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「医療機器産業の過去と未来」:医療機器産業研究所

「医療機器産業の過去と未来」:医療機器産業研究所

forum_main医療機器産業研究所は、「医療機器産業の過去と未来」と題した第1回医療機器産業研究会を今月7日に開催した。医療機器の研究開発において産官学の連携が求められる中、研究会では各業界の代表者から諸課題と今後の展望について発表がおこなわれ、その後のパネルディスカッションでも活発な意見交換がおこなわれた。

東京女子医科大学・早稲田大学共同大学院の共同先端生命医科学専攻の教授で医療機器産業研究所運営委員会委員長をつとめる笠貫宏氏は、自身の40年にわたる循環器内科の臨床経験をもとに、医師が患者のニーズを適格にとらえて機器の早期導入を要望すれば、申請・承認・保険適応に要する時間の大幅短縮が可能と訴えた。実例として日本での植え込み型除細動器(ICD)の導入が米国FDA(食品医薬品庁)の承認から11年遅れたのに対し、心臓再同期療法(CRT)については、内科・外科による重症心不全の治療戦略を徹底し、臨床データをもとに早期承認を促すことで優先審査に持ち込み、FDA承認より遅れること4年で「両室ペースペーカーシステム」の保険償還が実現したことを紹介。

「承認プロセスの短縮化には医師が患者のニーズを受けとめ、組織的戦略を持ってあたることが重要」と笠貫教授は力説する。また東京女子医大が有する臨床経験と早稲田大の有する理工学や医療に関わる人文社会科学の知識を融合させることで「新しい医療機器のアイディアがどんどん出てくる」(笠貫教授)と話し、共同大学院が展開する医療レギュラトリーサイエンスの重要性も強調した。

今回の研究会は、財団法人医療機器センターが国内初の医療機器産業に特化したシンクタンクとして今年4月に設立した医療機器産業研究所が初の試みとして開催したもの。医療機器業界に従事する約400名が参加した。今後も研究所がリサーチペーパーを発行するたびに、そのテーマをもとに研究会を開き産業戦略を検討し、政策提言をしていくという。第1回の研究会では、主任研究員の中野壮陛氏が1984年からの25年間の市場動向を振り返り、日本の競争力が失われた要因を分析。国策として医療機器産業を国の経済成長を担う基幹産業と位置づけ支援する必要性と、従来の「診断・治療・リハビリ」という医療の概念を、予防と予後の範囲まで発展させ、医療機器周辺関連産業・医療サービス産業・医療生活産業などの育成を図り、包括的ヘルス産業のビジネスを創出することで現在の「ピンチをチャンスへ変えていくことができるだろう」と語った。

また行政からは、経済産業省産業技術環境局研究開発課の研究開発専門職・加藤二子氏がNEDO・産総研などの協力を得て経産省が作成した「技術戦略マップ」をもとに2030年の医療機器産業の予想図を紹介。規制によるイノベーション阻害をはじめとするさまざまな技術開発に伴う現在の障害を克服し、「日本の医療機器が世界を制覇するような姿」を描くため、国民の一人一人の意識改革が必要と語った。技術マップの20年後の姿としては、「病気にならないための予防技術がライフスタイルに溶け込み、病気になっても家にすぐ戻れる同時診断・治療技術や無拘束・超低侵襲の診断・治療技術が普及し、ITによる高品質・低コストな医療の実現している」と予想。

産業としては日本の医療機器の国際競争力と国内自給率が向上し、機器・IT技術・サービスの融合市場が拡大するという。また、昨年9月から今年5月の間に経産省が開催した医療産業研究会では、医療周辺サービスを提供する「医療生活産業」を国が積極的に振興する方向性を打ち出したと語る一方、4年目を迎えた医療機器分野への参入・部材供給の活性化に向けた研究会では、今年新たに医療機器分野への参入方策および部材供給の活性化方策を検討する2つのワーキンググループを設置したと紹介した。 debate

最後に、日本医療機器材工業界産業戦略委員会の三澤裕委員長を座長に日本医療機器産業連合会産業政策会議の原澤栄志議長も加わりスピーカー全員と総合討論がおこなわれ、産業界としても「アカデミアと行政の努力をビジネスとして実を結ばせたい」(三澤氏)「産官学の連携はもちろんのこと、工業系(製造者)も臨床現場の中に入り、顧客イコール患者という認識でやっていきたい。日本市場は縮小していくのでグローバルなビジネス発展を考えていきたい」(原澤氏)などの意見も出された。 医療機器産業研究会では今年12月に「革新的医療機器の保険収載を考える」(仮題)に関する第2回研究会、来年初めには「臨床試験の動向と将来」(仮題)に関する第3回研究会の開催を予定している。

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