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可動マイクロチャネルがマイクロ流体素子を変える

可動マイクロチャネルがマイクロ流体素子を変える

ラボオンチップ素子上での直線チャネルの方向形成を示す時間経過画像。

ラボオンチップ素子上での直線チャネルの方向形成を示す時間経過画像。

マイクロ流体素子は約30年間にわたり、臨床検査薬やラボオンチップ (lab-on-a-chip) 製品から薬剤送達および植込みデバイスまで、さまざまな医療アプリケーション開発のためのプラットフォームを科学者に提供してきた。これまで多くの研究がなされてきたが、マイクロ流体素技術は、多様な機能を実行できる定義可能でコントロール可能なマイクロチャネル構造を形成できないことから利用範囲が制限されてきた。しかし現在、シンシナティ大学(UC; 米国オハイオ州シンシナティ)電気工学科のJason Heikenfeld准教授とIan Papautsky准教授が、この技術の柔軟性を大幅に高める可動マイクロ流体チャネルを形成する方法に関して協同研究を進めている。

By: Bob Michaels, managing editor, Medical Product Manufacturinig News

現在のマイクロ流体素子のラボオンチップデバイスは、往々にして、特に安価な使い捨てのデバイスを必要とする医療用途で、ポリマーから作製されている」と、シンシナティ大のBioMicroSystems Lab および Micro/Nano Fabrication Engineering Research Center所長でもあるPapautsky准教授は語る。

「これらデバイスのマイクロチャネルの配置は固定されて」おり、各ラボオンチップは、特定の機能(通常単一の分析機能)を果たすために設計する必要があるという。「本質的に、現況のラボオンチップデバイスは、ラボではなく1つの分析装置がチップ上に載っているだけ」と、Papautsky 准教授は説明する。

「カスタマイズしたマイクロ流体チャネルネットワークの形成を可能とすることで、我々の技術は、複数の分析評価を単一デバイスで実行する機能を備えたラボオンチップの概念により近付けることができる」と語る。 Papautsky准教授によると、高スループットの提供が可能な従来のマイクロ流体素子は、主に例えばシリンジポンプによって送られる流体フローなどの連続フロー向けに設計されているという。

対照的に、マイクロ流体素子のサブセットであるデジタル流体素子は、電場を使って離散液滴をコントロールする。このアプローチの利点は、平板状電極の2D領域上で液滴を移動、結合、分離することができるという点。そのようなデバイスでは、印加される電位の順序と位置をプログラムすることにより、1つ以上の液滴のコントロールを達成できる。

Papautsky准教授は、これをチェス盤上でコマを動かすことに似た現象であると捉えている。「我々の技術は、これら2つのドメインを組み合わせるもの。電場を使って仮想マイクロ流体チャネルを形成する。これを、物理的な壁に閉じ込められていないため、仮想と呼んでおり、確立された経路を通じて連続的に液体を動かすことができると見込んでいる」という。

これらシンシナティ大の研究者によるチップは、金属伝導電極と疎水誘電性絶縁体材料で被覆されたポリマー柱体のアレイを含んでいる。アレイに電位が印加されると、濡れ接触角における局部的変化により液体が柱体の間を流れるようにして、異なるタイプの分析評価を実行するためにコントロールできる仮想チャネルが形成される。

この性能により、このマイクロ流体チップは、医療現場用診断装置などの医療用途で応用できるようになるかもしれない。「基本的に、我々の技術は同一のデバイスを使用して、複数のまたは連続した診断分析評価を実行することを可能にする。これは、発展途上国など資源の乏しい環境にとって特に重要」と Papautsky准教授は言う。 Heikenfeld准教授とPapautsky准教授は、このマイクロ流体チップを液晶ディスプレイで画素を駆動する電子装置に組み込むため、テネシー大学(ノクスビル)材料科学およびエンジニアリング部のPhilip Rack准教授と共に研究を行っている。

その結果、携帯型のハンドヘルド装置にこの技術を組み込むことに成功した。 「最終的には使い捨てとなり、マイクロ流体チップはメモリカードやマッチ箱のサイズに、そしてハンドヘルド型装置またはリーダーは iPhoneサイズにすることができる」とHeikenfeld准教授は言う。「チップをリーダーに挿入し、リーダーのソフトウェアによってユーザは分析またはチャネル構成を定義することができるので、ブドウ糖モニタに似ている」という。

本記事の初出は Medical Product Manufacturing News 2010年5月号 に英語で掲載。

 

 

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