多数のポリマー、限られた時間

ポリマーには数多くの選択肢があるが、カテーテル製造業者は各種情報をチェックして、その中から最良の選択をする必要がある。 By: Charles O'Neil

1.	カテーテルの設計において、正しいポリマー、又はポリマーの混合を選択することが必須である。

カテーテルの設計において、正しいポリマー、又はポリマーの混合を選択することが必須である。

現行の低侵襲性手術法は、外科医がカテーテルを血管に挿入できるだけの小さな切開で行われる。これらの小さな切開は、病変のある血管を治療したり、詰まった血管をきれいにしたり、あるいは塊を溶かす薬を直接問題の領域に送達したりするために、器具や装置を挿入できる導管となる。 低侵襲性手術に使用される血管カテーテルは、多くの設計上の課題に直面している。カテーテルを押して体内で進ませ、操作することができるように、カテーテルの基端は一定の硬さが必要である一方で、周囲の組織に重大な損傷を生じることなくカテーテル先端をより小さい血管に通すことができるように、先端は十分な柔軟性が必要である。この柔軟性、高い引張強度および圧縮抵抗の組み合わせが、血管カテーテル設計を困難にしている。

最適なカテーテル設計のために適切なポリマーを選択することは、必要とされる生物学的、物理的、化学的特性についての理解と、商業的に利用可能なポリマーに関する徹底的な知識を必要とする。本記事は、OEMが特定のニーズを満たすポリマーを選択できるように、これらの要素に関する概要を説明する。

材料特性の無効化生物学的性質:

血管カテーテルは血液だけでなく、静脈の内壁や循環系の動脈にも接触する。このため、生体適合性が絶対的に必要となる。 又これらのカテーテルは、血管に接触したときに炎症反応を起こさないようにする必要もある。長期間にわたって血管に留置されるカテーテルにおいては、これらの性能はより重要となる。 さらに血管カテーテルは、血液に接触したときに血栓や血塊を生じないようにしなければならない。ほとんどのポリマーが一定程度の血栓特性を示すが、この問題は表面を抗血栓性材料でコーティングすることによって克服することができる。

その一例がへパリンを含むコーティングである。また、カテーテル法の手順の前に、患者に抗凝固薬であるへパリンを注射する場合もある。別の抗凝固薬であるワルファリン(コーマディン)が経口投与されることもある。 血管カテーテルは非変異性(nonmutagenic)である必要がある。また血管カテーテルは時に感染が体内に侵入する経路となるため、無毒であり、生物膜形成と微生物付着に耐性がなければならない。これはカテーテルが長期間体内に留置される場合特に重要となる。

引張強度について

カテーテル同様、ルーメン間の壁も薄い。ルーメンは特定の働きを持つ。例えばバルーンカテーテルで、ルーメンの1つはバルーンを膨張させるために用いられ、もう1つはバルーンの収縮に用いられる。膨張時は高圧が用いられる。高い引張強度によって、ルーメンが破れて血管を損傷し、重大な出血や死亡を引き起こすことを防止できる。 収縮には真空が用いられる。高い引張強度によってルーメンがつぶれないようにすることができる。ルーメンがつぶれるとバルーンが収縮せず、バルーンとカテーテルの除去がずっと困難になる。そのような状況が発生すると、カテーテルとバルーンの除去に侵襲性手術が必要となる。

物理的性質:

血管カテーテルの壁面は薄いため、引張強度が高い材料を選択することが不可欠である(横のコラム「引張強度について」を参照)。カテーテルは体内の血管を通って閉塞または損傷した領域まで移動される間、押して血管系に通されるため、ねじれと加えられるトルクに耐えることができなければならない。 血管カテーテル向けに選択される材料はつぶれないものでなければならない。耐圧縮性があることでカテーテルの形を維持でき、これは血管への損傷を防止するためにも重要である。適切な高弾性率と良好な耐キンク性のある材料を選択することによってそのような耐性を確保できる。カテーテルの変形は取り外しが困難になり、機能に悪影響を及ぼす。

血管カテーテルは、血管系を通って移動するために最適な柔軟性を必要とする。人間の血管系は曲がりくねった非線形の経路である。それを通って移動するために、カテーテルには適切な柔軟性が必須である。適した係数のポリマーを選択することによって、望ましい柔軟性を提供することができる。カテーテル向けの柔軟性を定義する特定の数値はない。通常基端は硬く、先端はより柔軟である。硬さは一般に軸の長さに沿って異なる。設計される柔軟性はカテーテルの種類と機能によって異なる。また、外科医が希望する感覚によっても影響を受ける。

例えば、基端は110,000~300,000 psiの範囲、先端は2000~10,000 psi の範囲であり得る。これはすべて希望の手順を実行するために必要な機能に依存している。 もう一つの求められる特色が低摩擦係数である。カテーテルは血管経路に通されるため、血管を容易に滑ることができる外表が必要である。内側または外側表面に潤滑コーティングを使用することでもこれを達成することができる。

ポリマーは適切なX線応答を得るために放射線不透過性にする必要がある。

ポリマーは適切なX線応答を得るために放射線不透過性にする必要がある。

カテーテルは基本的にチュービングであるため、押出が生産過程の重大な部分である。ポリマーは容易に形作られ、形成可能でなければならない。例えば、カテーテル先端にはチップが付けられている必要がある。通常、カテーテルは基端から先端までの柔軟性が異なる。

この変化は、異なる弾性係数のセクションを接着することによって達成される。通常基端は硬く、一方で先端またはチップは通常柔らかいチップが付けられており、弾性係数が低い。カテーテルの軸に沿って変化する弾性係数の材料を組み立てるには、容易に作製できる必要がある。

ポリマーは放射線不透過性にすることができなければならず、これは通常放射線不透過性のフィラーを混ぜることで達成される。フィラーおよびその使用量は、ポリマーの物理的および機械的特性に悪影響を与えてはならない。放射線不透過性フィラーの割合は、X線とX線蛍光透視装置で見えるに足る必要がある。

例えば、後で詳細に説明する熱可塑性ポリウレタン樹脂は放射線不透過性フィラーを最大40重量%入れることができる。 放射線不透過性フィラーの量と種類は、物理的性質とX線応答の両方に影響を与える。たとえば、硫酸バリウムは、次炭酸ビスマスよりX線応答が低い。

次炭酸ビスマスと同じX線応答を得るためにはより多くの硫酸バリウムを要する。硫酸バリウムの密度は次炭酸ビスマスの約半分であるため、ポリマー混合物においてより多くの容量を占める。 放射線不透過性フィラーがポリマー混合物に占める容量が大きければ大きいほど、物理的性質の低下が大きくなる。このため、OEMは特定のカテーテル用途において、最も良好なX線応答と最小の物理的性質の低下を可能にする放射線不透過性フィラーを選択する必要がある。

樹脂はペレットにする前に滅菌する必要がある。

樹脂はペレットにする前に滅菌する必要がある。

また、選択の過程には経済的要因もある。次炭酸ビスマスは硫酸バリウムの7~10倍のコストがかかる。選択は物理的性質に影響を与える。このため選択は物理的性質のニーズとX線可視性の間でバランスをとる必要がある。 もう一つの検討すべき要素は、カテーテルが体内で使用される前に滅菌を行う必要がある点である。

照射は滅菌の物理的な方法である。最も一般的な2つの照射法が、ガンマ線滅菌と電子ビーム滅菌である。この滅菌法は多くのポリマーの機械特性に有害な影響を与えることがあるため、OEMは滅菌後のカテーテルの特性と機能性への影響を考慮する必要がある。

化学的性質:

血管カテーテル向けに選択されるポリマーは、生体適合性試験で不良を引き起こす可能性がある浸出性添加物を含んでいてはならない。浸出性添加物は、細胞毒性または全身毒性の特性を持つ場合がある。ほとんどの商業的に利用可能なポリマーには、通常安定剤または加工助剤が含まれる。

さらに、USPクラスVI分類を満たす場合、そのポリマーはカテーテルチュービング用材料として許容できる場合がある。食品用途に接触するプラスチック向けのFDAの21 CFR要件を満たすポリマーは、選択のもう一つのソースとなり得るが、食品向けの要件は生体組織との適合性を保証していないため、生体適合性についてテストする必要がある。

化学的性質:

血管カテーテル向けに選択されるポリマーは、生体適合性試験で不良を引き起こす可能性がある浸出性添加物を含んでいてはならない。浸出性添加物は、細胞毒性または全身毒性の特性を持つ場合がある。ほとんどの商業的に利用可能なポリマーには、通常安定剤または加工助剤が含まれる。 さらに、USPクラスVI分類を満たす場合、そのポリマーはカテーテルチュービング用材料として許容できる場合がある。

食品用途に接触するプラスチック向けのFDAの21 CFR要件を満たすポリマーは、選択のもう一つのソースとなり得るが、食品向けの要件は生体組織との適合性を保証していないため、生体適合性についてテストする必要がある。

すばやく分かる酸化エチレンに関する事実

酸化エチレン(EtO)は気体形態の滅菌剤である。この滅菌法は熱および照射に弱い医療機器に用いられる。滅菌と曝気処理に時間がかかるため、オフィスで実施される方法ではない。EtOは毒性が高く、皮膚と粘膜に刺激を与えるため、有害化学物質とみなされている。重大な注意を払って使用する必要がある。 微生物破壊は化学反応によって引き起こされる。効果的な滅菌は気体濃度、暴露時間、温度、相対湿度に依存する。一般的なサイクルタイムは温度50~60℃で16~24時間である。暴露後、製品に曝気処理を行い、EtOが製品に残留しないよう確約する必要がある。

ポリマーは、保管中および体内で安定した状態を保てなければならない。保管中に特性が失われると、使用時に不具合を生じることがある。保管時、材料は湿気(湿度)、熱、光に晒される可能性がある。これらの条件に暴露されたとき、一部のポリマーは劣化する。例えば、湿気と熱は分子重量を減少させることがある。

光は分子重量を失わせ、脆化と変色を引き起こす場合がある。ポリマーおよび完成品は温度と湿度が管理された倉庫に保管されなければならない。光を遮断した容器またはパッケージに保管する必要がある。 既述のとおり、カテーテルを体内で使用可能にするにはそれらを滅菌する必要がある。

酸化エチレン(EtO)、Sterrad、Sterisシステム1、Cidex OPAプロセスを含む化学滅菌法が使用されることがある。通常、EtOがカテーテル滅菌に選択される方法である(横のコラム「すばやく分かる酸化エチレンに関する事実」を参照)。 ほとんどの血管カテーテルは数個のコンポーネントのアッセンブリである。一部のコンポーネントは同系ポリマーに属する異なる材料であることがある。その他コンポーネントは、より柔軟なチップが最初に体内に入り、より硬い一端が外に残ってデバイスの操作に用いられるように組み立てられた異なる弾性係数のチューブである場合がある。

カテーテルの機能性においてコンポーネントの相互に接着する能力が重要である。熱接合または接着剤の使用に関わらず、強い接合を形成する能力が不可欠である。 選択されたポリマーは、コーティングを許容できなければならない。血管カテーテルは微生物の成長防止または血栓防止のため、潤滑目的でしばしばコーティングされる。

一般にポリマー表面は皮膜が付着できるように処理される。コーティングは通常血液に濡れると滑らかになる感湿性ポリマーから成る。 コーティングには抗菌性添加剤または抗血栓性添加物が含まれることがある。良好な付着を得るために、カテーテル表面を処理しなければならないことがある。

処理の例としては、化学エッチング、プラズマ処理、コロナ表面処理などがある。 カテーテルは幅広い化学物質に暴露される。たとえば、さまざまなアッセンブリ作業用のクリーニング溶剤、滅菌用の特定の薬品、医薬品などに暴露される。ポリマーの選択は使用される化学物質の種類に対して考えられる暴露を考慮に入れる必要がある。

最も一般的に使用されるポリマー 血管カテーテルに最もよく選択されるポリマーには次のようなものがある。

ポリウレタン:

熱可塑性ポリウレタン樹脂は血管カテーテル市場で使用される重要なポリマーの1つで、中心静脈カテーテルのセクターで優勢である。また、診断用カテーテルおよびとガイディングカテーテルの設計にも使用される。ポリエステルベースのポリウレタン、ポリエーテルベースのポリウレタン、ポリカーボネートベースのポリウレタンを含む多くの種類の熱可塑性ポリウレタン樹脂が利用可能である。それらは芳香族および脂肪族グレード、そして約75ショアAから75ショアDまで、多様なデュロメータで提供されている。 ポリカーボネートベースのポリウレタンは酸化安定性に優れており、これは長期的な生体安定性につながる。このため、それらは長期の中心静脈カテーテル用途に適した選択である。ポリカーボネートがその原材料であるビスフェノールA(BPA)を放出するをことに関する論争が高まっている。

BPAはヨーロッパとカナダで禁止されており、現在FDAによる見直しが行われている。 ポリエーテルベースのポリウレタンは脂肪族または芳香族のポリウレタンである。それらは体内に挿入されると数分でかなり軟化する。これは患者にとってより快適であり、血管を傷つける危険が減らせる。軟化作用は芳香族グレードより脂肪族グレードでより顕著である。脂肪族グレードと比べ、芳香族グレードはより良い溶剤耐性と、より優れた生体安定性を示す。

熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリ塩化ビニル(PVC)のようにソフトさと柔軟性を得るために可塑剤を使用しない。それらは、ソフトさと柔軟性を制御するために硬いセグメントと柔らかいセグメントを含む。柔らかいセグメントに対する硬いセグメントの割合は、ソフトさと柔軟性をけっち付ける。熱可塑性ポリウレタン樹脂は、X線またはX線蛍光透視装置で材料を検出可能にする放射線不透過性フィラーを最大40重量%入れることができる。 このポリマーは酸化防止剤と加工助剤を含む。樹脂をペレット化するため、メーカーは樹脂を安定させ、劣化とペレットの粘着を防止するためのワックスを使用する必要がある。使用される添加剤は、生体適合性がある。

ポリアミド: ポリアミドとポリアミドブロックコポリマーは、血管カテーテルの製造に使用されるポリマーのもう1つのファミリーである。それらはバルーンカテーテルとステント送達カテーテル向けに選択されるポリマーであることに加え、カテーテル市場の経皮的冠動脈形成術領域で優勢である。最も頻繁に使用されるポリアミドはナイロン11とナイロン12、およびそのほかのブロックコポリマーである。 ブロックコポリマーは、軸に沿って変化する柔軟性を持たせてカテーテルを設計することができるように、さまざまなデュロメータと柔軟性を提供する。

フッ素ポリマー: 血管カテーテルの製造において最も一般的に使用されるフッ素ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEはカテーテルのインナールーメンにライナーとして主に使用される。PTFEはあらゆるポリマーの中で摩擦係数が最も低いため、そのインナールーメンを通してさまざまなデバイスを容易に滑らせることができる。 しかし、PTFEを接着することは難しく、アウタージャケットの接合を達成するためにはエッチングが必要となる。このエッチングは化学エッチングまたはプラズマエッチングを使用して行うことができる。そして通常はつなぎ層を用いてPTFEの内層をアウタージャケットに接合する。照射プロセスがPTFEを劣化させるため、照射でPTFEを使用したカテーテルを滅菌することはできない。

ポリオレフィン: 高密度ポリエチレンは血管カテーテル設計のインナールーメン用ライナーとして使用される。これはPTFEほどの低摩擦係数を持たないが、ポリアミドとポリウレタン、特に低デュロメータの樹脂よりも優れた係数を提供できる。一般に、つなぎ層を配して押出され、アウタージャケットに接着される。

PVC:これは血管カテーテルに使用された最初の材料の1つであったが、熱可塑性ポリウレタン樹脂とポリアミドにほぼ置き換えられている。PVCで使用されるフタル酸エステル系可塑剤に対する健康上の懸念のため、ほとんどの医療機器で段階的に廃止されている。フタレートは環境ホルモンであることが知られており、人間、特に幼児、胎児にとって危険であることが立証されている。これらの懸念のため、ほとんどのデバイスメーカーは新しい医療機器設計におけるPVCの使用を回避している。

ポリイミド: ポリイミドは薄い壁厚、硬度、強度が重要である血管カテーテル用途で使用される。これらのポリマーは、メーカーが高い引張強度や弾性係数などの優れた物理的性質を持つ小さな薄い壁厚のカテーテルの製造を可能にする。それらは先端で使用できない硬さであるため、カテーテルの基端の軸部として使用される。ポリイミドカテーテルは押出で作られない。そうではなく、マルチパスコーティングプロセスでソリッド銅線を浸漬被覆しながら、作製される。各コーティングパスは熱硬化される。

希望の肉厚が達成されるまで、ポリイミド層がビルドアップされる。その後コートされたワイヤが希望の長さに切断される。端部はポリイミドコーティングをはがし、コーティングが剥がされた端部を引き伸ばし装置に固定する。そして銅線を引き伸ばして直径を小さくし、ポリイミドチューブを滑落させることができる。

PEEK: ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)血管カテーテルはポリイミドカテーテルと同じ用途に使用できる。しかし、押出で作られるため、ポリイミドと同程度に小さいサイズ、または薄い壁を達成することはできない。PEEKは医療機器向けの比較的高価な材料であるため、コスト高が大きな欠点である。このため、その使用は専門装置に限られている。

終わりに ポリマーの選択は、血管カテーテル設計を成功させる要である。数千もの利用可能な医療グレードポリマーの生物学的、物理的、化学的性質と各用途独自の要件を適合させる必要がある。また、各作製段階に対するポリマー選択の影響も確実な製造を実現するために検討されなければならない。機能的かつ製造可能で、安全なカテーテルの設計を達成するには、広範なポリマーに関する知識と経験が必要とされる。

Charles O’Neil is senior project manager for PolyMedex Discovery Group (Putnam, CT).

本記事の初出は英語版MD&DI誌2010年9月号。 Copyright © 2010 Canon Communications LLC

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