。判断基準となる1.有効性(効果の種類・程度・持続期間など)、2.安全性(有害事象の種類・発生率・存続期間など)、3.追加的要素(リスクに対する患者の許容度、代替治療や診断方法の有無、技術の新規性など)に基づき、仮説的事例および実例を引き合いに、それぞれのケースで機器の認可が可能かどうかを検証した。特に、ある特定の患者集団にとってリスクが許容可能な機器や、将来の改善・改良につながる新しい発想の機器についてはFDAの承認条件は認可する方向に動いていることがわかり、日本でも今後増えると予想される不確実データをベースにした認可のあり方について、「市販後調査を重視」すべきとの考えを示した。

行政側からは、厚生労働省医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室の高江慎一室長補佐が、デバイス・ラグの解消に向けた各種施策(次世代医療機器評価指標の作成、医療ニーズの高い医療機器の早期導入の検討、医療機器審査迅速化アクションプログラム、薬事戦略相談など)の進捗状況を報告。「特に申請数が多い後発医療機器の審査の遅れを、行政としても早急にテコ入れする必要がある」という認識を示し、実際、PMDA内でも後発医療機器の審査短縮化のための医療機器審査第三部を設置したり、審査員を増員し、審査も熟練者と新人の2人1組でおこなう(Buddy制導入)など体制強化をしていると説明。今月スタートした産業と行政の実務者で構成する「医療機器規制制度タスクフォース」では、「2週間に1度のペースで医療機器業からの要望事項について検討を進める」とのことだった。また、来年(平成24年)度のライフイノベーション予算127億円の内、臨床研究の拠点整備に34億円、レギュラトリーサイエンスに精通した人材養成(大学・研究所とPMDA国立医薬品食品衛生研究所との人材交流)を進めるなど、「技術の進歩に対応する薬事承認審査・安全対策の向上」のために21億円が割りふられるという。その中でも、「特別枠として、治験のプロトコルや薬事申請書の書き方の養成プログラムのための予算獲得」し、ラーニングのプログラムを体系化したいとの発言もあった。

最後は東京女子医科大学・早稲田大学共同大学院笠貫宏教授を座長に、講演者全員との討論が行われたが、国立循環器病研究センター妙中義之 研究開発基盤センター長が特別ゲストとして参加。医療イノベーション推進室次長でもある妙中氏からは、基礎研究成果(シーズ)への支援ではなく、医療現場におけるニーズの洗い出しからスタートした経済産業省の「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」への期待が聞かれた。また、医療イノベーション推進室が司令塔となって、今後さらに医療機器産業への新規参入が促進されるような規制のあり方を、産官学が連携して検討していくなど、前向きな方向性が示された。

医療機器産業研究会は、医療機器産業研究所の研究協力企業を対象として、研究所が発行したリサーチペーパーの解説、及びディスカッションをおこなっている。

 

 

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