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患者満足度の高い医療の提供へ-医療機器開発の新たなパラダイム

患者満足度の高い医療の提供へ-医療機器開発の新たなパラダイム

より広範囲なユーザ体験設計と人間工学の安全性および厳密さを結合することによって、医療機器メーカーは患者の服薬順守を改善する製品を開発することができる。

By: Melanie Turieo

すぐれた医療製品の設計とは、それが安全でなければならないことを意味する。素晴らしい消費者向け製品の設計とは、人々がそれを必ず好むことを意味する。一般に、医療体験と消費者体験は正反対であると捉えられている。医療は人々に課されるものであり、消費者体験は人々が求めるものである。消費者向け製品は楽しまれる一方で、医療機器は忍容される程度である。

これらの概念は設計にも反映されている。医療製品は一般に真剣かつ機能的に見えるように出来ており、消費者向け製品はユーザが楽しい気分になれるように設計されている。

歴史的に、医療向け製品と消費者向け製品のターゲットユーザ群は、非常に異なると考えられてきたが、実際のところ、この二つの製品群の対象顧客は全く同じ---つまりは「人」がターゲットなのである。では、これらの人々のニーズを医療機器設計に取り入れるためには、どのように患者または消費者(つまり人)にアプローチしたらよいだろうか?

医療領域と消費者世界間の重なり合いに着目してみよう。人々の態度と医療議題の両方で疾病管理から健康維持への方向性変化が起こっている。関連連鎖性の保健および消費者の健康などの新興分野でのオーバーラップが著しいが、同時にドラッグデリバリ-を含めたより伝統的な分野でも融合が起きているのである。

健康不安をもつ健常者向けの製品

遠隔医療製品やその他関連の装置など、健康および健康管理の関連ソリューションは、採用してもらうことがこれら製品の成功の鍵であるため、人々の生活において普遍のものとなる必要がある。

まず、アプリケーションは、人々の日常生活への合間ない融合を確約することが必要とされる。消費者保健製品(心拍モニターや万歩計など、健康なライフスタイルを支援するアイテム)は、この課題に直面している。いずれの製品カテゴリーも医療製品に隣接しており、規制対象になり得るが、規定はされてはいない。そのため、それらは通常保険対象外であり、人々は必然的に自分のお金でそれらを買わざるを得ないと感じて、自然とそれを受け止める。これらはいわゆる健康不安をもつ健常者、または例えば老いていく親の介護を心配する近親者の関心を引く必要のある製品である。

より伝統的なドラッグデリバリ-の領域でさえ、消費者スタイルのアプローチへの変化が見て取れる。また、療法に多くの選択肢がある糖尿病などの状態管理向けにも、製品間のブランド差別化が大きくなり、ペン型注射器などのアイテムに対する消費者感覚をより誘う方向に向かう動きがある。

また、生物製剤の拡散、新しいドラッグデリバリ-技術の登場、そして入院加療から通院患者および在宅介護への変化と共に、迅速な回復および慢性症状などもますます家庭で管理されるようになっており、その多くが複雑な投薬計画の送達を必要とする。これらの傾向が家庭または医療環境のどちらでも使用できる使いやすい自己管理型送達システムのニーズを高めている。

組み合わせ製品に関する調査

患者または介護者に使用されることを意図した薬剤送達デバイスは、米国FDAにより組み合わせ製品として分類されている。組み合わせ製品とは、薬剤、デバイス、および(または)生物学的製品(つまり、2つ以上の規制対象コンポーネント)の任意の組み合わせで構成された製品である。

薬剤充填済み注射器、インシュリン注射器、定量吸入器、経皮パッチ、薬剤溶出性ステント、および抗菌コーティングカテーテルなどはこのカテゴリに属する。最近、Cambridge ConsultantsとMassMEDICは、これらのタイプの薬剤送達組み合わせ製品にまつわる患者関連の動機について量的調査を実施した。薬剤送達デバイスの選択における患者の経験および優先事項について調査し、また治療法の決定および患者の服薬順守における薬剤送達デバイスの役割に関して医療関係者の面接調査も実施した。

患者調査は、薬物療法を管理するために組み合わせ製品(バイアルや注射器、薬剤充填済み注射器、ペン型注射器、インスリンポンプなど)を使用する240人以上の糖尿病患者に対して行なわれた。この研究によると、患者は自分たちのオプションを認識しており、一定程度、目立たなさや携帯性、機能特徴セットなどの生活要因によって動かされていることが示された。さらに、患者は自身が重要であると感じる機能および利便性を手に入れるためにはより多く支払ってもよいと考えていることも示された。

患者の薬物療法が決定されたとき、使用するデバイスの選択肢が提供されたかどうかをたずねたところ、75%が「はい」と回答した。そして、選択肢が与えられた患者にどのように自身の薬剤送達デバイスを選択したかをたずねたところ、予想どおり、医師の勧めに従ったという回答が最大の割合であった。僅差で2番目となったものの、相当数の患者が、自分自身で調べたり、選定する前に異なるデバイスを試してみたと回答した。

また、患者に自分が使用している薬剤送達装置を変更できるかどうか医師にたずねたことがあるかも質問した。患者の3分の1以上があると回答した。変更を求めた理由としては見受けられたのは、目立たなさやデバイスの携帯性などの生活要因、およびより新しい技術の登場が主な理由であった。

たずねれば、ほとんどの人々がより新しい技術、および(または)より良い機能が欲しいと言うだろうが、特に医療機器周辺で、人々がこれらのものに余計に支払ってもいいという意志があるかについては一般に懐疑的である。この矛盾に対して、患者らに次の質問をした。「現在のデバイスより使いやすいデバイスがあるが、現在のデバイスよりもやや高い(約US$5ドル)場合、その使いやすいデバイスに自己負担で余計に支払ってもよいとどの程度思うか?」と質問したところ、自己負担の増加に関わらず、デバイスを「やや変えたい」と「とても変えたい」と回答した患者は、4分の3以上にも上った。

これらの全体的調査結果によると、患者は自分たちのオプションを認識しており、一定程度、目立たなさや携帯性、機能特徴セットなどの生活要因によって動かされており、かつ自分たちが重要だと思う機能や利便性を手に入れるためにやや多く支払ってもよいと考えていることが示された。つまり、患者はドラッグデリバリ-システム(DDS)に対するアプローチにおいて、より消費者と同じような意識を持っているといえる。

この同じ調査の一部として、これらのタイプのデバイスを処方する、または組み合わせ製品の使い方を患者に指導する立場にある医師や療養指導士に面接調査を実施した。小児科、整形外科、内科、消化器科、糖尿病教育を含む複数の専門分野からの専門家である。医療関係者からのフィードバックは、薬剤送達デバイスの選択と商業上の成功には患者主導の要素があるという考えをさらに裏付ける結果となった。

質問に回答した医療関係者のすべてが、薬剤送達デバイスの使いやすさが薬物療法の患者の服薬順守に影響を与えると考えていると述べた。医師たちは、薬物の有効性が治療の決定において第一の関心事ではあるものの、患者が投与量の要件を満たすことができると信じられない場合、薬を処方しないかもしれないと示唆した。

ある糖尿病療養指導士は、薬物を患者に合わせるという考えを示し、そうする中で「(送達デバイスは)パズルの1つの無視できない断片である」と語っている。この研究は効果が最も低い治療は、実行されない治療であるという事実を強調している。そして、どんな薬物療法の効果も、薬物そのものの効果と投薬計画順守の両方の組み合わせによって決定付けられるのである。

患者服薬順守の5つの側面

世界保健機関のモデルは、社会経済的要因、状態関連要因、治療関連要因、医療チーム要因、患者関連要因を含む、服薬順守に影響を与える5つの側面について説明している。優れた設計の薬剤送達デバイスは、次の理由でこれら5つの側面のうちの3つに良い影響を与える可能性がある。

・簡単で使いやすいため、結果的に治療計画に従うための患者の能力において患者の自信が高まる(治療関連要因)。

・適したレベルの力と手動操作を使用して、患者の身体的な制限に対応することができる(患者関連要因)。

・適切に設計され、ターゲット化されたサポート資材を含めることで、医療ケアシステムの能力、またはその不足を補い、患者をかりと教育して、一貫したフォローアップを提供するのに役立つ(医療チーム)。

では、どうしたらこの可能性を最大限に引き出し、服薬順守と最終的な医療結果を最も支援できる薬剤送達デバイスを作り出すことができるだろうか。 

人間工学エンジニアリング(HF)はユーザの思慮する問題を医療機器の開発に取り入れる。それは人々がどのように技術を利用するか、すなわち米国FDAによって定義されるように、人の能力、期待、制限と作業環境およびシステム設計の相互作用に関する研究である。

HFは反復型の方法で開発プロセスに統合され、通常、人々と開発中の医療機器との安全な相互作用に関するユーザ研究に重点が置かれる。しかしHFには、ユーザの問題を商品開発に組み入れるアプローチである、兄弟関係にあるユーザ体験設計(UX)から学べることがある。

UXは特定の製品だけでなく、会社、サービス、およびその製品シリーズとエンドユーザの相互作用のあらゆる要素を考慮する。UXは、目的とするユーザ体験から始め、その目的とする体験が、ユーザ中心の設計コンサルタント企業Nielsen Norman Groupの説明するとおり、「工学、マーケティング、グラフィカルデザインおよび工業デザイン、ユーザインターフェイス設計を含む、複数の原則分野のサービスを合間なく結合させる」ようにサポートして、製品とその周辺のあらゆるコンポーネントを構築する。

このため、医療機器のHFと消費者向け製品のUXの良い点を採用し、ツールと方法の共通点をてこにして利用すれば、医療機器設計への新たなアプローチ、すなわちPx、つまり患者体験(Patient Experience)設計が明確になる。Pxは、HFの安全性および厳格さと、ユーザ体験アプローチのより広範な視点を結合し、患者がより受け入れやすい安全なソリューションを形成する。

安全性、簡潔さ、使いやすさは医療機器において決定的に重要なことであるが、Pxはさらに一歩進んで、デバイスの入手や保管、輸送などの要素も考慮する。人々はデバイスを家庭内の使いたい場所に保管して且つ使うことができるか。デバイスを携帯することができるか。プライバシーや目立たなさを提供するか。疾患の管理に対応するため患者が生活を調整することを強いるのではなく、Px主導の設計は人々の移動と活発なライフスタイルをサポートする送達システムの実現につながる。

デバイスそのものを超えて、往々にして人々の最初の製品との相互作用であるどのようにパッケージされるか、そして使用者が繰り返し参照することになる使用説明書も考慮しなければならない。デバイスの適切な使用をサポートし、最初のトレーニングレッスンを強化することを確約する初心者用資材もある。これらのアイテムはすべて薬剤送達デバイスの補足再思考として通常設計されるもので、デバイスのシステムまたは体験の一部として必ずしも検討されないものである。

視点をさらに広げると、通常はデバイスが提供する治療のオンラインサポートである、デバイスのコミュニティがある。オンラインでのトラブルシューティングや指示、ユーザコミュニケーショングループ、アプリケーション追跡、オンライン患者日記などのサービスを提供し、それらはすべて送達システムの適切な使用と服薬順守をサポートすると共に、治療の全体的な患者体験を強化することができる。

医療効果の向上

服薬順守は複雑なトピックである一方で、適切に設計された薬剤送達デバイスは、患者の服薬順守を最大限に引き出すことに大きな効果を発揮できる。服薬順守は、ひいては、治療そのものの全体的な効果、そして最終的に、医療効果の向上に対する重要な要素である。安全性と使いやすさ、個人嗜好の間でバランスを取ることが目的である。

安全性だけでなく、デバイス開発でより広い視点を採用し、かつ全体的な患者体験に対応することで、医療機器メーカーはより良い患者の医療効果と製品採用の機会を増やすことができるだろう。昨今の医療環境における広範囲にわたる変化を考えると、医療効果の向上を確約することが、さまざまな治療器具を提供する企業の経済的な成功においても重要となってきている。


「医療機器メーカーは、患者の満足度を考慮して設計に取り組むことが大切」と語るケンブリッジコンサルタンツ社のMelanie Turieo氏。

著者:Melanie Turieo

is Group Leader/Principal - Human Factors Engineering, Cambridge Consultants,
101 Main Street,
Cambridge, MA 02142, USA

tel. +1 617 532 4700

e-mail: melanie.turieo@cambridgeconsultants.com

www.cambridgeconsultants.com

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