米国における医療機器規制プロセス ー重要課題の考察、検討、解説ー

薬事規制により、医療機器をタイムリーに市場に投入できなくなるケースがある。 本記事では、特に米国で医療機器を販売する際に克服すべき重要な規制のハードルについて考察する。

さまざまな医療問題を解決するため、革新的な技術の開発を行っている企業が、技術の最適化と同時に財務面で破綻しないよう注意する必要があることは容易に想像できる。規制順守に関連する問題が、開発プロジェクトの早期に考慮されていない場合、製品のマーケティング準備ができたときに問題となることがあり、なかには製品の発売が実質的に遅れてしまう場合がある。これは、特に創業期の企業にとって、有効な投資ができるかの分かれ道でもあり、さらには企業が存続できるかまで影響する可能性がある非常に重大なドミノ効果、またはマイナス効果をもたらすこともある。    

従って、会社の初期事業計画において、マーケティング戦略に則った規制戦略を盛り込む必要がある。実際、規制戦略がマーケティング戦略を動かすことも多々あるからである。

規制問題に対する理解不足のために、技術面および医療面での技術的成果を無駄にしてしまうことの無いようにするため、信頼できる専門の規制に関するアドバイスを得ることは、事業の初期段階では不可欠である。そのような助言は、従業員またはコンサルタントから得ることもできるが、こうしたアドバイスが事業の行方を左右することがある。

現在、多くの企業が、最終製品である医療機器を米国と欧州の両方で販売することを目標としている。しかし、残念ながら、これらの主要市場の規制体系は大きく異なるため、両方の体系を理解することが必要になってくる。一部の機器が一方の体系において他方より容易に販売にこぎつけられることがあるため、企業の進む方向性に大きく影響する可能性があるためである。

両方の体系とも、患者にとってのリスクに基づき医療機器を分類しているが、常に同じ分類となるわけではない。各体系で分類が確立されると、「市場へのルート」に向けた要件とオプションがより明白になり、企業はその規制およびマーケティング戦略を固め、投資家の期待にも応えられる。

本記事では米国の医療機器に対する規制体系に重点を置く。欧州の体系については別の記事で論じる。

1976年に導入された「医療機器修正法」(1938年の「連邦食品医薬品化粧品法」に対する修正法)は、明確に医療機器を対象としており、現在の米国医療機器規制体系の基礎となっている。現行の規制は設計と開発、製造、商業化、市販後活動を含んでいる。

1976年以来多くの修正が行われているが、当時確立された原則が今日でも適用されている。

1976年5月28日の医療機器修正法の施行以前に合法的に販売されたすべてのデバイスが、食品医薬品局(FDA)と専門の諮問委員会の支援によって、3つのクラスに分類された。患者にとってのリスクが最も低いデバイスはクラスIに分類され、比較的少数の高リスク装置向けにクラスIIIが用意された。

今日の規制環境で運営している医療機器メーカーは、現行の医療機器要件を理解するために、医用機器・放射線保健センター(CDRH)のウェブサイト(に大きく依存している。このサイトの「CDRHについて」というページ、非常に役立つトレーニングプレゼンテーションが含まれており、一部のプレゼンテーションは中国語とスペイン語でも提供されている。

ウェブサイトのデータベースを利用して、メーカーはデバイスの関連分類を判定することができる。
患者に対するリスク度合いの増加によって、FDAは医療機器を3つのグループに分類している。

クラスI: 安全性と有効性を示すために一般管理で十分とみなされる。一般管理には次が含まれる。
・メーカー施設登録
・医療機器のリストアップ
・ 米国連邦規則集 第21編(Title21:食品・医薬品関連)の第820(規制番号21 CFR 820あるいは品質システム要件(QSR)の要件に準拠
・ 規制番号21 CFR 801 あるいは809を満たす表示
・ 市販前届(510(k))の提出

クラスII :安全性と有効性を示すために一般管理と特別管理で十分とみなされる。特別管理には次が含まれることがある。
・表示の追加要件
・必須規格または推奨規格、あるいはFDAガイダンス文書への準拠
・指定の市販後調査活動実施要件

クラスIII:安全性と有効性を示すために一般管理と市販前承認申請(PMA)が必要とされる。
PDAにより実施されるPMAは、メーカーより提出されたデータの詳細な科学的評価のプロセスである。このプロセスは、メーカーがの安全性と有効性を確立したことを示すものである。

クラスIの医療機器の約75%が市販前届(510(k))評価から免除されている。つまり、米国市場に
免除のクラスIの医療機器を投入することは比較的容易で安価であることを意味し、510(k) あるいは PMAの代わりにQSRの要件を満たす品質システムがあればよい。ただし、多くのクラスI の医療機器もQSRの設計管理要件(セクション820.30)は免除されている。

さらに、FDAまたは第三者機関による認証または事前の品質システム検査は要求されていない。QSRの順守は自主的であるが、機器が市販されるとFDA検査の対象となることがある。


クラスIIおよび510(k)プロセス
510(k)の目的は、新しい機器が安全性と有効性に関して1つ以上の「合法的に市販されたデバイス」と実質的に同等であることを証明することである。合法的に市販された機器とは、1976年5月28日以前に合法的に米国市場に存在したデバイス、または実質的にその日以前に市販されていたものに相当することが示された機器である。

主にクラスIIの医療機器で、510(k)が要求されるとき、QSR(設計管理を含む)への準拠性が求められることに加え、企業が米国市場に機器を投入する予定である少なくとも90日前に、届出をFDAに提出する必要がある。医療機器修正法の初期では、90日以内にFDAから回答がなかった場合、それは「無言の許可」と考えられていたが、この公的立場はすぐに変更になった。FDAは90日以内に510(k)に回答する必要があるが、一定要素の明確化を求めたり、追加データを要求したりすることができ、そういった場合、評価時間はしばしば90日間を超える。

510(k)のためのデータ準備には数週間かかる場合がある。法律では510(k)に特定の形式が要求されてはいないが、FDAは含めるべき事項のガイドラインを公開している。それによると、届出は20の章見出しがあるべきである(それらの一部が該当しないとしても)と示唆している。

最も重要なことに、510(k)は医療機器の詳細説明、1台以上の合法的に市販された機器との比較、およびベンチテスト、動物実験、および臨床データの結果を必要に応じて含む必要がある。

クラスIIIおよびPMAプロセス
ほんの少しの例外を除き、クラスIIIの医療機器はPMAプロセスを経ることが必要とされている。PMAに関しては、非常に詳細な提出物を用意する必要がある。安全性と有効性を示すための臨床データの提出を含み、且つおそらくその特定の臨床実験がFDA承認の研究規則に従って計画・実行されなければならないだろう。

PMA評価に定められた期限はないが、それが受領されたと認められてから180営業日内に、または追加情報が必要な場合は320日以内に、FDAは評価を終えることを目標としている。

PMAプロセスを経て機器に許可が与えられる前に、FDAはメーカー施設のQSR準拠性を確認するため検査を計画することがある。発見されたあらゆる不適合に対して許容できる回答がFDAに提出されるまで、販売許可は下りない。


分類戦略

クラスI、クラスII、クラスIIIの医療機器に対する販売許可プロセスは、時間とコストの両方でかなり異なる。
分類は機器の使用目的に基づいている。より迅速に市場にアクセスできるようにするために当初の使用目的を制限することで、より低い分類に基づいて最初の販売許可を獲得し、初期の売上げからの収益を利用して、機器をより高度な分類に押し上げる追加請求をすることができる。


費用
医療機器規制プロセスの特定要素に対するユーザ料金が、「医療機器ユーザフィー及び近代化法」(MDUFMA)の一部として2002年に導入された。現行料金(2011FDA会計年度)の一部は次のとおりである。
・   メーカー施設登録:           2,179米ドル
・   510(k)届出:                       4,348米ドル
・   市販前承認申請(PMA): 236,298米ドル


510(k)料金は中小企業の場合50%の軽減が可能である。この割引は年商1億米ドル未満の米国国内外の組織に平等に適用される。中小企業向けのPMA割引額はさらに大きく、59,075米ドルまで軽減される。中小企業の資格を獲得するための申請プロセスに関する指針は、FDAウェブサイトから利用可能である。
ただし、(年商が3000万米ドル未満である限りにおいて)企業が初回に提出するPMAには重要な料金免除制度があり、これは高リスクの医療機器で創業する企業にとって非常に有用である。

品質システム規制
米国における医療機器メーカーに対する基本的な品質システム要件は、米国連邦規則集PART820第21条(21CFR820)QSRに詳細に規定されている。QSRは15のセクションに分かれており、機器の分類によって、その機器が除外されていない限り、すべてまたは一部のQSR要件が義務付けられている。幸い、QSR要件は標準のISO13485で規定された欧州の要件と類似しているが、重要な違いも存在する。  

QSRとISO13485の両方を完全に満たす1つのQSを確立することはできないわけではないが、両方の必要条件を満たすシステムを開発する際には、その点を考慮しなければならない。医療機器の販売を1つの主要市場から他の市場まで広げる予定がある場合、ギャップ分析を行って、両方の要件への準拠性を可能にするためにQSに何を加えるべきかを判断する必要がある。


ソフトウェア
操作にソフトウェアを利用する機器は、許可プロセスを経ている間、FDAから特に注視される。ソフトウェア設計と検証の管理に関する要件は米国と欧州間で類似しているが、一般に米国市場の許可または承認におけるソフトウェアドキュメンテーション評価の深度はかなり異なる。

例えば、PMAまたは510(k)の対象となるクラスIIの医療機器について、FDAは「ソフトウェア含有医療機器市販前承認申請の内容に関するガイダンス」(Guidance for the Content of Premarket Submissions for Software Contained in Medical Devices)と「ソフトウェア検証に関する一般原則;産業およびFDAスタッフ向け最終ガイダンス」(General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff)という2つの文書を公開している。
これらの文書からも、FDAがいかにソフトウェアの設計と検証およびFDAの評価プロセス中に提供が求められるソフトウェアドキュメンテーションへの要求を高く考えていることがわかる。

ソフトウェア開発者が設計段階において、これらの指針に従わないと、該当機器がすでに欧州での販売向けにCEマークを獲得していても、FDA要件を満たすためにソフトウェアリスク分析、開発、検証、実証テストのかなりの部分をやり直されなければならなくなる。

市販後要件
米国の市販後要件に関連してFDAが使用しているいくつかの用語は次のとおりである。
 

有害影響・副作用報告(MDR):FDAに対する有害事象の報告である。

リコール:規制要件を満たさない機器の「排除または修正」を表すために用いられる。
 

修正:(患者モニタリングを含む)製品の変更、調整、再表示、破壊、検査を行うこと。ただし機器をほかの場所へ物理的に排除することはない。
 

排除:機器の修理、変更、調整、再表示、破壊、検査のため、機器を使用場所からほかの場所へ物理的に排除すること。
 

勧告的通知:市販後の行動の必要性に関して顧客に勧告する通知である。
有害事象の報告またはその他タイプの市販後活動実行の必要性がある場合、メーカーが米国で取らなければならない行動は、連邦規則集によって網羅されている。主要なものを以下に示す。
・   21 CFR パート 7:リコール
・   21 CFR パート 803:有害影響・副作用報告
・   21 CFR パート 806:医療機器;修正および排除報告

MDR
米国の基本的な有害事象報告要件は、メーカーが販売した機器の1つが死亡または重篤な傷害を引き起こしたか、あるいはその一因となった可能性がある、または誤作動があり、かつその誤作動が再発した場合に死亡または重篤な傷害を引き起こす、またはその一因となる可能性があることを合理的に示唆する情報をメーカーが知るところとなったときに報告が必要であるというものである。
この「知るところとなった」とは、メーカーのいずれかの従業員が任意の情報源から報告すべき事象を知ったということを意味する。「誤作動」とは、機器がその性能仕様を満たさない、または意図されたとおり動作しない不具合をいう。誤作動はそれらが死亡または重篤な傷害につながらないと考えられる場合、報告対象とならない。

メーカーは指定の形式(フォームFDA 3500A)を用いて報告しなければならないが、来年あたりにオンライン報告が紙のシステムに代わることが見込まれている。FDA有害影響・副作用報告に関するガイドラインを参照のこと。

リコール
「リコール」という用語が米国医療機器の市販後活動で使用される場合、単に製品を物理的に取り除いてメーカーの所在地に戻すことだけを意味するのではなく、さらに現場および現場外での変更、調整、再表示、検査、破壊を含んでいる。
FDAの規制するあらゆる製品の自主的な回収に適用される一般要件は、21 CFRパート7に定められている。修正と排除の報告に関する機器別の要求は、21 CFRパート806に含まれている。たとえば、機器によって引き起こされる健康へのリスクを軽減するために措置を採った場合、メーカーはその機器の修正または排除をFDAに報告することが必要とされる。

FDAがリコールについて通知を受けると、リコールされる製品による健康被害の相対的程度を示すためにクラスI、II、III(クラスIが最高リスクを表す)のいずれかとしてそれを分類する。FDAは、メーカーがリコールの次の要素に対応するリコール戦略を確立し、それをFDAと共有することを推奨している。
リコールの深度:危険の度合い、販売網においてリコールが広がるレベルによる。
公衆への警告:公衆への警告は、リコールされている製品に健康への重大な危険があることを公衆に警告することを目的としている。これはリコールされた製品の使用を防ぐほかの手段が不十分である緊急事態向けに確保されている。
検査有効性:検査有効性の目的は、(指定されたリコール深度の)すべての荷受人がリコールに関する通知を受け取り、適切な措置を採ったことを確認することを目的としている。


米国代理人
企業は、自社の医療機器を初めて米国市場で発売してから30日以内に、米国代理人を指定する必要がある。

米国代理人は、非米国籍メーカーとの連絡においてFDAを補助する責任を負う米国に拠点を置く人物であり、その企業が米国に輸出する製品または輸出を申し出た製品について質問に回答したり、FDAによる会社のQS検査のスケジューリングを補助したりする。FDAは、米国代理人に対して有害影響・副作用報告の規則に基づく有害事象の報告、または510(k)あるいはPMAの提出を要求しない。

時に非米国籍のメーカーは、たとえば米国代理人など米国に拠点を置く人物または組織のみが510(k)およびPMAを提出できると誤解していることがある。これは誤った認識である。510(k)とPMAは、誰がどの国から提出してもよい。ただし、メーカーは申請の「所有者」として正しい組織が認識されるよう慎重に確約する必要がある。これは許可後に変更できないためである。


まとめ
分類は、クラスI、クラスII、クラスIIIの医療機器の間で大きな違いがあるため、新しい医療機器が米国市場で販売されるまでに伴う一般的な費用と時間を理解する鍵である。機器の意図されている用途がどのようにこれらの違いに影響を及ぼすかを理解することは、費用対効果に優れた規制戦略の構築において重要である。既述のとおり、FDAウェブサイトは米国での機器の販売を検討している企業にとって貴重なリソースであり、包括的なガイダンスおよびトレーニング資料が提供されている。
 
<著者>

ロジャー・グレーは、Donawa Consulting社の品質および規制部長であり、企業の欧州認定代理人のポートフォリオを管理することに加え、医療技術関連の顧客が欧州と米国の両方で販売許可を取得するためのサポートを担っている。

機器産業で25年以上にわたる経験を有し、医療機器指令作成の初期段階に携わった。機械工学理学士。

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