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なぜプラスチック製品は不具合を生じるのか

なぜプラスチック製品は不具合を生じるのか

プラスチック製品における不具合は、一般に材料または加工における不良のせいではなく、人為的ミスと誤解によって引き起こされる傾向が強い。本記事では、プラスチックおよび製品の性能に多大な影響を与え得るさまざまな変数について論じる。
By: C. O’Connor, Smithers Rapra, Shawbury, UK

信頼性のための設計 O-Connor-main

プラスチックとその関連加工法の進歩は、材質科学の歴史において驚異的な出来事である。過去たった60年間の間に大規模な開発が行われ、製品設計と製造におけるプラスチックの使用は従来の材料に類を見ない速度で伸びている。幅広い特性が利用可能であるため、プラスチックは今日世界で最も利用されている材料の一つとなっている。現在、設計者や技術者が利用可能なプラスチックの範囲と種類は、高分子産業の歴史におけるこれまでのどんな段階よりも多様である。90以上の汎用プラスチックと約1000の下位汎用 (sub-generic) 改質プラスチックが5万を超える商用グレードで、500以上のメーカーから提供されている。当然、医療機器産業では限られた数の下位汎用材料のみ使用されている。

プラスチック開発と実証された利用法の歴史が短いということは、重要な工学用途について耐用年数と高分子材料の使用中に発生する可能性のある問題を完全に探るために十分な時間がかけられていないことを意味する。ブランドイメージに影響し得る不具合と潜在的な訴訟の問題に対する脆弱性が常に存在してきた。厳しい工学的用途において成功につながるプラスチック設計のポートフォリオが増加するにつれ、この状況は改善されつつある。しかし、材料の性能の新境地を開くような新たな革新的応用にはまだ問題が残っている。

プラスチック製品の信頼性を確約できる設計は、次の重要性の高まりによって極めて重大である。

• 製品信頼性の要求
• 環境問題
• 認定サプライヤとなるための認証
• 品質原価の認識

製品信頼性は最もダメージが大きくなる場合があり、特に不具合が人の傷害や死亡につながったときなどは、数千または数百万ユーロといった和解金や罰金が要求される。訴訟の財政的なコストに加え、重要な従業員が通常の仕事に集中できなくなり、また製品認識、ブランドの信用、メーカーの評判が損なわれる。

早期に不具合を生じるプラスチック製品の数を考慮すると、自然なことながら不良品の所有者がその事実を公にすることを躊躇するため、不具合は十分に報告されていない。顧客の機密保持協定のため不具合の調査は広まらず、そしてこの理由から活動は主に隠密に行われる。結果として、誤りや他者の不運から学べることの潜在的メリットと、研究の優先事項および製品開発における重要な問題を識別することには、まったく生かされていない。

不具合は製品に関する実用面での問題であり、それがもはや機能を達していないことを暗示している。往々にして、機械的応力または歪みに耐える(その結果、機械的エネルギーを保存または吸収する)能力は、使用される製品において最も重要な評価基準である。したがって、通常機械的な不具合は第一の関心事である。また、不具合は魅力的な外観が損なわれたり収縮したりといったことに起因することもある。

製品の不具合を回避するためには、設計過程のすべての段階で商品開発に対する並行した工学的アプローチが存在することが重要である。これはプロジェクトの始まりから最終的な大量生産まで、関わりのある全当事者(工業設計、製品技術者、プラスチック専門家、ツール設計者/技術者、加工業者、販売)が全員の貴重な知識と経験を活用するため継続的にコミュニケーションをとることを確約する。設計の成功に不可欠なのは性能、製造、組み立て、そしてそのパーツの最終用途のすべての要素が考慮されることである。開発に関わる全当事者が製品に信頼性と安全性を構築することに焦点を置く必要がある。

不具合の原因

製品の不具合を減らすためには、設計したプラスチックパーツがなぜ不具合を生じたかに設計過程における全当事者が継続して注目する必要がある。これは、製品設計チームがプラスチック材料の選択、製品設計、加工、特定の材料の欠点と故障モード、および回避法について正しい認識を持っている場合のみ、達成することができる。 プラスチック製品の不具合は通常人為的ミスまたは欠点に関連しており、かつ次の1つ以上に通常関連がある。
• よくない材料の選定または代替
• 設計不良
• 加工不良
• 誤用および乱用

プラスチック製品の不具合発生を減らするための取り組みでは、人為的ミス、プラスチック材料および関連プロセスに関する誤解と無知が原因となるという認識が必要である。通常、材料やプロセスのせいということは少ない。次に、プラスチック設計およびプラスチック故障モードの複雑さについて考察する。

よくない材料の選定または代替

誤った材料選定と、グレード選択から起きる不具合は頻発する問題である。プラスチック材料の選定をうまく行うには、プラスチック材料の特性、特定の材料の制限、および故障モードについて完全に理解することが必要である。良い材料選定には、機械、熱、環境、化学、電気、光学の性質に関する応用要件の慎重なアプローチと熟考が必要である。パーツの寸法と形状に関連した製造の実行可能で効率的な方法など、製造面の要素を評価する必要もある。経済面では、材料費、サイクル時間、パーツ価格を考慮しなければならない。

よくない材料の選定に関する2つのよくある原因は次のとおりである。1つは、材料選定者がプラスチックに関して限られた知識と専門性しか持たず、材料選定プロセスに慣れていないこと。もう1つは、適した材料が指定されたものの使用されなかった場合。材料の代替は、特に製造現場が遠隔地である場合など、顧客が調達品品質仕様書を守れないときによく起こり、往々にして次のような問題に直面する。
• 加工者がより安価な材料で代替する
• 誤ったグレード(誤ったメルトフローインデックス)の材料を使用する
• コポリマーの代わりにモノポリマーを使用する
• 誤った顔料、フィラー、潤滑剤、可塑剤を使用する

設計不良
プラスチック製品の設計に関しては絶対的なルールはない。特に非晶質および半結晶の熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックと様々な加工法の間でいくつかの通則とガイドラインが確立されている。これらは材料サプライヤから容易に取得することができる。

基本ルールは、隅肉、半径、肉厚、肋材、突起、テーパ、穴、抜き勾配、金属インサートの使用、アンダーカツト、穴、ねじ山、収縮、寸法許容誤差に適用される。 また、二次接合および組み立て過程(接着、機械的接合、および接着剤/溶剤接着)に適用される設計ルールは慎重に評価する必要がある。設計者と技術者は、プラスチック材料の多様な範囲と特性のため、材料ごと、および用途ごとに設計基準が変わることを認識していなければならない。

一般的な設計ミスは、突然の形状変化、過度の肉厚、とがった角部、半径の不足、射出の不十分な抜き勾配、肋材と注入ゲートの配置、プラスチックの粘弾性と環境適合性から生じるクリープメカニズムに関する限られた理解に関連している。多くのプラスチックパーツは、尖った角部または半径の不足のため不良となる。尖った角部は応力の集中を生み、局所的に応力と歪みの高いポイントを形成する。プラスチックは切欠き脆性である。応力の集中はひび割れの発生と最終的な破砕を促進し、またツールからの材料のフローと射出を妨げる。多くの不良が、肉厚過多と突然の形状変化に起因する。前提条件は一定の肉厚を維持するということである。これは肉ひけ、空洞、そり、成型応力を最小限に保つ。

設計者と技術者は、プラスチックの粘弾性、クリープ、クリープ破断、応力緩和、疲労メカニズムについて精通していなければならない。 粘塑性材料は、それが弾性の固体と粘性流体の組み合わせであるかのように応力に反応する。非線形の応力 - 歪みの関係が示され、それらの特性は負荷下におかれた時間、温度、環境、適用された応力または歪みのレベルに依存する。粘弾性の一例として、シリーパティ(子供用の玩具として発売されたシリコンポリマーの種類)が挙げられる。素早く引っ張られると、もろくちぎれるが、ゆっくりと引っ張られると材料は延性を示し、ほぼ無制限に伸ばすことができる。材料温度を下げると伸び率が低下して脆くなる。設計者と技術者が次を理解していることが必須である。

• プラスチックは負荷がかかると変形する
• 静的な低応力または歪みに晒されると、ある時点で延性または脆性の変化が生じ、脆性破壊を発生する
• 繰り返しの応力は延性または脆性の変化を引き起こし、低い応力レベルで脆性破壊を発生する
• 応力と歪みの同時作用および特定の化学環境(液体や蒸気)との接触によって、プラスチックのひび割れと脆弱化が早期に開始することがある

また設計不良は、コスト圧力に伴う安全因子の低下、要求の厳しい用途におけるプラスチックの使用、そして設計の限界を適用して時に限界を超えてしまうことがあるような状況にも起因することがある。

加工不良

使用中の不具合の多くは加工不良が原因である。この問題は往々にして材料メーカーが提供する確立済みの加工手順およびガイドラインを無視したことに起因する。この動機は経済的な理由であることが多く、つまりサイクル時間の低減や歩留まり向上を達成する必要性などである。一般的な加工不良は、温度やせん断速度、冷却時間、圧力などの加工における変数に注意を払うことによって克服できる。よくある不良には次のようなものがある。
• 不適切なプロセス設備の使用
• 不均一な肉厚
• ショートショット、気泡、肉ひけ
• 成型前収縮
• そりまたは変形
• 異物汚染
• 空洞、塗装の変色、斜痕
• 劣化(材料の不十分な乾燥、プロセス温度の超過、バレル内滞在時間の超過、せん断加熱、再研磨のしすぎ)
• 部分的に溶解した顆粒などの自己汚染
• 低い材料の均一性、ウエルドライン、スパイダライン
• 分子配向
• 低い、または過度の結晶形成
• 異常な結晶組織
• 不完全なパッキング、スコーチング、ジェッティング、フラッシング
• 複合材料における相の異常な空間およびサイズ分布

プラスチックの故障モード

プラスチックの重要な故障モードを分析するとき、機械、熱、放射、化学、電気のカテゴリに分類することができる(表1)。メカニズムによる故障モードの分類は、しばしば他の分類に1つ以上先行されることはあるものの、機械的不具合が主要なメカニズムであることを示している。

表 1: メカニズムに基づいた故障モードの分類。
機械モード クリープ破断(静的疲労)、切欠きクリープ破断、疲労(繰り返し荷重による緩慢な亀裂進展)、高エネルギー衝撃、損耗、摩耗によるクリープおよび応力緩和、降伏、クレージング脆性破壊によってもたらされた変形と歪み。
サーマルモード 熱疲労劣化:熱酸化寸法の不安定性収縮燃焼添加物抽出
化学モード 溶媒化、膨張、寸法の不安定性、添加物抽出酸化酸誘発性応力腐食割れ加水分解(水、酸またはアルカリ)ハロゲン化反応環境応力割れ生分解
放射モード 光酸化劣化(紫外線)放射線(ガンマ放射線、エックス線)
電気モード 静電気帯電、アーク、トラッキング、電気トリーおよび水トリー
相乗モード 光酸化および熱酸化、温度サイクル、雨による浸食、風で運ばれる粒子、環境における化学元素によりもたらされる風化

プラスチック製品の不具合の大部分は、クリープ、疲労、温度、化学種、紫外線、その他環境要因間の相乗作用の累積的影響が原因である。プラスチックは非常に多機能な材料であるが、やはり制限がある。設計者と技術者にとって、製品不具合の可能性を減少するために、プラスチックの基本的性質、制限、故障モードを理解することは欠かせない。専門知識がないと、正しい材質選定による良い製品設計と不良品との間のきわどい境界線を、いとも簡単に超えてしまうことがなる。プラスチックの特性に影響を及ぼす多くの変数に、とくおに注意を払わなければならない。ごくわずかに見える違いが、プラスチックと製品の性能に劇的な影響を与えることがあるのである。

Dr Chris O’Connor is Director of Consultancy and Litigation Services at Smithers Rapra Technology Ltd Shawbury, Shrewsbury SY4 4NR, UK tel. +44 1939 250 383, e-mail: info@rapra.net www.rapra.net

本記事の初出は、European Medical Device Technology 2010年3月号です。

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