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オステオイノベーション(骨の機能強化)における課題

オステオイノベーション(骨の機能強化)における課題

多孔性開放気泡金属から作られたインプラントは、骨の再成長を促進し、周囲の骨に適合した強度と硬さのレベルを達成することができる。この技術は永久的及び吸収性の両方のアプリケーションに応用できる。

By: P. Quadbeck, R. Hauser, G. Standke, J. Heineck, B. Wegener, G. Stephani and B. Kieback

開放気泡金属フォームは、多様な多孔率で製造できる。

応力遮断

骨欠損は医療において大きな問題である。病変は体によって自然に産生された骨がその機械的機能を回復できるまで安定的に治癒する必要がある。患者の迅速なモビリゼーションを達成するため、治療には術後の機械的負荷を完全に担うことができるインプラントの使用が必要である。欠損は自家骨または硬質の骨代用材のいずれかで治療することができる。自家骨は一般に骨盤領域から取られるため、追加の侵襲性手順を要する。これらの手術は患者にとって常にリスクと痛みが伴う。

一方で、現在のインプラントは非常に硬い。インプラントの硬さが周囲の骨のそれを大幅に上回り、それが負荷をかけてしまうため、体の周辺部分に影響を与えてしまう。骨癒合プロセスそのものが、局部の生体力学応力場によって刺激されるので、繰り返しの応力が骨肥厚と新しい骨基質の形成につながる。

柔軟性がない大きなインプラントはほぼ全荷重を担うため、自然の応力場に干渉し、いわゆる応力遮断を引き起こす。その結果の生体力学的刺激不足は骨の劣化と早期弛緩につながることがあるのである。

そこで、応力遮蔽関連の問題を克服するため、低硬度の発泡金属が開発されている。骨インプラント材としての開放気泡フォーム使用の検討は、1970年代にスタートした。研究者たちはこの種の材料が骨と血管の結合を促進し、骨とインプラント間の硬さのミスマッチを克服できると考えた。多孔構造のため発泡金属材は海綿骨の範囲内の硬さを達成することができるからである。

関節近辺にある海綿骨はその端部に高度な多孔構造を有し、特に骨粗鬆症を患う人々の間で、往々に骨折を生じる。開放気泡金属は代謝に絶対的に必要であり、骨の成長にも欠かせない骨細胞と血管の結合を可能にする。さらに、これらの材料の強度は骨に匹敵する。この望ましく補完的な性質のため、発泡金属材は医療研究者の注目を集めている。

 

開放気泡金属フォーム

開放気泡多孔材料については、ドイツのドレスデンにあるフラウンホーファー研究センターIZD(Fraunhofer Institute Center IZD )の中の生産技術・応用マテリアル研究所 (Fraunhofer IFA)とセラミック技術・システム研究所 (IKTS)において共同開発が行なわれている。 研究は主にスチールまたはチタン製のインプラントを中心に行われている。

これらの材料は、網状ポリウレタンフォームを金属粉の結合剤懸濁液で含浸するなど、粉末冶金複製技術で製造される。そして、熱処理により有機材料が除去され、粉末スケルトンが焼結される。従って、一方では高い開放気泡多孔性を持つ構造が製造可能で、他方では、構造そのものが適切なテンプレートの選択によって影響を受けることがある。原則上、これはあらゆる焼結可能な材料を開放気泡構造で構成することを可能にする。

 

このプロセスでは、約75~95%の多孔率で均質な発泡状構造の製造が可能である。骨代用材の機械的性質は、材料の密度と構造の標的化操作を通して、骨の対応する値に特別に適応させることができる。

これは、例えば希望の被膜厚を設定したり、特定の基材を選択したりすることで実行可能である。

特に、この技術は周囲の骨材料の環境にここに適応させることが可能である。材料は若い骨や、より老化した骨粗鬆症の骨のいずれにも適合するよう調整することができるようになっている。

このように魅力的な性質を持つこの革新的な材料は、学際的なプロジェクトで分析が続けられている。フラウンホーファー研究所が医療機器産業界のパートナーおよび病院と協力し、動物実験モデルにおける応用に適合するように、材料と技術の生物学的および医学的要素について研究をしている。

永久インプラント

当初、この新しいインプラント材料は、永久インプラントとして作られた。つまり、手術後インプラントが人の体内に永久に残るということである。チタンはこれらのアプリケーション向けに選択される材料である。

これは主にその低密度と極めて強い生体適合性、および優れた耐腐食性のためである。非吸収性の骨代用材にとって、これは結合組織および炎症がない骨との接触を意味する。チタンの骨伝導性もこの材料を体内プロテーゼデバイスに理想的なものにしている。

金属代用材の中で、チタンとその合金Ti6Al4Vは市場で最も受容度が高い。従って、チタンに基づく骨代用材を背系することは合理的であると言える。これはドイツ連邦経済技術省(BMWi)により資金供給されている共同事業TiFoamの題材でもある。

図1: インプラント材料の耐圧強度(左)と硬さ(右)は調整可能で、骨の性質に合わせることができる。

この材料の基本的特性は、機械強度と硬さである。これらの特性は主に、多孔性と孔サイズなどの構造的特性と機械的特性に大きく影響する合金の不純度という2つの要因を有する。

この点において、チタンは酸素、炭素、窒素に対する高い親和性のため、課題が生じる。これらの元素が酸化物、炭化物、窒化物として少量でも存在すると、材料が脆弱になる。しかし、プロセス最適化によって、チタングレード5の等級に近い不純度で開放気泡多孔チタンフォームが製造されている。

従って、開放気泡チタンの耐圧強度はインプラントの多孔性を変えることで10~55MPaの範囲で調整可能である(図1)。これらの値は海綿椎骨の強度(通常5~10MPa)に適合する。同様に、インプラントの硬さも骨の硬さに合致する。

材料の観点からすると、研究者の焦点は設計された材料の応用性にあるといえる。現在、ドレスデン工科大学の大学病院でこの試験が実施されている。羊の椎体の代用として新しいインプラント材が取り入れられ、永久インプラントでの初回試験では、材料への骨細胞の優れた内部成長が示された。6ヵ月後には大型のインプラントでも完全な取り込みが認められた。

吸収性インプラント

生物分解性材料の開発も大きな関心領域である。治癒プロセスの開始時点で、インプラントは完全な固定負荷を担うことが理想である。骨が再生するにつれて、インプラント材は吸収され、負荷を担う機能が骨へと移行される。

理想的なシナリオは、進行性骨接合(骨の内部成長)にインプラントの吸収を組み合わせて、随時対応する強度状態への最適な適応を達成すること(図2)。インプラントが6ヶ月間にわたって負荷を担い、癒合プロセスが18~24ヶ月後に完了することが理想的である。

図2: 生物分解性インプラントが移植直後に全荷重を担う。癒合プロセスが進行し、骨が再生するにつれてインプラントは徐々に消滅する。

これまで、代替の骨材料としてはマグネシウムが検討されてきた。この材料は生体適合性が高く、分解性心臓血管ステントの臨床研究で成功している。しかし、腐食性が高いため、新生の骨が負荷を担うことができるようになる前に分解してしまい、その骨インプラント材としての利用には問題がある。

他の代替案は、生体適合材料としての鉄の利用である。分解可能な鉄インプラントを心臓血管手術で使用する実験が行われている。移植されたステントは完全に吸収され、炎症反応を生じなかった。分解可能な鉄から成るインプラントは骨の手術で余り検討されていない。しかしながら、鉄はマグネシウムより腐食が大幅に遅いため、概念としては興味深い。

生理的媒体における分解速度の遅さのため、この材料の生物学的性能は永久インプラントに匹敵する。これらの特性は体内研究で示されている。さらに、基質材料として利用される鉄ベースの合金は高い機械的強度を提供する。

ドレスデンのフランフォーファ・生産技術・応用マテリアル研究所(Fraunhofer IFAM)では、開放気泡多孔金属フォームが非合金鋼と低合金鋼に基づいて開発されている。少量の合金添加の影響もモニタリングされている。

一般に、体内で自然に産生されるものに類似した生体適合性を達成できる合金元素のみが検討される。例えば、およそ1%以下の若干の蛍光体の添加でさえも、金属フォームの強度を大幅に高める。フォームの分解速度は第一の肝心な点である。提携企業であるInnoTERE GmbH社によって行われたこの材料の体外研究によると、分解は約2年以内に起こることが示されている。

現在、このインプラント材の吸収が体内モデルにおいてルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの大学病院で検証されているところである。ここでのインプラント研究によると移植12ヶ月後でさえもインプラント材の残留物が示されており、体外試験は体内での分解時間について目安を提示するのみであることが示されている。

このため、鉄合金の分解速度を加速化するための更なる研究が必要とされる。肯定的な面としては、周囲の骨組織に炎症反応は検出されず、鉄の良好な生体適合性が証明されている。

今後の展望

これまでのプロジェクトで開放気泡多孔金属フォームは、永久および分解可能インプラントの両方で人工骨代用材としての使用に適していることが実証されている。次の重要なステップはこの技術の商用化である。

しかし、分解可能な鉄ベースの合金の開発とそれらの医療用途向けの承認は、まだ数年先になりそうである。最初に市販される発泡インプラント材は永久インプラントとなるだろう。InnoTERE社では、そのような製品を近い将来に製造する計画を発表している。

Peter Quadbeck
is Team Manager at Fraunhofer Institute Manufacturing and Advanced Materials (IFAM), Dresden Branch Lab, Winterbergstraße 28, 01277 Dresden, Germany
tel. +49 3512 537 372
e-mail: peter.quadbeck@ifam-dd.fraunhofer.de
www.ifam-dd.fraunhofer.de
Ralf Hauser
is Scientist at the Dresden Branch Lab of Fraunhofer IFAM
Gisele Standke
is Scientist at Fraunhofer IKTS, Dresden
Jan Heineck
is Senior Physician at the University Hospital of Dresden
Bernd Wegener
is Senior Physician at the University Hospital of Ludwig-Maximilian-University, Munich
Günther Stephani
is Head of Department at Fraunhofer IFAM and
Bernd Kieback
is Director of Institute at the Dresden Branch Lab of Fraunhofer IFAM

 

本記事の初出は、姉妹誌 European Medical Device Technology、2011年6月号。

 

 

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