医療機器臨床試験の考察:医療機器産業研究所

MDSI医療機器は、医薬品の開発と異なり、既存の医療機器に対する医療現場(医師)からの改良・改善への提案により開発されていくケースが少なくない。しかしながら、我が国における臨床試験の承認プロセスのあり方や施設整備は、市販前臨床試験に重きがおかれている。今後の医療機器の臨床試験のあり方を論ずる上で、医療機器産業研究所の主任研究員である中野壮陛氏がまとめた「米国の医療機器臨床試験の現状分析」が参考になる。このようなデータに裏打ちされた結果をベースに、今後の日本の医療機器の臨床試験に関する議論の高まりが期待される。 中野主任研究員は、米国の国立衛生研究所が中心となり運営している臨床試験を登録・公開しているサイト ClinicalTrials.govに登録された企業主導で実施された医療機器の臨床試験を細かく分析。このサイトは、174カ国105330例を掲載しているが、中野氏は2007年10月1日から2010年9月30日の3年間に登録された1978 件のデータを検証した。 その結果、臨床試験の実施国としては米国が55.8%と最も多く集中度が高いことがわかったが、その内、医療機器の国際共同試験は医薬品の半数程度の20.2%のみということが判明し、「医療機器(の臨床試験)を医薬品と同じ議論で引っ張り、国際共同治験を推進する立場が正しいとは限らないかもしれない」と中野氏は語る。医療機器の臨床試験は、医師の手技に関する習熟度に依存し学習曲線が働くこと、また医薬品の臨床試験では通常あまり行なわれることのないプロトコル変更が医療機器の場合はよく行なわれており、これらの点が医薬品に比べて医療機器の国際共同治験を困難なものにしているのではないかと中野研究員は推察する。 また、医療機器の臨床試験において PhaseIV(承認・市販後に行われる臨床試験)が39.7%と最も多いことが判明した。これは、医療機器の開発が改良・改善によるものが多いことを考えると妥当な結果だが、日本における臨床試験施設整備の検討は、「市販前臨床試験に重きをおいた議論となっており、市販後臨床試験のあり方まで議論が及んでいないことは今後の医療機器開発を考えた場合の懸念事項の一つとなりうる」と中野氏は語る。 一方、試験デザインにおいては、医薬品と大きく異なる方法で実施されていることが明らかとなり、「医療機器特有の考え方を整理する必要がある」と中野氏は語る。例えば、新薬を作る場合、プラセボを対照とした比較試験が半数以上を占め、新薬を投薬する医師とされる側の患者の両者に先入観をもたせないため、どちらの薬を投与されたかわからないダブルブラインド(二重盲検)と、ランダム化がスタンダードになっているが、医療機器の場合、薬と違い機種の違いなどが目に見えて医師・患者にわかってしまうこともあり、ランダム化二重盲検の割合が低く「非常に対照的な結果」(中野氏)が明らかとなった。医療機器の特性に応じた臨床試験デザインの考え方の整理を今後活発に議論してくことが重要ではないかと中野氏は語る。 さらに、日本では臨床試験の実施拠点を作ろうという動きがあるが,アメリカでは全国津々浦々で色々な医療機関で臨床試験を多くやっていることも判明。「拠点病院は過渡的な臨床試験の質をあげるには必要だが、もっと多くの医療機関で同時にやれることが企業にとっては意味がある」と中野氏は語る。こうした点を念頭に入れ、拠点病院以外でも臨床試験ができる体制の構築・マニュアルの作成が重要と指摘している。 財団法人医療機器センター附属 医療機器産業研究所では、医療機器産業の発展に影響を及ぼす諸課題・内外環境の分析・研究を行い、その研究成果をリサーチペーパーシリーズとして公表している。今回の中野氏のリサーチペーパーのサマリー版は医療機器産業研究所のHPで閲覧できるが、完全版は10月7日に研究所が主催する研究会で無料進呈される。参加希望者は医療機器産業研究所のHPよりお申し込み下さい。

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