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C区分の保険収載を考える:医療機器産業研究所

study2医療機器産業研究所は、革新的医療機器・材料のイノベーション評価とされるC区分の保険収載に関する第2回医療機器産業研究会を今月27日に開催した。 デバイス・ラグの解決が急がれる中、今まで薬事承認プロセスに関する問題提起は多くされてきたが、医療機器の開発において大きなインセンティブとなる保険収載について研究会参加者と産官学の代表者の間で活発な議論がおこなわれたのは初めてのこと。 まず基調講演では、中央社会保険医療協議会(中医協)会長として実際に診療報酬改定に携わる学習院大学経済学部の遠藤久夫教授が、マクロ経済学の視点から現在の我が国の医療報酬制度を考察。先進国の中でも、日本は物価を調整した総医療費の対GDP比が2006年時点で8.1%(米国は15.8%)と低く、1980年時点(6.5%)と比較しても上昇率は1.6%と米国の6.8%に比べて「かなり低水準だ」と語り、我が国の医療費が対国民所得比で上昇するたびに抑制策が取られてきた状況を指摘。また今後、医療費は増やすべきだが、「財源を公費、保険料、あるいは患者自己負担など何に見いだすかが最大の課題」と語った。

独立行政法人国立国際医療研究センター・放射線科の待鳥詔洋氏は、厚生労働省保険局医療課で平成20年・22年に診療報酬改定の実務を担当した経験をベースに、C区分の算定方式のルールと算定プロセス・審査の流れを解説し、さらには臨床現場の視点から、新規医療材料の評価を担う保健医療材料専門組織の観点から出されている意見についても言及。医療材料の適正な評価が行われるように評価区分の明確化を検討する必要性や、複数の医療材料を組み合わせてセットにすること、先進医療制度(高度医療)の活用なども検討に値すると語った。

今回の研究会は、財団法人医療機器センターが国内初の医療機器産業に特化したシンクタンクとして昨年4月に設立した医療機器産業研究所が主催したもの。研究所がリサーチペーパーを発行するたびに、そのテーマをもとに研究会を開き産業戦略を検討し、政策提言をしている。

第2回となる今回の研究会では、主任研究員の中野壮陛氏が2004年4月からの2009年12月までの間、中医協にてC 区分として保険適用がされた品目の企業に対し保険収載プロセスに関するアンケート調査をおこない、その結果を分析した。2006−7年と比較すると、2008−2009年は、決定案通知日から保険適用開始までの平均所要期間が半分以下の1.5ヶ月に短縮され、希望書提出日からみても保険適用開始まで1.7ヶ月短縮され6.1ヶ月と改善されていることがわかった。しかしながら、事前相談期間を含むとトータルで約1ヶ月多い13ヶ月が費やされており、企業の担当者の現場感覚としては負担増となり、フラストレーションがたまっている可能性がある」(中野氏)という。また、材料価格を決定する価格算定方式や補正加算に関しても、決定内容がメーカー希望と一致しなかったと回答したのが全体の約9割にものぼり、行政からの通知内容に決定根拠を盛り込むことや、ガイドラインやQ&A資料の作成が必要ではないかと中野氏は語った。 study_2

また、アボットジャパン株式会社ガバメント・アフェアーズの田村誠ヴァイスプレジデントは、画期的な医療機器の評価においては、外国平均価格倍率(上限1.5倍)にとらわれず、「思い切った評価」を期待すると語り、マイナーな改善・改良の医療機器の評価については、「償還価格としてプレミアムは少なくても、出来る限り異なる機能区分の創設を」と訴えた。特に新医薬品の保険収載方法が銘柄別(約1万7千品目)でおこなわれるのに比べ、約30万品目ある特定保健医療材料(医療機器)の機能区分は約700しかなく、「同一機能区分・同一償還価格の製品は、とかく同等の質と思われやすく、悪貨が良貨を駆逐する可能性すらある」(田村氏)と指摘。

「機能区分が細分化されれば、iPodのように、定価販売を継続することも不可能ではない」と語った。 医薬品との比較では、中野氏も「ライフサイクルが5〜10年の新医薬品は薬事承認と連動しているが、医療機器は保険適用の機会も年に4回のみで、収載期間も圧倒的に長く、収載回数の増加や薬事承認との連動したシームレスな運用ができないものか」と検討を促した。

これらの懸案事項に応える形で、厚生労働省医政局経済課医療機器政策室長の池田千絵子氏は、現行制度の運用で改善可能な要望については、「コミュニケーションを向上させ改善させていきたい」としたが、現行制度を大きく変更しないと対応できない医療機器業界の要望については、「(医療費として)負担する国民にとって、その改革でどれだけのメリット・効果があるのかを具体的に説明しないと負担は求められない」と語った。実際の事務手続きにおいても、メーカー側が加算要求の根拠となる数字をきちんと提出しなかったり、セット品の取り扱いが不明瞭だったり、有害事象について説明不足であるケースなども見られ、材料価格算定のプロセスの遅れがメーカーの対応に原因がある場合もあると説明した。

最後の総合討論の座長を務めた学習院大学経済学部の南部鶴彦教授(医療機器産業研究所運営委員会委員)は、「医療機器業界も資源配分上の有効性をきちんと経済分析する必要がある」と語り、今後はミクロの視点でも医療機器業界の存在意義を説明する必要があると指摘。参加者を含めた討論会では、「第3項先進医療」(高度医療)の活用と安全性確保の両立への課題、保険収載プロセスにおいて、医政局経済課や保険局医療課が、薬事承認審査を司る医薬食品局審査管理課や医薬品医療機器総合機構(PMDA)と連携できないかなどが話し合われた。 医療機器産業研究会は、医療機器産業研究所の研究協力企業を対象としておこなっている。次回は5月に「臨床試験の動向と将来」(仮題)に関する研究会の開催を予定している。

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