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射出成型医療用フィルタ装置の性能を最適化

射出成型医療用フィルタ装置の性能を最適化

ろ過プロセスは静脈注入、透析、輸血などのデバイス応用で非常に重要である。本記事は、濾材からどのようにより高い効率とフローを達成するかを検討する。体外循環における動脈ライン血液フィルタを例として選択し、射出成型医療機器の可能性を例証する。
By: G. Gerdes, Sefar AG, Heiden, Switzerland

Gerdes-1動脈ライン血液フィルタ

動脈ライン血液フィルタは、浄化され、酸素処理され、恒温化された血液が患者にかん流される前の最終的なセキュリティフィルタとして用いられている。動脈フィルタは気泡と微粒子の塞栓を安全に防ぐ。40 μm 以上に要求される濾過効率は ISO15675「心臓血管用インプラントおよび人工心臓弁、心肺バイパスシステム、動脈血液ラインフィルタ」に定義されている。1 段落 4.3.2.「ろ過効率」には、テスト時に、40~100 μm 範囲の濾過効率とテスト結果は、その範囲の粒子を少なくとも平均 80% 除去するフィルタの能力を示すものとする、と記載されている。この性能の達成は、フィルタの圧力損失、流速、プライミング充填量、および血液に接触する異物表面の大きさによって決まる。これらのパラメータは使用される濾布およびその設計によって主に影響を受ける。濾材と設計の正確な選択は、溶血、凝固、炎症を抑え、かん流中の酸素供給と pH 値の制御に役立つ。

現行の動脈濾過用ポリエステル濾材は一般にメッシュ目開き 40 μm、開口率約 25% である。開口とは濾材のフィラメントによって阻害されない濾材の領域であり、フィルタ総面積の%で測定される。当然ながら血液はフィルタの開口を通って循環し、阻害する材料の(異物)表面が上述したような悪影響を引き起こす。

動脈フィルタのパラメータを改善する基礎的なアプローチは、濾布の開口を増加させることである。しかし同時に、ろ過効率が低下してはならない。これが濾布にメッシュ目開き 40μm の正確かつ狭い分布が必要な理由である。メッシュの目開きを増加させると、開口率は高まるものの、ろ過効率が低下するため、これは実行可能な解決策ではない。図1 にそれぞれ開口率が 25% と 40% の 2 つの同一の 40μm 濾材における開口率の 60% 増加を示す。

図1:開口率の 60% 増加。40μm 濾材において開口率が 25%(右)の場合と、 40% の 場合(左)。
図1:開口率の 60% 増加。40μm 濾材において開口率が 25%(右)の場合と、 40% の 場合(左)

濾布を最適化するもう 1 つの基本的な理由は、濾布の表面積の大きさである。 濾布の各編み糸は、長さの πd 倍の異物表面を持つ。たがって、濾布の編縦の横み糸数の多さ(~120cm-1)がデバイスのハウジングと管材料に比べ大きい異物表面をもたらす。 さらに、濾布を通過する人の血液の速度は遅く、そのため滞留と接触時間が長い。内径 9mm のチューブを通過する毎分 6L の血流は、秒速 >1m の速度で移動する。フィルタの表面は100~1000倍大きいため、速度は低下し、血液がフィルタを通過するときの滞留時間はそれに従って増加する。

 

フィルタ効率の基本要件

図2:ISO 15675で要求されている2つの濾布 40μm 以上の範囲での標準的なろ過効率(開口率25%と40%の場合)。
図2:ISO 15675で要求されている2つの濾布 40μm 以上の範囲での標準的なろ過効率(開口率25%と40%の場合

動脈フィルタの最も基本的な要件は、微粒子と空気の塞栓を循環血液からしっかり取り除き、患者の安全確約することである。これらは骨の断片や空気または脂肪の塞栓、血栓、ドラッグアンプルからのガラス破片などから生じることがある。それらは血管の閉塞につながり、さらにその後の臓器不全を引き起こすことがある。このため、ISO15675 は 40μm を超えるマイクロ集合の 80% 以上のろ過効率を要求している。動脈フィルタ用の濾布は開口率の如何にかかわらずこの要件を満たさなければならない。図2 に開口率25%と40% の2つの濾布の 40μm 以上の範囲の標準的なろ過効率を示す。両方の濾布とも 40μm を超えるあらゆる粒径で 80% より高い効率を示している。 動脈経路血液フィルタ、および医療機器全般向けの追加要件が、医療機器指令 93/42/EEC、米国薬局方(USP)、米国連邦政府規則集(CFR)、および ISO10993「医療機器の生物学的評価」に定められている。2 濾材のフィラメントを製造するために使用されるポリマーは21CFRパート177「間接食品添加物、ポリマー」に従う必要がある。3 濾布そのものは USP クラス VI と ISO10993 に従った生体適合性、および低抽出物、低パイロゲン、および溶血レベルに関連する要件を満たす必要がある。

図3:3 つの 40μm 濾布の液体透過性を比較。濾布の開口率 25%(赤の点線)、35%(青の点線)、40% (青の直線)
図3:3 つの 40μm 濾布の液体透過性を比較。濾布の開口率 25%(赤の点線)、35%(青の点線)、40% (青の直線)<クリックで拡大>

性能と圧力損失

高性能で安全な動脈フィルタの構築には濾布の開口率の高さが必須である。図 3 は 3 つの 40μm 濾布の液体透過性を比較している。濾布の開口率はそれぞれ 25%、35%、40% である。流れは開口領域(フィラメント編み糸によって妨げられない領域)でのみ生じるため、1対1.4、1.6 の流動関係がそれぞれ予測される。現今標準的な濾布と比べ、観察されたこれら濾布の性能向上はそれぞれ 40% と 60% の理論上予測値と完全に一致している。 同時に、フィルタの圧力損失は赤血球などの血液成分間の高いずり応力に関連しており、これが溶血につながっている。濾布の圧力損失は  フローに関する実験データから x 軸と y 軸を入れ替えることによって計算することができる。毎分 6L のフローでは、開口率 25% と比べ、開口率 35% と 40% は濾布の圧力損失が 29% と 37% に減少されると上記のデータから計算される。

プライミング充填量の低減

空気塞栓を防ぐため、システムを患者に接続する前に、人工心肺装置のすべてのコンポーネントに特定のプライミング充填液を充填する必要がある。その後の血液希釈は溶血の危険を増大させる。溶血は赤血球の変形能低下により引き起こされる。また、患者への酸素供給も減少する。プライミング充填量を少なくすることで、これらの悪影響が軽減される。 濾布は射出成型設計者に動脈フィルタのサイズを減少する 2 つの機会を提供する。高い開口率を持つ濾布を選ぶことで、濾布の表面を減少することができる。フィルタの開口領域ではなく、総フィルタ表面だけが減少するため(図 4)、フローと圧力損失は影響を受けない。結果として、より小型のデバイスを設計することが可能になる。 さらに、通常動脈フィルタの濾布は、より大きいフィルタ表面でより小さいデバイスを実現するために折りひだがつけられる。標準のひだのパターンに比べ、円形の構成で異なる半径のひだを付けることで、1 ボリューム当たりより多くのひだを達成することができる。フィルタ表面間に空間を維持することによって、フィルタエレメントのボリュームがかなり減少される。高い開口率の濾布を選び、インテリジェントなひだのパターンを使用することで、充填量と体外の血液容量を大幅に減少することができる。

異物表面領域

人の血液が異物表面と接触するとき、凝固が引き起こされ、血栓の形成が開始される。さらに、不特定の免疫反応も開始される。体外循環の間、これら両方の悪影響を制御する必要がある。高精度モノフィラメント織布は本来、不織布やメンブレン、マルチフィラメント織布と比べ、小さい異物表面領域を持っているため、このパラメータが重要である濾過用途に使用される。また、異物表面の大きさは、濾布の表面を最小とすることによって減少できる。標準の濾布をより開口率が高い濾布で代替することで、異物表面を 30% 以上の減少することができる。

 

図4:40μm 濾材において、フィルタの開口領域に影響なく総フィルタ表面だけが37%減少。開口率が 25%(右)と 40% の 場合(左)
図4:40μm 濾材において、フィルタの開口領域に影響なく総フィルタ表面だけが37%減少。開口率が 25%(右)と 40% の 場合(左)

また、フィルタの異物表面と血液の接触の好ましくない影響は、濾布の血液適合性を高めることで低減される。これは往々にしてへパリンやホスホリルコリン、ブラシ様ポリエトキシレートなどの物質でデバイス全体を浸漬コーティングすることにより達成される。しかし、この手順はコーティング表面が不均一になることがある。また、このように適用されたコーティングは、フィラメント間に「窓」を形成することによって、フィルタの一部を閉じてしまうことがある。さらに、コーティングと乾燥の 2 つの製造ステップが追加されるため、全体のリードタイムと製造コストが増加する。 変換とポッティングを行う前に、マザーロールの仕上げ中に類似の物質で織物表面をコーティングすれば制御がより容易になり、追加の製造ステップを必要とせずに、完全に均一な表面を得ることができる。 この方法によって、低コストかつ完全な均一性で、バイオ吸着、低ウェット摩擦、反血栓性の性質を導入することが可能である。

商業的利点

高開口率の濾布は、ずっと小型でより高性能の動脈ライン血液フィルタを設計する機会を提供する。機能的向上が数々の商業的利点をもたらす。重要である全体的な材料消費、生産リードタイム、およびパッケージと輸送コストの減少が達成される。さらに、ほかのコンポーネントの変更をまったく必要とせず、基本的なポリマーに変わりがない場合、検証コストを最小限に抑えることができる。

あらゆるフィルタの設計オプション

動脈フィルタの理想的な設計は、濾過効率と流速間のトレードオフという意味を含む。この矛盾に対する鍵は、開口率と濾布の設計にある。ここで設計の最適化に関する数々の可能性を提示した。また動脈フィルタの商業的要素はあらゆる医療ろ過装置の設計に有効である。高開口率の濾過材はより高性能で、より小型の装置を実現する。

 

参考文献

1. ISO 15675:2009, Cardiovascular Implants and Artificial Organs, Cardiopulmonary Bypass Systems, Arterial Blood Line Filters, www.iso.org. 2. ISO 10993, Biological Evaluation of Medical Devices, Parts 1–20, www.iso.org. 3. 21 CFR, Part 177, Indirect Food Additives, Polymers, www.fda.gov. Gerd Gerdes, PhD, is Key Account Manager at Sefar AG, Hinterbissaustrasse 12, CH-9410 Heiden, Switzerland tel. +41 71 898 5839 e-mail: gerd.gerdes@sefar.ch www.sefar.com

本記事の初出はEuropean Medical Device Technology, 2010年11月/12月号

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