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改定版・医療機器臨床試験規格における抜本的改革

改定版・医療機器臨床試験規格における抜本的改革

医療機器臨床試験の実施を計画しているメーカーは、医療機器臨床試験(ISO/FDIS14155:2010)の最終国際規格案(FDIS)を認識すべきである。

 

規格の重要性

Doonowa_mainEN ISO 14155:2003 人間対象の医療機器の臨床試験に関する品質規格は、欧州整合規格である。メーカーは、医療機器指令で詳細に定められている臨床試験に関する要件への準拠性を示すためにこの規格を使用することができる。規格の第一部は一般要求事項を定めており、第二部は臨床試験計画(CIP)の内容について説明している。規格のこのバージョンにはタイトル、形式、内容にわたる抜本的な改革がなされている。現在、国際標準化機構(ISO)の標準化団体メンバーによる票決過程にある。

読者にとっての重要性は、これが採用されると欧州の整合規格となり、さらに米国、日本、諸外国での医療機器臨床試験実施の優先的な規格となることが運命付けられているという事実である。これは、全般的に認識されている現行版に対する改良、規制当局による幅広い承認見込み、および新たに改定された能動体内埋め込み医療機器指令(AIMDD; 90/385/EEC)および医療機器指令(MDD; 93/42/EEC)における臨床試験要件の整合性のためである。

改定の概要

改定された規格には、「人間対象の医療機器の臨床試験―臨床試験実施に関する基準」という新しいタイトルが付けられ、国際的な臨床試験実施に関する基準およびガイドラインとのより緊密な関係を反映している。第二部臨床試験計画が規範的付録として規格に組み入れられ、単一文書を構成している。また、旧版より約 2 倍の長さとなっている。15 節が 9 節になり、4 つの付録が 8 つになっている。8 つの付録は 2 つの規範的付録を含んでおり、その 1 つが臨床試験計画向け、もう 1 つが治験薬概要書(IB)向けである。6 つの参考付録は、症例記録表、臨床試験報告書、必須臨床試験書類、有害事象分類ツリー、MDD との関係、および AIMDD との関係を含んでいる。

規格の範囲は改定・拡大された。ISO14155 は、規制目的で医療機器の安全性または性能を評価するために人間対象で実施される臨床試験の設計、実施、記録、報告についての臨床試験実施に関する基準に対応していると述べている。また、規格で説明する原則はほかのすべての臨床試験にも適用され、かつ臨床試験の本質と国家規制の要件を考慮して、できる限り準拠されるべきであるとも述べている。つまり、この規格は規制目的の臨床試験データ生成に臨床試験が必要とされるときだけでなく、市場後調査やマーケティング目的などほかの理由で試験を実施するときにも使用されるべきということである。

改定された規格の節の一部には、臨床試験の正当化と倫理的問題など、現行版と同じタイトルが付けられているが、規格は臨床試験計画、臨床試験の実施、臨床試験の中断、中止、終了、スポンサーの責任、治験責任医師の責任に関する新たにタイトル付けされた節と付録を含めて再編成されている。

いくつかの新たな要件がこの規格に追加されていることに注意する必要があり、これらは主に日米 EU 医薬品規制調和国際会議によって作成された「臨床試験実施に関する基準のガイドライン」の条項に基づいている。 これらの新しい要件は、倫理委員会(EC)、スポンサーの責任、社会的に弱い立場にある被験者に対するインフォームドコンセント、試験のモニタリング、電子データの管理およびリスク管理に関するものである。また、この規格は形式、条項の標題、いくつかの節の修正などの編集上の変更もある。さらに、一部の概念が強化され、拡大されている。全般に、この規格の 2003 年版に比べ、臨床試験の運用に関する指針が多くなっている。

 文面もはるかに明瞭になっており、いくつかの定義は修正されている。また、新たな定義が追加されている部分もある。たとえば、監査、盲検化/遮蔽化、対照薬などである。さらに、臨床試験資料のコントロールもより強調されている。たとえば、A.1.2 条臨床試験計画の識別では、 CIP の各ページにバージョン番号/号数、参照(必要に応じて)、ページ番号と総ページ数を付すように要求している。ページ付番に関しては同じアプローチが B.1.2 条でも IB に対して要求されている。

倫理委員会

改定後の規格第 8.2.2(a) 条では、スポンサーが EC 提出の必要書類を準備する責任を負うことが明確にされている。2003 年版の規格でこれは明確にされていなかった。

もう 1 つの重要な明確化が EC に提出する情報に関して行われている。2003 年版規格の参考付録 B では、科学的利点の評価や臨床試験計画および治験計画提示の正当化など、「倫理委員会に関連する可能性のある」情報がリストアップされていた。改定後の規格第 4.5.2 条「初回 EC 提出」は最小限 EC に提出されるべき特定書類がより明確に提示されている。この情報は、EC が監督する CIP、IB または同等の資料、被験者に提示されるインフォームドコンセントフォームおよびその他書面による資料、被験者募集の手順と広告資料、治験責任医師の CV のコピーを含む。

第 4.5.3 条「EC から得られる情報」では、EC 承認に含まれるべきである情報の種類を説明している。スポンサーは、EC の承認または好意的意見について、その意見が根拠とした資料および修正が特定されている文書を取得しなければならないとしている。これは重要かつ有益な変更である。意見が根拠としている資料を明確に特定できないと、スポンサーまたは治験医師が EC に提出した一部資料に修正を加えており、EC の意見が根拠とした特定の資料のバージョンに関して疑義がある場合、臨床試験資料を監督機関に提出するプロセス中で遅延が生じることがある。

第 4.5.4 条「EC との継続的連絡」では、国家規制、CIP または EC によって必要とされる場合、その中で最も厳格なものに基づいて、EC に提供されなければならない情報を示している。この情報には、重篤な有害事象、逸脱の要求、安全性の概要および逸脱を含む経過報告書、EC によって承認済みのあらゆる資料に対する修正、およびその他の情報が含まれる。読者は提出が必要とされる情報の完全な一覧について規格を参照する必要がある。

スポンサーの責任

スポンサーの責任は大幅に拡大され、第 8 条「スポンサーの責任」で詳細に説明されている。拡大された重要な領域は、臨床試験の実施における品質システムの役割に関する。2003 年版の規格第 8.1 条「スポンサー、全般」では、スポンサーが品質システムの手段で、ISO14155 の第一部、適切な CIP およびその後の修正、あらゆる適切な法的要件に対する治験医師、スポンサー、モニターの準拠性を示す資料を確約する必要があるとだけ規定されている。

改定後の規格第 8.1 条「スポンサーの責任、治験の品質保証および品質管理」は、スポンサーが品質保証と品質管理の原則を臨床試験過程に適用することを要求している。特に、スポンサーは治験品質管理手順を実行し、それを書面で維持しなければならない。この手順の目的は、本規格、CIP、あらゆるその後の修正およびその他一切の適用される規格および規制要件に従って臨床試験が設計、実施、かつモニタされ、データが生成、文書化、記録、報告されることを確約することにある。

重要な新しい要件(既存のスポンサーの責任を明確化したものであるとも考えられる)が、第8.2.2 条「資料および材料の準備」に指定されている。 この条項は、試験の開始に先立って、スポンサーが EC 提出、CIP および IB に必要とされる書類などの資料を準備し、評価、承認、許可を得るため臨床試験を開始するために必要な一切の申請を適切な監督機関に提出することを要求している。

モニタリング活動については、2003 年版の規格においてモニターの責任が別個の条項とされているのに代わり、第 8 条「スポンサーの責任」に適切に含まれている。モニタリング活動は移動されただけではなく、モニターの資格、治験場所の評価、治験開始時の手続き、治験施設の定期的なモニタリング、治験の終了手続き、モニタリング報告に関する要件を定めた複数の従属条項に大きく拡大されている。

安全性の評価および報告

2003 年版の規格第 8.2 条で、スポンサーはすべての有害事象およびすべての機器による悪影響が治験医師に報告され、かつ治験医師によって検討されるように確約しなければならないと定められている。適切な場合、すべての重篤な有害事象およびすべての重大な機器による悪影響が関連当局、EC、および(または)安全監視委員会に報告されなければならない。加えて、スポンサーは臨床試験中、スポンサーに報告されている(多施設)治験で生じた一切の重篤な有害事象およびすべての重大な機器による悪影響について、治験責任医師に書面で通知しなければならない。さらに、この情報は認識されたリスクに基づいて治験医師に送達されなければならないとも規定されている。

第 8.2.5 条「安全性の評価および報告」は、改定後の規格でスポンサーが有害事象の分類と臨床試験進行中の安全評価に責任があると定めている。安全性評価と報告の要件に非常に重要な拡大を行っており、2003 年版の規格で指定されている 2 項目に代わって 8 項目の取るべき行動が記載されている。この条項におけるすべての要件に関する議論は本記事の範囲外であるが、しかしながら、ある重要な活動が機器の欠陥に関する安全性データの新たなカテゴリに関連している。すなわち、第 8.2.5(b) 条で、スポンサーがあらゆる機器の欠陥を検討し、それらが重大な機器の悪影響につながる可能性があるか否かを判断して、書面で記録することが要求されている。機器の欠陥は臨床試験の管理における新しい概念であり、臨床試験に使用される医療機器に関する重要なデータ源に関連する欠落を埋める。

規格の公開

慎重なメーカーは、ISO/FDIS 14155:2010 の可用性、最終規格の公開、規格の欧州整合状況、およびその米国 FDA 認定規格としての承認について情報を取得し続ける必要がある。ISO14155 の改正は医療機器要件の発展における重要なポイントとなり、世界中の医療機器研究の実施に絶大な影響を与えるだろう。

Maria E. Donawa

Donawa Lifescience Consulting, Piazza Albania 10, I-00153 Rome, Italy
Tel. +39 06 578 2665 e-mail: medonawa@donawa.com www.donawa.com Donawa_face
マリア・ドナワ博士
国際規格に詳しい医師、病理学者、薬剤師。米国FDAに勤務後、ドナワ・ライフサイエンス・コンサルティング社を設立し、現在社長を務める。ライフサイエンス関連企業にレギュラトリー・品質に関するフルサポートを提供するヨーロッパCROと国際的なコンサルタント業を営む欧州正式代表者。

 

本記事の初出は、 European Medical Device Technology, 2010年11月/12月号

 

 
 
 
 
 
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