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BRICsへの進出には準備を怠らずに---現地での登録特許取得のポイント

BRICsへの進出には準備を怠らずに---現地での登録特許取得のポイント

ブラジル、ロシア、インド、中国での特許出願は簡単ではないかもしれないが、知的財産を保護するためには不可欠のステップである。

By: D’vorah Graeser, Graeser Associates International, Chicago, IL, USA

ブラジル、ロシア、インド、中国は集合的にBRICsと呼ばれており、医療機器メーカーにとって、この市場の重要性は増している。しかし、貴重な知的財産(IP)がBRICsで不当に利用されないか懸念している企業は多い。革新的な医療機器を保護する最も一般的な形式は特許の取得である。

登録特許は所有者がその特許の請求する発明品を、該当する地域内で他者が実施、製造、販売することを排除できる地域的な法的権利である。したがって、特許の保護を取得するためには、対象となる各国で特許出願を提出し、各出願が登録されるように手続きを行う、つまり登録特許を取得するためのあらゆる必要な手順を踏む必要がある。

BRIC諸国で特許の保護を取得するためには、ブラジル、ロシア、インド、中国で特許出願を提出し、特許登録を獲得するまで出願の手続きをしなければならない。

多くの医療機器企業はプロセスに慎重になるが、経験豊富な特許代理人または弁理士の助けがあれば、プロセスは比較的円滑に完了できる。以下、BRIC諸国で特許の保護を取得するときに企業が検討すべき主な問題をいくつか論じる。

費用はどのくらいかかるか

BRIC諸国間で特許システムおよび制度要件に違いがあるため、国際特許費用の予算を割り当てることが難しいことがある。重要な要素の中には、中国、ブラジル、ロシアで特許出願を提出する際、翻訳費用がかかることにより、相対的にコストが高くなること。

審査官からの質問(中間処理通知書)に対する回答も翻訳する必要があるため、出願手続きのコスト増につながる。筆者自身の経験によると、これら3つの国々で特許を出願し、取得するためのコストは、欧州の特許取得にかかるコストと類似しており、米国より若干高めになる。

ただし、インドは例外である。特許出願は提出と手続きが英語で行われる。さらに、インドでの出願と処理手続きのコストは比較的手頃であり、欧州のコストよりも低い。

特許取得にかかる時間は

登録されると、特許は当初の特許出願日から20年間有効となる(一部の国では異なる)。しかし、技術的改良と開発革新が常に行われているため、医療機器のライフサイクルは通常20年より短い。したがって、特許出願時にはその登録特許が医療機器をどのくらいの期間保護できるのかを検討することが重要である。

例えば、特許出願が医療機器の特定の反復型番のみを保護し、かつその登録後の市場における寿命が5~10年と見込まれる場合、時間のかかる手続きを回避してコストを削減することが重要であるかもしれない。

BRIC諸国に関する重要ポイントの1つは、審査ができるだけ早く要求されれば、手続きを高速化し、より迅速に特許を取得することが可能なことである。

例えば、ブラジルで審査は(優先権日から18ヵ月後の)公開後60日以内に要求することができ、かつ出願日から36ヶ月経過する前に要求されなければならない。(出願が特許協力条約の出願プロセスを通して行われた場合、公開は国内段階に入った後に行われる。)当然、できる段階ですぐに審査を要求することでブラジルの審査官による出願の審査検討を加速できる。

一方、ブラジルは未審査の出願の未処理分を相当抱えている。この未処理分が登録特許の取得において最大6~7年の遅延を引き起こすと見積もられている。この遅延は欧州特許局の約4年の遅延に比べ非常に不利である。

しかし、出願が審査のウェイティングリストに入る際はいつ審査が要求されたかに基づくため、できるだけ早期に審査を要求することで出願日から審査の開始の総合的な遅延を減少することができる。

中国の手続きの遅延は、少なくとも欧州特許局より長くはならず、一方でインドでの遅延はかなり増加している。(インドの審査官とインド特許局間の紛争が2012年にかけて遅延の増加を招く可能性が高いとみられている)

中国は、ドイツ同様に実用新案のオプションがあり、通常の特許よりカバーされる範囲が狭くはなるが、医療機器により低コストでより迅速な保護の獲得方法を提供している。したがって、医療機器特許の出願をどの国で提出するかを選択するとき、手続きの遅延を考慮することが大切である。

登録後に必要な手続きは

定期的な(通常毎年)費用を支払う必要があるほか、一部のBRIC国では登録特許がキャンセルされないよう満たすべき登録後の要件がある。

例えばインドでは、特許で開示された発明のインドにおける商業利用について説明した登録後作業記述書(statement of working)を毎年提出することが要求される。登録特許の受領から3年以内に商業利用が行われない場合、第三者が特許強制実施許諾を要求することができる。インドで医療機器を直接またはライセンシーを通して販売することで、この要件を十分に満たすことができる。

登録特許の権利行使は

特許権の行使は国を問わず、困難でコストがかかる可能性がある。BRIC諸国では数々の理由により特に難しいかもしれない。

まず、これらの国々では一般に特許訴訟の審決の歴史が(例えば欧米に比べて)ずっと短く、または実際のところ判例法の慣例に欠けている可能性がある。

英国では、最も早期の特許法(専売特許条例)が1624年に可決されており、一方中国で最も早い特許法は.1984年である。

また中国は、先例拘束性の原則として知られる過去の判例に従う慣習もないため、中国の裁判所の過去における判例は、以降の裁判に拘束力を持つと見なされない可能性がある。

ブラジルは2004年になってようやく憲法改正により、先例拘束性の原則が施行された。

ロシアは現在、少なくとも1994年以来、先例拘束性の原則に則っている。

つまり、これらの国々は特許権行使が成功するかに関して、特許権所有者の指針となり得る判例法の長い歴史がないのである。多くの特許権所有者にとってもう一つの懸念は、BRIC諸国において裁判所の審決に外部要因が影響するか否かという点である。

一方でBRIC諸国は、加盟国にIP行使に関する重要な要件を課すTRIPS協定(知的所有権の貿易関連側面に係わる協定)などの国際通商基準に応じた、または応じる意志を示している。しかし他方で、これらの国々の法律または実際の裁判慣行は外国の特許権所有者から懸念されている。

例えばブラジルは、医薬特許の特許登録及び行使にさまざまな例外を認めている。2007年にICC(国際商業会議所)が実施した調査によると、中国とロシアの権利行使システムが最も公正でないことが分かった。1 

インドでは、Rocheが抗癌剤Tarcevaで特許を取得し、2009年にCiplaに対して仮差し止め命令を得ようとした。これはTarcevaに対する特許保護の明確な無効性に基づいて(Ciplaがこの特許無効を主張した異議申立で認められなかったにも関わらず)拒絶された。

BRICsにおける特許権行使は改善されるはず

全体として、発明の所有者は特許出願から許可登録までの手続きを行わない限り、BRIC諸国でいかなる保護も得られないということが最も重要な考慮点である。

さらに、これらの国々の法律は、自社の革新性を保護しようとする現地企業(例えば中国で現在訴訟が提起されている特許紛争のほとんどは中国企業が関わっている)や、TRIPS協定及びその他国際基準に基づく国際的な圧力の影響下で進化しつつある。

特許の寿命は出願日から20年間続くため、BRIC諸国で特許を行使できる能力は特許の寿命期間が経過するにつれ実質的に伸びる可能性がある。

特許は競合相手からビジネスを保護し、BRIC諸国を含むグローバル市場を開拓するための強力なツールである。プロセスを適切に理解することは企業が経費を節約し、個々のビジネス上のニーズと能力に適した被覆率を取得するためにも有用である。

 

参考文献:

1. A. Bhalla, P. Jha and J. Lampel, “Global Survey on Counterfeiting and Piracy,” ICC (International Chamber of Commerce) Business Action to Stop Counterfeiting and Piracy (2007), published in conjunction with the Cass Business School of the City University of London online at www.iccwbo.org/bascap/id892/index.html.

著者:

D’vorah Graeser, PhD,
is founder of Graeser Associates International Inc.,
70 W. Madison, Suite 1400, Chicago, IL 60602, USA.
e-mail: info@gai-ip.com
www.gai-ip.com

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