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EUにおける将来の医療機器規制:改革の展望

EUにおける将来の医療機器規制:改革の展望

欧州の規制制度はその法的枠組みの複雑さ、最新技術に対応する能力の欠如、そして加盟国間の統一性のなさのために批判にさされている。2010年、EU委員会は医療機器指令の「改定」に向けた道筋を公表した。

欧州連合(EU)は世界最大の医療機器市場の一つである。1 1990年代、EUの27加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインを含む欧州経済地域(EEA)2内のこれら医療機器の規制は、3つの医療機器指令下で調和していた。3 現在、この規制制度はその法的枠組みの複雑さ、新興技術に対応する能力の欠如、そして加盟国間の統一性のなさのために批判にさらされている。2010年後半、EU委員会は医療機器指令の「改定」に向けた道筋を公表した。4

本記事では、現在のEEA医療機器規則の簡単な概要の解説と、今回の改定の潜在的な特徴を説明するだけでなく、これらの規制改革が明らかになるにつれ、機器メーカーがどのような準備をすればよいか、プランを具体化するための必要となるポイントなどを紹介する。

医療機器指令の現況

現在の医療機器規制制度は3つの指令から構成されている。医療機器指令(MDD)、能動埋込型医療機器指令(AIMDD)、および体外診断用医療機器指令(IVDD)である。

MDDは、薬理学的手段として作用しない、「疾患の診断、防止、監視、治療または緩和」に使用されるあらゆる装置に適用される。5 AIMDDは「人体または重力によって生成されたものでない」電源に依存する、体内に配置され、施術後も体内にとどまることが意図されているあらゆる装置を対象としている。6 IVDDは「人体から取得した…標本の試験のために生体外で使用される」ことを意図するあらゆる装置に適用される。7 EEA加盟国は国内法令において、これら指令の目標を実行しなければならない。

どんな超国家的なEU規制機関も医療機器に関して包括的な監督機関を持っていない。代わりに、各加盟国は3つの指令に従って所轄官庁(NCA)を通して公布された自国の国内法令を施行する。また、加盟国は規制要件に対する機器メーカーの準拠性を公認するため公認機関(NB)と呼ばれる独立機関を指定する。装置の分類と適用される指令によって、これらの「適合性評価」の詳細は異なる。8

医療機器は侵襲性や人体との接触時間と持続時などの要因を考慮して、リスクに基づいた4つのグループ(クラスI、クラスIIa、クラスIIb、クラスIII)に分類される。9

IVDも同様に4つのグループに分けられ、一般的なIVD既定クラス、2つの「Annex II」クラス(中リスク装置向けの「リストB」および高リスク装置向けの「リストA」)、および直接一般の個人によって使用されることを目的用途とする装置向けの自己診断IVDクラスである。10

一般に、より高リスクの装置の適合性評価は、NBの関与が大きくなり、要件がより厳しくなる。最も低リスクの装置はNBの関与のないメーカーによる自己適合宣言だけが要求され、より高リスクの装置は「型式試験」(NBが装置の代表的サンプルを精査する)が要求されることがあり、そして最も高リスクの装置はNBによる監査と予告なしの訪問を含む完全な品質アセスメントが要求される場合がある。

すべての装置は臨床データで裏付けられる必要がある(但し低リスク装置のメーカーは、対象装置と「同等」であることが示された装置に関する現在利用可能な文献を集めることでこの要件を満たすことが可能な場合がある)。

さらに、メーカーはその装置を登録し、有害事象に関する情報を収集して報告する市販後検査システムを導入する必要がある。適合性評価が完了すると、メーカーは装置にCE(Conformité Européenne)マークを付ける権利が得られ、その装置が指令の必要条件を満たしていることを表示することができる。

CEマークが付けられた装置は、EEA内のどこでも販売することができる。11 この規制の枠組みは近年、多くの発展をとげてきた。2007年には修正指令が通過し、2010年に施行され、医療機器の市販後検査要件を拡張し、特定の臨床データ要件に対する基準を高め、医療機器を構成する項目のリストにソフトウェアが追加された。12 さらに、2011年5月1日時点で、NCAは欧州医療機器データベース(EUDAMED)に機器証明書、臨床試験、検査関連データの情報を提出することが義務付けられた。 EUDAMEDは、NCAと欧州委員会のみアクセスでき、特定の装置が販売された各加盟国に個別に通知が必要であったそれまでの要件を排除して、医療機器の販売認可プロセスを効率化することを目的としている。13

欧州の現行医療機器規制に関する懸念

度重なる修正にもかかわらず、医療機器規制の枠組みはさまざまな批判にさらされている。おそらく最も際立っているのは、NCAとNBに監督権限を委任することで、指令に関してEEA加盟国間で調整がほとんどなされておらず、加盟国の政策間の一貫性欠如、NB適合性評価の実施における統一性のなさ、そして機器メーカーによるその後の有利な法廷地あさりの疑惑につながっているということである。

さらに、スキームはそれが3つの当初の指令と複数の指令の修正によって形成されていることを踏まえ、「断片化され、理解が困難」といわれている。14

そのほか、新たな技術を評価するNBの専門的能力の不足、新技術に対する指令適用の難しさ(人体組織から成る装置や、美的目的のためだけに意図された埋込型装置、医療目的でない遺伝子検査など)、そして多くのEEAの主要な医療機器貿易相手国が準拠している医療機器規制国際整合化会議(GHTF)モデルとの枠組みの調和の必要性といった懸念が含まれる。15 これらの懸念を踏まえ、欧州委員会は医療機器指令の「改定」を行う意図を宣言した。2008年に委員会は、規制体系と改革の潜在的ターゲットについて、業界代表者、監督機関、医療従事者、およびその他利害関係者から意見を聞く公聴会を行った。16

2010年の2回目の公聴会ではIVD規制の修正に関する意見を求め、そして2011年3月にEU保健・消費者委員長により共同議長が務められた会議では「EUの医療機器法規を将来的なニーズに適合させる」という議題について議論した。 17 委員会の2011年度年次計画には現在、2012年の立法議案に向けた取り組みとして3つの指令の改定と、2010年11月に公表された改定の道筋案が含まれている。18,19

来るべき変化

これまでのところ、改定案の具体的な輪郭は流動的である。委員会の道筋は、改革のための具体策について明確にするというよりも、潜在的オプションのリストを提供したものである。

これらは、MDDとAIMDDを1つの包括的な指令で置き換え、現行のIVDDに代わり更新した指令を発布し、かつ(または)例えば適合性評価手順を効率化し、重要な概念と用語を明確にするなどの方法を通して、EEA加盟国間での調和を促進することを含んでいる。より急進的な提案は、(実行の必要性なく、すべてのEU加盟国に対して直接拘束力があり、適用される)規則を、(加盟国が自国の国内法令で多様な異なる方法によって目的を達成できる)より柔軟な指令に基づいたアプローチで代替し、かつ超国家レベルで特定の医薬品を規制する欧州医薬品庁(EMA)に匹敵するような、中央集中型のEU医療機器監督機関を確立することを含んでいる。20

改訂の詳細が具体化され続けている一方で、利害関係者は委員会の意図する改革に反応し始めている。2011年2月に、5つの最も著名なNBが自発的に公認機関向け行動規範を発布し、NB人員に対する最低資格について明確にすると共に、適合性評価実行のために規則を定め、NBが評価をより調和させることを可能にするガイドラインを示した。この行動規範への参加は、現在自発的なものであり、認定されたあらゆるNBが利用可能である。強制措置が現在設計されており、2012年1月1日までに公開されることが見込まれている。21

Eucomed(欧州医療機器産業連合会)などの業界利益団体は、現在の制度に改善余地があることは認めているものの、現行の枠組みの基本的な改正は支持してないようだ。特に、Eucomedは監督機関による市販前認可手順の確立に反対している。これは期限が長くなって、料金が上がることで競争と革新に害を与えると考えているためである。またEucomedは、EMAの関与が不要な役所仕事の弊害を過程に追加することになるという懸念から、医療機器に対する権限をEMAに与えることによる現行の枠組みの中央集中化にも反対している。22

医療機器メーカーは、改定案の

具体的な内容が明らかにされて

いく中で、いかにタイムリーに

改革プロセスに参加していくか

を見極めていく必要がある。

一方、医療従事者らも改革の実現を促進してきている。2011年1月に、欧州心臓病学会は、心臓血管デバイスの臨床評価に関する政策会議を開催し、医療機器に関する単一の規制体系構築を求めた。学会は新しい政府機関の創設か、EMAの部門への権限委譲のどちらかを支持している。23 こうした欧州心臓病学会の立場にもかかわらず、2011年5月のBritish Medical Journal誌で発表された記事は、欧州のFDA式規制の枠組みが具体化しそうにないと結論を下している。24

2008年と2010年の公聴会の結果は、改定に含まれそうな改革に関して追加事項を提示している。いずれの公聴会でも、IVD分類においてリスクをより強調することを含めたGHTFモデルとのより高い一貫性が、利害関係者の間で幅広く支持されていることが明らかになっている。 2010年の公聴会に対する反応では、IVD一括認可検証要件と、内部試験としてのみ使用されるIVDの規制除外の継続に対して幅広い支持が寄せられ、かつ消費者と直接やりとりされる遺伝子検査に対する規制増加とIVD性能実証に関する要件の明確化にも中程度の支持が示された。25,26

データでも指令を規則で置き換えることに一定の支持が示されているが、そのような作業は管理リソースの巨額の支出を生じることになるという懸念も顕になっている。

この点で特に重要なのは、西欧で最大の医療機器市場の一つを規制する英国医薬品庁(MHRA)の見解である。27 MHRAは、装置規則におけるEMAの関与が大きくなることに反対しており、代わりに、規制スキームの解釈と実施において一貫性を確約するために、「加盟国から成る全般管理式の委員会」の創設を提案した。28 MHRAは、リスクに基づいたIVD分類体系の採用を支持しており、「内部除外の維持を強く支持」している。29 

また、具体的な詳細の更なる解明のないほかの多くの改革に対して支持を提供することをためらっている。

今後のスケジュールと予定されているイベント

近い将来の変化の潜在的に重大な影響を踏まえ、医療機器メーカーは、プロセスに参与する能力を確保するために、今後のスケジュールを注視する必要がある。委員会のロードマップによると、医療機器指令改定は2012年の第1四半期を目処に進められている。30 しかしながら、委員会は最終的な改革案の公表期限をまだ提示しておらず、またこの改革案はその後、欧州議会と欧州連合理事会の両方で承認されなければならない。欧州委員会によって発表された最近の統計によると、2004年から2009年までの間の立法的承認審査プロセスの平均所要期間は、約15カ月から44カ月までに及んでいる31

さしあたり、委員会は様々な改革案のコストと恩恵を分析するための影響評価を予定しており、かつ「NCA(所轄官庁)、NB(公認認証機関)、業界、医療従事者、患者、およびその他関心を持っている利害関係者は、…標的諮問を通して想定される対策の影響に関する情報とデータを提出するよう求められる」。32 

標的諮問は定義された標的集団からの意見のみを求めるが、「諮問のための最低基準」は、関係当事者を選ぶとき、委員会が「特定の経験、専門性または技術知識の必要性」を考慮する必要があり、非加盟国からの組織の見解でさえも含む必要があって、最終的に「関係当事者は意見を述べる機会がある」ことを確約しなければならないとしている。33 ロードマップによると、委員会の医療機器専門家グループは、利害関係者との「継続的な諮問」を行うことになっている。

これら改革の潜在的に重大な影響の観点から、医療機器メーカーや各種利害関係者は、具体的な詳細が明らかになるのに伴い、改革プロセスに参加する機会を模索する必要がある。

 

著者:

John R. Manthei is a partner in the Washington, D.C. office of Latham & Watkins and serves as Global Co-chair and Washington, D.C. department chair of the Healthcare and Life Sciences Practice. 

Carolyne Hathaway is a partner in the Washington, D.C. office of Latham & Watkins. Her practice focuses on matters involving the FDA. In addition to her legal training and practice, Ms. Hathaway has a technical background in chemistry and the biological sciences, and an MBA in health care management.
 
Elizabeth Richards is an associate in the Washington, D.C. office of Latham & Watkins where she focuses her practice on regulatory and transactional matters for health care, medical device, pharmaceutical, cosmetic and other biotechnology industry clients. She has advised on regulatory and compliance issues involved in various stages of the biotechnology product life cycle in the US, Europe and Mexico.

 

参考文献:

1. Office of Health & Consumer Goods, Int’l Trade Admin., Medical Devices - Industry Assessment 10 (2010), available at http://www.ita.doc.gov/td/health/Medical%20Device%20Industry%20Assessment%20FINAL%20II%203-24-10.pdf.
2. European Free Trade Ass’n, EEA Agreement, http://www.efta.int/eea/eea-agreement.aspx (last visited June 20, 2011).
3. European Comm’n, Regulatory Framework – Medical Devices, http://ec.europa.eu/consumers/sectors/medical-devices/regulatory-framewo... (last visited June 20, 2011).
4. Directorate Gen. for Health & Consumer Prot., European Comm’n, Roadmap (2010), available at http://ec.europa.eu/governance/impact/planned_ia/docs/2008_sanco_081_med... [hereinafter “Roadmap”].
5. Council Directive 93/42, art. 1, 1993 O.J. (L 169) 2(a) (EC).
6. Council Directive 90/385, art. 1, 1990 O.J. (L 189) 2(b) (EC).
7. Council Directive 98/79, art. 1, 1998 O.J. (L 331) 2(b) (EU).
8. See Underwriters Labs., European Medical Devices Directive 1 (2009), available at http://www.ul.com/common-eu/documents/SellSheets_Medical-eng.pdf.
9. See generally Directorate Gen. for Health & Consumer Prot., European Comm’n, Guidelines Relating to the Application of the Council Directive 93/42/EEC on Medical Devices, MEDDEV 2.4/1 Rev.9 (2010).
10. Med. and Healthcare prods. Regulatory Agency, Guidance Notes on In Vitro Diagnostic Medical Devices Directive 98/79/EC 11 (2006).
11. Underwriters Labs., supra note 8, at 1.
12. Is Your Company Ready for the 2010 Medical Device Directives?, Med. Design, June 1, 2008, available at http://medicaldesign.com/mag/company_ready_medical_0608/.
13. See European Comm’n, European Databank on Medical Devices - EUDAMED, http://ec.europa.eu/consumers/sectors/medical-devices/market-surveillanc... (last updated May 5, 2011).
14. Press Release, European Comm’n, Commission Launches Public Consultation on Medical Devices (May 8, 2008), available at http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/723&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en.
15. See Roadmap, supra note 4.
16. Enter. & Indus. Directorate-Gen., European Comm’n, Recast of the Medical Devices Directives: Summary of Responses to the Public Consultation 1 (2008), available at http://ec.europa.eu/consumers/sectors/medical-devices/files/recast_docs_... [hereinafter “Recast”].
17. European Comm’n, High Level Conference – Medical Devices, http://ec.europa.eu/consumers/sectors/medical-devices/links/hlc_2011_en.htm (last visited June 16, 2011).
18. Annexes to the Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions: Commission Work Programme 2011, at 23, COM (2010) 623 final (Nov. 27, 2010).
19. Roadmap, supra note 4.
20. See id.
21. See BSI et al., Code of Conduct for Notified Bodies under Directives 90/385/EEC and 93/42/EEC (2011).
22. See, e.g., Eucomed Medical Technology, Medical Devices Directives, available at http://www.eucomed.org/key-themes/medical-devices-directive; Eucomed Medical Technology, Medical technology industry favours decentralised regulatory oversight, available at http://www.eucomed.org/newsroom/9/19/Medical-technology-industry-favours-decentralised-regulatory-oversight/.
23. Alan G. Fraser et al., Clinical Evaluation of Cardiovascular Devices: Principles, Problems, and Proposals for European Regulatory Reform, Eur. Heart J., May 14, 2011, at 11.
24. Deborah Cohen & Matthew Billingsley, Europeans are Left to Their Own Devices, Brit. Med. J., May 14, 2011, available at http://www.bmj.com/content/342/bmj.d2748.full.pdf.
25. See Recast, supra note 16.
26. See Directorate Gen. for Health & Consumer Prot., European Comm’n, Revision of Directive 98/79/EC of the European Parliament and of the Council Of 27 October 1998 on In Vitro Diagnostic Medical Devices: Summary of Responses to the Public Consultation (2011), available at http://ec.europa.eu/consumers/sectors/medical-devices/files/recast_docs_2008/ivd_pc_outcome_en.pdf.
27. Espicom Bus. Intelligence, The Medical Device Market: United Kingdom, http://www.espicom.com/prodcat2.nsf/Product_ID_Lookup/00000598?OpenDocument (last visited June 23, 2011).
28. Med. and Healthcare prods. Regulatory Agency, UK Response to Commission Questionnaire 8 (2008), available at http://ec.europa.eu/consumers/sectors/medical-devices/files/recast_docs_2008/responses/023-r-1_en.pdf.
29. Med. and Healthcare prods. Regulatory Agency, UK Response to Commission Public Consultation on Revision of Directive 98/79/EC of the European Parliament and of the Council of 27 October on In Vitro Diagnostic Medical Devices 1 (2010), available at http://www.mhra.gov.uk/home/idcplg?IdcService=GET_FILE&dDocName=CON108895&RevisionSelectionMethod=Latest.
30. This timeline is reiterated in the Annex of the Commission’s Work Programme 2011, which includes the Recast as a legislative priority for 2012.
31. European Comm’n, The Co-Decision Procedure (Art. 251 TEU): Analysis and Statistics of the 2004-2009 Legislature 7 (2009), available at http://ec.europa.eu/codecision/statistics/docs/report_statistics_public_draft_en.pdf.
32. See Recast, supra note 4, at 6.
33. Communication From the Commission: Towards a Reinforced Culture of Consultation and Dialogue - General Principles and Minimum Standards for Consultation of Interested Parties by the Commission, at 19-20, COM (2002) 704 final (Dec. 11, 2002).

 

 

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