歪ゲージ技術のメリット

最終的な利益におけるメリット

競争が激しい市場において、医療機器メーカーとその関連設計および技術者は、競争上のビジネスの優位性を達成するためにカスタム歪ゲージ検知技術を完成品の設計に組み入れようとしている。そのような技術の能力、精度、および耐用年数の延長は、これら用途の現場で立証されている。システムの全体的性能における顧客満足度の向上、設備の診断能力向上、人件費の減少(現場故障の減少による)、および患者介護の品質向上といったその他のメリットもあり、これらすべてが会社の最終的な利益に価値を付加する。歪ゲージ技術がOEMの中で技術的な「成功の秘訣」と呼ばれているのもうなずける。

歪ゲージ技術の利点を真に理解するためには、最初に歪ゲージ自体の構造と操作を理解することが重要である。本記事は、歪ゲージ技術の概要と、医療機器および設備製造におけるその実際の応用について説明し、さらにカスタム歪ゲージ技術が医療機器設計に取り入れられる典型的なプロセスについて説明すると共に、うまく技術を取り入れたことで実現した装置改良のいくつかの例を挙げる。

 

 

歪ゲージ技術を理解する

歪ゲージは通常非常に微小で正確な機械的歪を測定する。したがって、抵抗における変化もまた非常に微小であるため、直接オーム計で測定することはできない。このため、抵抗における変化の正確な検出が可能な測定システムには歪ゲージを含める必要がある。これを行うためには、ホイートストンブリッジ回路を作成しなければならない。

 

カスタム歪ゲージ技術は、マンモグラフィシステムでも使われている。

ホイートストンブリッジシステムの最初のコンポーネントは歪ゲージ自体によって形成される。それが機械的な歪を電気抵抗の変化に変換する。物理的な意味で、歪ゲージと測定回路は共に受動素子である。次に各歪ゲージは、ホイートストンブリッジ回路に形成された抵抗値の等しい2つの部分から成る平衡ブリッジ中に配線される。(HBMはホイートストンブリッジを完成するために固定抵抗器を必要とする、1/4および1/5ブリッジ構成でゲージを構成している。) ブリッジの構成にかかわらず、回路を励起させるためにエネルギーをゲージに通過させなければならない。回路には有用な信号を取得するための入力エネルギー源が必要である。この補助エネルギーは別のソースから得られる。 定電圧が最も一般的に使用されるが、定電流電源の使用も可能である。

 

歪によって引き起こされた歪ゲージ抵抗に変化があり、僅かでも変化が検出されると、ブリッジ回路は対称性を失い、平衡が失われる。ブリッジの非平衡性の状態に比例するブリッジ出力電圧が取得される。平衡のとれた抵抗の値に変化が全くなければ、電気出力はゼロになる。歪ゲージは平均で1/10,000マイクロ歪を測定でき、これは10フィートの室内の反対側における1dBの振動を検出できる。したがって、さまざま用途における測定の可能性は、ほぼ文字通り無限である。表示用計器やモニタ用コンピュータと互換性があるレベルまでブリッジ出力電圧を上げるために測定プロセスに増幅器を含める必要がある。増幅器には電圧におけるブリッジ出力に比例する出力を与える設計のものがある。

 

医療機器における歪ゲージ技術

設計技術者が歪ゲージ技術を医療機器の設計に組み入れるプロセスは、非常に専門的な場合がある。実施は往々にして産業または政府の規制を受けることがあり、そのいずれも最終的な設計要件に直接的な影響を与える可能性がある。

 

HBMでは、この技術の働きに関する技術的な説明と、該当する規制規格についての顧客討論の後、初期プロトタイプのセンサ設計コンセプトが作られる。このプロセスには、様々な形状、穴、切り欠き、抵抗、ねじ山、およびその他オプションを備えた、意図している製品性能を実現するための詳細な適用解析と、最良のゲージタイプに関する推奨が含まれる。有限要素解析とその他高度な構造モニタリング、および技術設計ツールを使用して、プロトタイプ上における歪ゲージの最適な位置が特定される。そして、ゲージは特定の運用条件下でプロトタイプに組み込まれる。このプロセスの一部として、設計者は適用される荷重下での特定の偏向を許容するために意図的に構造部品を弱め、部品が実際の使用状態の構造的挙動の特性を模擬できるようにする。その後、完全かつ正確で再現可能な測定を実行できるように較正かつ調整される。業界基準に従い、ガイドラインの範囲内でこれら部品の社内テストを完了する必要もある。うまくプロトタイプが構築され、テストされ、顧客がそれを受け入れると、生産に送られる。

医療機器メーカーは、ゲージのプロトタイプ部品から完成品センサを自社製造することを選ぶかもしれない。しかし、歪ゲージメーカーが持つ専門技術という戦略的メリットで、顧客は製造されるセンサの品質と均質性において完全な保証を得ることができる。当初のプロトタイプと同じ厳しい社内規格に従い、各センサは検査が行われ、そしてサプライヤは、装置製造スケジュールに間に合うように重要なコンポーネントの精度と信頼性、およびその適時の配送を約束する。この自社生産のリスク緩和が最終的に機器メーカーにとって貴重な時間、費用、およびリソースの節約につながる。

 

カスタム歪ゲージ技術は、高精度ロボット手術やマンモグラフィシステムのポジショニングから、患者用体重計の荷重配分やポンプ圧、流量測定まで、重要な医療用途とそれほど重要でない医療用途の両方で使用される。HBMによって開発された数百の成功している歪ゲージ技術利用のうち、いくつかの一般的な例をここで紹介する。

 

非侵襲性医療画像および診断設備

CTスキャンは、再現可能なテーブルポジショニング、等しい患者荷重配分、CTスキャン画像装置の正確な移動を必要とする。高精度な画像機能を実行する一方で、スキャンチューブ内に配置された患者の過剰移動を防ぐためには精度が要求される。この環境において、多軸歪ゲージ部分組立品の導入は、テーブルの滑らかで一貫した移動とポジショニングを確実に行い、同時に荷重配分を調整するために効果的な手段であることが証明されている。歪ゲージ技術の適切な導入によって形成されるこれらの設計向上は、より正確な医療の画像診断装置の製造を容易にしている。

 

医療用輸液ポンプに接続される静脈内投薬の流体流動を監視・制御ができる歪ゲージ。

非侵襲性医療画像処理診断ツールとして、胸部腫瘍および関連症状の検出に医学界で最も一般的に使用されている設備の1つがマンモグラフィ装置である。このタイプの用途向けに、医療機器OEMは画像を取得しようとする際に装置が患者に適用する物理的な力の量をモニタリングする手段を必要とする。

提案される顧客向けソリューションは、可能な限り高い画像解像度を可能にする一方で、患者の位置と快適さを保ち、装置が移動し過ぎないようにする必要があった。この用途の課題は、冗長な多軸センサの組み込みと、二軸および三軸両方の歪ゲージ力量センサの使用によって解決された。センサはマンモグラフィ装置の上下クランプ上に取り付けられ、平らなアイテムスケールを形成して装置の屈曲作用を監視し、機械的ストッパが過度な移動と測定冗長性を防止するために取り入れられた。その結果、OEMはより正確なポジショニング、より優れた患者の快適性、向上された画像解像度を提供するマンモグラフィ装置の設計改良を導入することができた。

HBM歪ゲージ技術のその他医療機器ポジショニングおよび移動の成功例には、手術台、カイロプラクティックベッド、歯科椅子などが含まれる。

患者の荷重配分

電動リフトシステムは、患者をベッドから車椅子または車輪付き担架に移動させたり、肺炎や圧迫潰瘍の形成可能性を最小限にするために患者の向きを変えたりするための一般的な手段である。リフトシステムは患者の枕元に取り付けられたハンドル装置を含み、必要に応じてハンドルを引くと、電動操作が起動される。このカスタム応用の要件に関して、大手医療機器OEMが、電動の持ち上げ動作時の適切な荷重配分、重心、速度、一貫性を監視するためのよりよい手段を探してHBMにアプローチしてきた。リフトシステムのベッドハンドル内にカスタム仕様の歪ゲージ力量検出アセンブリを組み込むことにより、このOEMはシステムの移動速度のより良いコントロールを達成することができた。比例する量の力をハンドルに加えることによって、医療従事者が使いやすい方法で装置のリフト速度に影響を与える。

表1:  典型的なホイートストンブリッジ回路

小児科、動物用医薬、家庭用健康管理および医薬品用途に必要とされるものなどの医用秤アッセンブリは、すべて成功裏にカスタム歪ゲージ技術を組み込んだ医療OEM用途の例である。このタイプの非常に多様な要件は、ナノストレインまたはその他の値から1gの何分の1かを測定することができる部分組立品から、最大500lbfを測定できる秤量システムまでさまざまである。HBMで開発されたOEM医用測定アプリケーションの最近の成功例は、乳児用体重計の金属板へのロードセル組み込みである。HBMが部分組立品を製造し、顧客はただトッププレートを提供して体重計全体を形成した。

ロボット手術設備

アジア太平洋の医学界における最近の傾向は、整形外科向けロボット法の採用である。このタイプの応用で、医師は現場での手術手順と同じレベルの精度と正確性を維持しながら遠隔操作で患者に手術を行う。新しいロボット手術用機器の需要と足並みをそろえるため、主要な医療機器OEMは、遠隔による股関節手術を行うとき、正確に力の深さとドリルビットの回転力の両方を測定できなければならない。メーカーは、ドリルビットの再現可能かつ正確なポジショニングを維持しながら、x軸、y軸、z軸上でどの程度の深さまで骨の中に穴をあけるかを正確に評価する必要がある。

この場面でのポジショニングとは、回転トルクの測定値を示す、1インチの数万分の1の製造精度要件でのドリルの出し入れ時のひねりの動作を指す。これらの非常に困難な応用要件に対応するため、HBMは、圧縮モードと緊張モードの両方で一連の多軸カスタム歪ゲージセンサの部分組立品を設計・製造し、下方向および上方向への力と動作を測定するようにした。 別の歪ゲージセンサは、全たわみとドリル動作の一貫性を測定するために垂直な構成で取り付けられ、手術台上の患者のポジショニングを確約するようにしたものもある。

医療用輸液ポンプ

医療用輸液ポンプに接続される静脈内投薬の流体流動を監視・制御ができる歪ゲージ。

あるOEMは、チューブクランプで受けて最終的に医療用輸液ポンプに接続される静脈内投薬の流体流動を監視・制御するための歪ゲージ開発のため、HBMにアプローチしてきた。この装置の設計は、流体そのものと接触せずに、一定の流体送達を可能にする必要があった。この用途のため、HBMは刃形の構成を形成するように配置され、戦略的に弱められた特殊な1.5lbf歪ゲージセンサアッセンブリを設計・開発した。その刃形によってこのアッセンブリは液体が流動を停止するときゼロに戻る、完全なばねの挙動を模擬した。センサはポンプとチューブクランプのいくつかの重要な箇所に適用され、デバイスが流体の重量を測定できるだけでなく、流体喪失の増加や空のバッグを検出し、交換の必要性およびチューブラインのもつれや静脈閉塞などの外部要因によって引き起こされる連続した流れのあらゆる中断可能性を示すことができるようにした。病院および通院患者の介護要件の両方を満たす、静脈麻酔やペインマネジメント療法、輸血設備向けの液体を監視・制御する費用対効果に優れた手段として、この独自技術の利用は様々な形式で多くのポンプOEMで採用されている。

 

終わりに

カスタム歪ゲージ技術は、OEM医療機器および設備の応用に大きなメリットを提供し、そして最終的に時間、コスト、リソースを節約し、患者介護の総合的な品質を向上を実現する設計と製造の促進に利用することができる。手頃で比較的シンプルな設計の歪ゲージは、さまざまな非侵襲性および低侵襲性のデバイス設計へのシームレスな統合につながる高い精度と再現可能性を提供する。歪ゲージは多様な方法で特定の顧客の測定要件を満たすように変更できるため、産業におけるこの技術の利用増加が促進される。

 

執筆者

Robert Chevalier

is Director of Medical Sensor Sales, HBM, Inc.,

19 Bartlett Street

Marlboro, MA 01752-3014, USA

tel. +1 800 578 4260

e-mail: info@usa.hbm.com

www.hbm.com

 

Molly Chamberlin

is President and Founder, Embassy Global PR & Marketing
Communications LLC,

P.O. Box 105, Orchard Park, NY 14127-0105, USA

tel. +1 716 866 3744

e-mail: mchamberlin@embassyglobalpr.com

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本記事はEuropean Medical Device Technology, March 2011, Volume 2, No. 3に掲載されました。

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