医療機器におけるセラミックおよびガラス粉末加工の役割

商品開発の際、多要因実験計画(FED)モデリングを採用すれば、金属インプラント用粒子コーティングの均質性と品質の改善、移植後の造骨細胞-溶骨細胞の挙動予測能力が可能になるなど、多くのメリットがある。

By: P. Jackson, CERAM, Penkhull, Stoke-on-Trent, UK

制御 セラミック、ガラス、およびガラス-セラミック粉末はさまざまな医療機器に使用されている。例えば、金属インプラントコーティング用の骨顆粒として、または形成骨置換、骨セメント、歯冠として直接使用される。また、合金インプラントのインベストメント鋳造におけるコアまたはシェル材など多くの重要な周辺的役割もある。

検知の領域では、セラミックは重要な役割を担っており、例えば、超音波スキャンに不可欠の圧電部品はセラミックである医療機器メーカーにとって、一次セラミックまたはガラス粉末の製造中(およびその後の部材の形成またはコーティングにおけるこれら粉末の使用)に関連変数を理解し、制御することが重要である。これを怠ると、化学的性質と顆粒の大きさまたは強度においてバッチごとにばらつきが生じることになり、これによりさらに対生物作用と部材の耐久性にばらつきが生じることになる。

本記事では、テストとモデリングの活用がどのように研究開発(R&D)に情報を提供し、製品開発を可能にするかを説明する。 変数の制御は一次粉末の製造から始まる。一次粉末は通常次の2つの方法で製造される。 • 沈殿。残留液相に懸濁させて固体粉末製品を生成するため、(通常制御された pH で)溶剤を組み合わせる。

その後固体粉末製品がろ過または遠心分離機によって回収される。さらにその後洗浄、乾燥され、例えば焼結などで加工される。

• 2 種類以上の前駆粉末の焼成。 両方の製造方法に、後続の加工と最終製品の品質に影響する可能性がある多数の変数がある。例えば焼成には次のような変数がある。 • 純度、結晶度、前駆粉末の粒径分布 • 混合方法(乾燥または湿式懸濁として)

• キルン内の粉末を入れた耐火性の箱(匣鉢)詰めの密度 • 粉末混合物の加熱時の温度-時間プロファイル • 加工粉末に実施される精錬の種類またはレベル • 湿度など時間経過に伴い粉末の品質に影響する保存条件

 FED分析結果の図示。

図1: FED分析結果の図示。

医療機器メーカーにとって、変数を変更して試行錯誤を繰り返すことで製品品質を最適化することは、時間がかかり、高価なことがある。多要因実験計画(FED)モデリングの研究は、この試行錯誤を排除するために役立つ。変数をリストし、希望する最終特性を定義することにより、モデリングソフトウェアがより少ない実験回数を提示する。 それら実験は、高、低、中間値が割り当てられた、異なる変数の組み合わせを特徴とする。実験が行われると、結果は任意の2つの変数の組み合わせの影響を示す一連の立体(3D)グラフで表される。

図1のグラフは加熱時間と到達した最高温度の影響を示す。特に役に立つのは、「使い心地」に関して単一のz軸コンポーネントで表すことができる機能である。この単一要素は任意の数の目標最終特性にそれぞれの重要性に従って特定の加重を割り当て、計算することができる。

FED は沈殿プロセスにも役立つ。表面電荷(ζ 電位)対沈殿相のpH値、および沈殿が発生するpH値に関する知識は、乾燥/加熱後に形成される粉末の粒子の形状と粒径に影響を与えることができる。

懸濁液のレオロジー 一次セラミックまたはガラス粉末を使用して二次粉末または形状製品を製造することに関し、通常加工は3つの一般的なルート(図2)のいずれかに従う。図2 から分かるように、部材は最終的に造粒粉末からプレスされるか、ハイソリッドペーストから押出されて製造されるが、加工は最初にほぼ常に懸濁液を通して行われる。このため、特定の懸濁のレオロジーを制御することは、次の加工工程の歩留まりを高くしたい場合、重要である。

さらに、最終的なミクロ構造とそれに起因する使用中の特性に関しても影響がある。例えば、スプレー乾燥の前に良好な流体レオロジーを維持し、懸濁液の固体含有量を最大にすることで、より均一な顆粒を確約することができる。これはさらに、例えば金属インプラントにおけるより均質なコーティングや、強度またはでき特性に影響する空隙がないプレス部材を得ることにつながる。

 一次セラミック粉末の加工。

図2: 一次セラミック粉末の加工。

水性懸濁液の流動学的挙動は、懸濁粒子が集合(凝集)しがちであるか、分散したままであるかの程度によって決まる。水性懸濁液に関しては、これは表面電荷、つまり粉体粒子の ζ 電位によって決定付けられる。低電荷は凝集および粘性の懸濁を促す。高電荷(正または負)は脱凝集と低粘性を確約する。

図3 に示すように、異なるセラミック粉末は異なる ζ 電位対 pH 図を有する。異なる粉末が混合される場合、粉末が相互に均質性を維持することができる正しい条件が存在することを確約するために、この情報は非常に貴重である。pH と伝導率を変化させる、許容できない ζ 電位条件が存在する場合、表面電荷を変える表面活性剤を使用し、懸濁液に導入される粉末/添加剤の順序に注意を払うことで、懸濁の挙動が最適化される。

応用例 ζ 電位は多くの医療機器にうまく適用されている。例えば、初期の ζ 電位対 pH 測定値に基づく流動学的品質管理は、スプレー乾燥が金属インプラントコーティング用の均質なセラミック顆粒をもたらすことを確約している。 インプラントのインベストメント鋳造の分野では、コアとシェルの製造に使用されるセラミックスラリーの制御不十分に関連する欠陥が克服されている。この一例が、セラミックシェルの中にある不要な気泡から生じる鋳造合金の凹凸回避である。

 医療用途で用いられる3 種類のセラミック粉末について記録された代表的ζ電位の挙動(線は最良の多項式フィッティングを表す)。

図3: 医療用途で用いられる3 種類のセラミック粉末について記録された代表的ζ電位の挙動(線は最良の多項式フィッティングを表す)。

最後に、懸濁された生体活性ガラス粉末からの無機イオン浸出は、加工前の対時間の流動学的挙動を変えることができる。これは粉末懸濁による骨置換部材の製造において重要である場合がある。どんなガラス粉末もそれが懸濁された水にイオンを流失させることがある。

これが pH、伝導性などの変化につながり、時間の関数として懸濁液のレオロジーを変化させることがある。時間の関数としての ζ 電位測定は、加工に先立ってこの不要な挙動に関する洞察を提供することができる。

逆に、インプラントが体内に配置されると、イオン浸出は有益である場合がある。この場合、移植の後の可能な造骨細胞 - 溶骨細胞の挙動を予測するために、模擬体液中の焼成粉末に対して行う ζ 電位測定を使用することができる。 粉末懸濁挙動に関する十分な知識は、研究開発でも有益なツールである。

例えば、ナノ酸化イットリウム安定化ジルコニアは、熱水経時変化に対して抵抗を高めることで、ジルコニア人工股関節置換術のより長い寿命を実現できる可能性がある。最終部材においてナノ構造を維持する新しい焼結法も重要であるが、造粒化の前の懸濁液中の固体含有量を最大化する能力も重要である。研究はキャビティ充填の容易さ、プレスの容易さ、ダイスタッキングの回避に関連する生産上の要求に対して、ナノジルコニアを含む顆粒の再最適化の重要性を示す研究が現在実施されている。

この過程では懸濁制御が重要である。粉末懸濁液の最適化に関連するセラミック研究のほかの分野には、以下が含まれる。

• 追加層製造時の顆粒開発。例えば、流体(特に微細粉末の懸濁液)のインクジェット印刷を用いて、層ごとに顆粒粉末粒子を「接着」し、焼結して立体歯科構造またはインプラント構造を作成する。余談であるが、インクジェット印刷は薬剤送達、骨格構造中の軟組織または幹細胞のポリマー同等物にも使用でき、人体に必要な有機および無機部材の同時作製に方法を提供する。

• 高固体含有量懸濁液の無孔鋳型への鋳造。

直接凝集鋳造とは、脱水せずに流動性のあるスラリーを固体に変換できるプロセスに与えられた総称である。粒径分布制御による粒子充填の最適化は、乾燥または焼結後のニアネットシェイプを確約するために役立つ。これはニアネットシェイプを維持する能力によって乾燥/焼結に際した形状収縮を予測する必要性を回避できる歯科分野で応用できるかもしれない。

• 金属インプラント上のセラミックコーティング、または抗菌部材として病院で使用される酸化チタンコーティングのサーマルまたはプラズマスプレーに関連する顆粒最適化。

耐久性が必須要件 人間の寿命の伸びと、関連の移動能力および生活の質に対する要求の高まりは、向上された耐久性を持つカスタムメイド製品の製造に大きな圧力がかかっていることを意味する。粉末作製と粉末懸濁物での加工は製造の初期段階を代表するため、重要な変数を理解して、さらにそれらを最適化することは、歩留まりと要求される使用中性能の改善を一貫して提供する能力に対して、非常に大きな影響を与えるとみなすことができる。

この領域で継続中である研究は、医療機器製造プロセスにおける進歩を追求し続けている。今日のメーカーにとって、製造プロセスを最適化し、製品の最高品質を確約するとともに、可能な限り最も効率的な方法で製品が製造されることを保証するために、材料分析専門家に相談することが有益となるだろう。

Phil Jackson, PhD, is Business Development Manager, Medical Devices, at CERAM Queens Road, Penkhull, Stoke-on-Trent, UK tel. +44 1782 764 444 e-mail: phil.jackson@ceram.com www.ceram.com/medical

本記事の初出はEuropen Medical Device Technology, 2010年6月号。 © 2010 Canon Communications LLC

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