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FDA と業界団体が展開する政治ゲーム

FDA と業界団体が展開する政治ゲーム

当局は問題解決よりもイメージ維持に腐心。

Jim Dickinson

全米科学アカデミー医学研究所(IOM)は、米国食品医薬品局(FDA)の市販前通知510(k)プログラムを廃止するよう勧告する報告書を公表した。だが、どうもFDAはこの物議を醸し出した報告書の公表の数週間前に、その動向を察知していた模様だ。

報告書の発表前に、FDAは「我々が(廃止案)に従うことを期待するな」と匂わせており、「(この報告書)は単なる勧告に過ぎない」と予防線を張っている。

FDAはなぜ事前にこのような発言ができたのだろうか?筆者は、FDAと業界の主要ロビー団体AdvaMedに対してハイレベルの漏洩があって、メディアによる初期報道も共通の反対の立場、つまり「510(k) の廃止はよくない」というトーンで飾ることができたのだろう考えている。この明らかに閉鎖的な傾向は、FDAとその多くの支持基盤が持つ新しい政治的現実、つまり面倒な論議が生じる際にそれらを陰で操る動きがあることを示している。

IOMのレポートが公表される前日、FDAの Margaret Hamburg 局長は上院健康教育労働年金委員会で「単なる勧告」という公式見解を繰り返した。またHamburg局長は、IOM委員会における業界からの代表者不足に関して業界が懸念している点も承知していると述べた。 彼女の発言の一ヶ月前、業界が出資するワシントン法律財団(Washington Legal Foundation;WLF)では、正にそれを理由として、委員会が1972年の連邦諮問委員会法の公平なバランスに関する要件を満たしていないと主張。IOM委員会からのあらゆる助言を無視するように当局に対して請願していた。

今回のリリース発行直後にFDA医療機器・放射線保健センター(CDRH)のJeffrey Shuren所長とAdvaMedからコメント(著者の知る限りでは前例がない)が出され、両者とも510(k)プログラムを擁護しているのも特徴的だ。つまり、IOMの法規制に関する批判は、安全性と有効性の保証が確約できない点にばかり集中しており、 だから510(k)は修正不能であり、差し替えるべきだと結論づけているに過ぎないといった趣旨の発言になっている。

しかし、IOM委員会は安全性とリスク管理の有効性をきちんと定義することで510(k)規則を基本的に書き直している。このプロセスの過程で、業界とその規制当局はより緊密に結びつき、議論はワシントンの政治的混乱へと陥れられたのだ。

「リスク」認識の誤り

今回の提言が与えたインパクトは強烈なものであったが、この249ページにわたるレポートの中で最も驚くべき点は、オリジナルの510(k)の概念の変更、つまり製薬業界に通常化している複雑なリスク管理プログラムへの変換だろう。 これは1976年に510(k)の策定に関与した人々にとっても晴天の霹靂だろう。

IOMレポートでは、「1976年以来最も重要な進展は、510(k)認可プロセスが(1976年の)改訂後の機器の事前認可用の過渡的ツールからほとんどの改訂後の機器向け市販前審査の恒久的且つ支配的な手段に 発展したことである」と記されている。

1976年に連邦食品・医薬品・化粧品法の医療機器修正特別法(MDA)の作成に関与しただけでなく、FDAによるその実施を医療機器コンプライアンス担当部長として支援したLarry Pilot弁護士は、IOMレポート批判者の一人である。Pilot氏が著者に語ったことだが、彼によるとレポートは冒頭ページから1976年の修正法により導入された医療機器の3つのクラス分類の目的を誤って特徴づけているという。

レポートによると、MDA修正法は「もたらされるリスクと機器を管理するためにどのような市販後のコントロール能力が必要かに基づいて3つの機器タイプのクラス分類を作成した」とある。さらに「元々意図されていた通り」、リスクのレベルに従って機器は「高リスク」の機器がクラスIIIに、「中リスク」の機器がクラスIIに、そして「低リスク」の機器がクラスIにグループ分けされていると主張している。

この概念が明らかに誤っているとパイロット氏は指摘。医療機器の分類が準拠する連邦食品医薬品化粧品法の第513項は、「高リスク」、「中リスク」、「低リスク」という用語をまったく使用していない。「リスク」という用語はこの項では2回だけ使用されているのみ。クラスI機器 (「疾病や傷害の潜在的な非合理的リスクがない」機器と定義される) の説明で1回、そしてクラスIII機器(「疾病や傷害の潜在的な非合理的リスクがある」機器と定義される) の説明でもう1回使用されているだけだ。従って、IOMレポートは510(k)プログラムがリスク管理メカニズムとして考案されたと誤って主張している、とPilot氏。実際、510(k)の条項そのものは「リスク」という用語、または「安全性及び有効性」という用語でさえも使用していない。

どちらかというと学術的に、本レポートはFDAの510(k)プログラムを議論目的に作られた産物である「理想的な」医療機器規制体系に対して評価を試みている。この理想的な体系は、リスクに基づき、堅実な科学をベースとしており、「明確」かつ予測可能で、分かりやすく公平」でなければならないと記している。またこの体系は自律的かつ自己改善型で、公衆衛生を向上する革新をサポートし、適切及び関連性のある機関を通じて安全性と有効性を確約できなければならないとある。

510(k)規則はリスク管理または安全性及び有効性についてまったく言及していないため、IOMレポートの著者らはその「実質的同等性」の基準を一笑に付している。これにより、新しい機器が1976年以前に市販されていた機器と実質的に同等とみなされ、510(k)の経路を通して認可されることが可能になる。

「FDAと最高裁判所によると、FDAがある機器を従前機器と実質的に同等であるとみなしたとき、それはその新しい機器がその従前機器と同程度に安全且つ有効であるとみなしたに過ぎない」とレポートには記述されている。またこれでは十分でないと指摘。なぜなら「510(K)プロセスのあらゆる従前機器の起源である、1976年のMDA施行前に市販されていた機器は、それらの安全性と有効性の判断のために体系的に評価されたことがない」ためである。

当然のことながら、レポートでは1976年以前に作られた機器の系統を拡大解釈するために複数の従前機器を引き合いにして新しい機器の「実質的同等性」を引証しようとする業界の慣行もまた誤りであるとしている。

IOMのために立ち上がろう

業界とFDAはIOMのレポートについて騒ぎたて、当初は勝利を収めたかのように見えたが、New England Journal of Medicine (NEJM) の記事がこのレポートを賞賛し、事態は変わった。「Medical Devices—Balancing Regulation and Innovation」(医療機器-規制と革新のバランス)と題されたこの記事は、NEJM編集責任者Gregory Curfman氏とArchives of Internal Medicine編集者Rita Redberg氏によって執筆された。

両氏は、安全性と有効性の評価に従前機器を使用することを「ずっとシンプルで機器の種類が少なかった時代に」生まれた体系の「まったく擁護できない」部分であると断言している。著者らは市場で5年間にわたり販売され、約10万の移植が行われてきたDePuy社のメタルオンメタルの股関節ASR XL Acetabular Systemの認可取り消しを引用している。510(K)で認可されたクラスIII機器は患者の組織及び血流中に金属の僅かな粒子を出すことが分かり、著者らの言うように、それは「公衆衛生の悪夢」となった。

著者らは、FDAの規制が業界に対する不当な障壁であるというCliff Stearns代議士(フロリダ州選出の共和党議員)の発言にも言及している。このよく同調される意見に対する反論として、Curfman氏とRedberg氏はDePuy社の股関節のケースを引きあいに出し、機器の市場投入を「急かす」ことへ危険性を示していると主張する。著者らは「我々の取締官は、危険な機器の製造という仕事を生み出してはならない」と書いている。

Stearns氏の批判は自身の所見に由来しているのではない。それは業界の有権者からもたらされたもので、FDAにそれら有権者により便宜を図らせることを強要するための綿密な取り組みにおける攻撃材料となってしまっているのだ。

Curfman氏とRedberg氏は、FDAが510(k)の進展にまつわる問題のいくつかを緩和するために直ちに実行できることが3つあると論じている。その提言は以下の通り。

1) FDAは510(k)プログラムからすべてのクラスIII機器を廃止する、

2) 複数の従前機器に依存する認可を行わない、

3) 正式な市販後監視プログラムを実施する。

なかなか腰を上げないFDA

FDAは、しかし、長きにわたり「直ちに」という言葉を弾性的に捉えてきた。ここにきて新しい政治的現実を考慮し、前述の推奨3事項に対する早期の行動を期待できるかは未知数だ。というのも、受益者負担が当局と業界を結託させ、これまでこうした便宜を批判する者は、機器を市販するということがどういうことであるか恐らく知らない学術誌の編集者や学者などの部外者しかいなかったからである。

歴史が導くところでは、これは当局による怠慢行為である。FDAのレーシック手術や歯科用アマルガムなどに関する論議の冗長な処理などの例に示されるように、問題がより政治的になればなるほど、当局はその回答を遅らせ、より演出に時間をかけているのである。

510(k)プロセスに関する現在の論争は、政府説明責任局(GAO)が最初にプログラムの妥当性を評価するよう要求した2007年に火が付いた。その当時、GAOは510(k)を経るクラスIII機器向けに新しい規制を恐る恐る推奨した。4年経っても、より広範囲にわたる妥当性の問題にまだ答えはない。来たる選挙シーズンに確実に伴う新たな予算上の制約と先入観が、当局の無能さをより進行させるだろう。

 

James G. Dickinsonは弊誌姉妹誌MD+DIのコラムニスト。1975年からFDAに関するニュースを取材・分析をおこなっており、現在は、FDAWebview の統轄編集者・出版者。

本記事の初出は、MD+DI、2011年10月号。

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