シリコンについて:その材質から医療機器への応用まで

シリコン部品の成形、そしてそれらを医療機器にうまく利用するには技術を要するが、シリコンの持つさまざまな特性を考慮すれば、シリコン製の医療機器を製造するメリットは大きい。

A. Tomayer and D. Dupard

 

シリコン・ソリューション
医療機器にシリコン材を利用するにあたって、メーカーは、材料の選択、技法から適切な生産工程にいたるまでありとあらゆる場面で乗り越えなくてはならないハードルがある。

 

特にシリコン材を機器に使用する段階ではその複雑性が増し、プラスチックや金属、ガラスなどから作られている他のパーツとの親和性に留意しなくてはならない。本記事は、これらの課題と解決策について述べる。

シリコンが他のエラストマーよりも優れている点は、高い破断点伸度と圧縮永久ひずみ率、熱的安定性、広い温度域における安定的な機械的性質の保持、-50°Cでも維持されるフレキシビリティー、透明性、米国FDA承認の色素による高い着色性、UVやオゾン耐久力、そして環境適合性である。

また、医療用としての品質保証されたシリコンは上質であり、有機的可塑剤など一切含まれていない。ISO 10993-1 および USP Class VI (選択試験)により生体適合性も立証されており、蒸気透過性があり、滅菌しやすい。

低摩擦グレードのシリコンは医療機器への自動組み込み用に開発され、自己接着グレードのものは、オーバーモールドや2材料導入プロセスにおいてプラスチック、金属、ガラスなど他の材料と容易に接着できるように開発された。

シリコンは熱硬化性のエラストマーだが、熱可塑性化合物とともに使用する際、その材料の特性をフルに活かすために、作業とプロセスの正確性が求められる。

完全な自動化生産が可能なものの、高い技術が要求される。

これらのシリコンの特性を考慮すると、医療機器への応用上、シリコンが最適なエラストマーといえるが、材料の選定、部品の設計、シームレスなプロセス構築のための適切な製法などにおいて難題も多い。

また、医療用途向けのシリコン部品の生産量はたいていの場合、小ロット生産のため、全体的なコストに影響が出やすい点も考慮しなければならない点である。従って、立ち上げまでの時間がかかる割に、実際には使えない材料も出てくるリスクもある。

そのためプロジェクトを成功させるためには、かなり細かい実行可能性分析を行い、専門技術を有するエンジニアを結集させる必要がある。プロジェクト開始時に検討すべき点は以下の通り。

 

・パーツ設計 機械的に難しい点を最適化するためには、医療機器に使用するシリコンだけでなくシリコンと接合する予定の他の材質についても考慮する。

・化合物の選択 利用可能な医療用に保証された材料の中から、一番適合すると思われる物理的・科学的性質を有したものを選択する。

・年間生産量

目標販売価格 ツーリング(生産工具)の複雑性と希望生産量との間で折り合いをつける。

製造工程の設定 どのようなクリーンルームが必要か?どのレベルの自動生産体制を敷くべきか?包装はどうするか?など


液状シリコンゴム

組成物の選択においての留意点は、シリコンには2つの異なる種類があるということだ。液状シリコンゴム(LSR)と加硫ゴム(HCR、またはHTVとよばれることも多い高温加硫シリコンゴム)の2種類だが、両材料とも高温を必要とするので、これらの用語は誤解を招きやすい。

医療機器をはじめとするさまざまなアプリケーションで、最近ではHTVや有機ゴムよりもLSRが使用されるケースが増えてきている。

LSRのほうが自動生産プロセスに乗せやすい上に、材料の変態が容易な点が評価されてきているためである。

HTVゴムには伝統的な技術と工法が使われるが最終的な作業工程に手作業が必要とされるため、小ロット生産には適している。HTVもLSRでも使う技術はほぼ同じだが、工具費で差が出てしまうことと、作業サイクルも長くなってしまうため、今では特殊なケースにのみ使用される場合が多い。

医療用アプリケーションにおいて、LSRとクリーンで自動化された生産プロセスは最良の選択肢といえる。LSRには、スタンダードグレード、プラスチックや金属気質との接着向けグレード、自動組立向け低摩擦グレード、抗UVグレードなど、さまざまなグレードがある。どのようなアプリケーションに使用されるかに応じて最も適したグレードを選択する。

LSRを成形して医療機器に利用するための部品として設計する際、パーツ設計の際に角を尖らせない、最終製品の一部に使われる研磨材との接触を回避するなど、さまざまな留意点がある。医療グレードのLSR成形サービスを提供する実績あるサプライヤーを見つけることで、優れたパーツ設計が行え、最終製品の性能と生産性の両面のバランスを取ることもできる。

 

シリコン成形ツール

シリコン成形プロジェクトにおいて最適なツールを開発できればプロジェクトの成功は約束されたようなものである。医療機器メーカーは、適切な材料、技術、製造における専門的知識、鋳型加熱や真空システム、排出・射出装置などに関する深い専門知識を身につける必要がある。

LSR射出成形システムは、ホットランナーおよびコールドランナー技術に基づいている。医療用途向けには清潔さが厳しく求められるため、通常コールドランナーシステムが使用される。ホットランナーシステムは、手作業の介入あるいは型抜きが必要なため、工程が不安定になりがちで、汚染の危険性に曝されるからである。従って、ホットランナーは試作金型や限定生産向けには適しているといえる。

次に決定すべきなのが、コールドランナーシステムでもオープンゲートノズル付きにするかシャットオフノズル付きにするかの選択だ。

決め手となるのは、パーツの寸法、射出ポイントとその性能、型の凹みの数。シャットオフノズル付きシステムの主な利点は、凹み間の機械的バランスが完全に近い形で保持できることで、たとえ多くの凹みがあったとしても均一なサイズの部品が作れ、成形品からゲートを除去したあとに残る痕跡や全く使い物にならない部品などが出ないことである。

不良率は1%以下であることが多く、プロセスは非常にクリーンで安定的で稼働しやすい。小型パーツや32以上の高キャビティ数への需要の高まりもあり、金型工はオープンゲートノズルへ移行する傾向にある。このほうがシャットオフノズルよりも価格が若干安くすむ上に、凹み間の固定軸間領域を狭めることもできるので、より小型の金型設計が可能になる。

ただし、このシステムは、三交代制で稼働するような工場での大量生産には適しているが、他のケースにはあまり適していない点が難点である。また、射出ポイントで0.15- から0.25-mmの突起が発生してしまう。

一方、シャットオフノズル技術は飛躍的進歩を遂げており、32,64、あるいは128キャビティがある金型にも適用できる。オープンゲートシステムが自動車アプリケーションでは一般的だが、医療用金型にはシャットオフノズルのほうを推奨する。

バリデーションと品質管理

試作品段階において、シリコン材を最終製品に統合した状態で検証を済ませた後、なお2つの重要ポイントが残されている。第一が生産工程の設置・稼働・適格性確認で、その次が材料や部品のトレーサビリティやプロセスの安定性を含む品質管理(QC)プロセスの確率だ。

医療機器向けLSRパーツの典型的なQCプロセスには、パーツの寸法の測定や溶湯噴出が無いかなど表面部分の検証が含まれる。医療用途向けLSRの測定は、寸法許容差と通常10から70の一般ゴムの硬さを測定する規格(ショアA)が求められるために非常に難しい。

許容差が0.01 mmだと、従来の方法で測定すると結果に歪みがでてしまうこともある。4ミクロン精度でパーツを測定できる3D光学制御装置の利用が好ましい。

医療機器向けのパーツは不安定な材料を取り除くためのアフター・キュアが必要である。欧州薬局方(European Pharmacopeia)によると、アフター・キュアサイクルは200°Cで4時間に相当すべきという。

QCプロセスにおいて、パーツはアフター・キュア前と後の両方で重量を測定し、部品の厚みと化合物のグレード別に定められる割合の範囲内で重量の減少が収まっているかを検証する必要がある。

 

結語

医療機器産業においてLSRとそれに関連する二材料系パーツの需要は増えている。機能部品としてのシリコンは、技術面、最終製品へのインテグレーション上での複雑な課題も多い。

実行可能性(フィージビリティ)分析をしっかり行い、適切な技術知識を持ち、確固たる検証体制を設立し、品質管理プロセスを構築することで、シリコンを次世代の医療機器開発に大きく役立てることができるだろう。

 

著者

Andrea Tomayer is Business Development Manager and Dominique Dupard is Managing Director at Top Clean Packaging Group, Z.I. Les Torrents, 63920, Peschadoires, France
tel. +33 4 7380 9267 e-mail: info@tcgroupe.com  www.topcleanpackaging.com

 

本記事の初出は2011年6月付けEuropean Medical Device Technology

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