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より優れた表面の構築

より優れた表面の構築

エレクトロスピニングにおける発展は、インプラントへの骨組織の成長を促進するインテリジェントなコーティングを含む、新しいナノファイバベースの構造を提供する事になる。 by R. Stevens Science and Technology Facilities Council, Rutherford Appleton Laboratory, Didcot, UK エレクトロスピニングナノファイバ 元々、小型の人工衛星用スラスタとして構成されたエレクトロスプレーソースのウエハスケール微細加工における専門技術は、医療機器業界に革命的なナノファイバベースの構造と、コーティングを提供するエレクトロスピニングソースを作製するために使用されている。ナノファイバで作られた材料は医療において新たな用途に利用できる特異的な性質を持っており、英国科学技術施設研究会議のマイクロ・ナノ技術センター (MNTC) では科学者らによって様々な分野で研究が行われている。ナノファイバ材料の主な特性は、大きい表面積と多孔性である。これは特に創傷被覆材に有用であり、微小な孔が被覆材の通気を可能にすると同時に、創傷から微生物を遠ざける事ができる。ナノファイバメッシュのもう 1 つの利点は、細胞に構造上の支柱を提供する事により、細胞外マトリックスを模倣して、成長因子、成長抑制剤、そして抗菌薬の貯蔵場所として機能する事である。これは細胞が付着し、分化して、成長するための良い基盤を提供する。細胞はファイバマットの表面上で成長したり、繊維間の空間へと移動したりする事ができる。整形外科においてナノファイバ材料は、ナノコンポジットセメントの生体分子担体として、あるいは金属やプラスチックインプラント上に特殊な段階遊離生物模倣皮膜を形成し、インプラント周囲の新しい支持組織の再生過程をコントロールするために使用可能である。この種のコーティングは、大型・小型の整形外科用インプラントの「一度限りの装着」用セメントレスインプラントの手順につながることが見込まれる。骨組織とインプラントの間で進化する「生きているインターフェース」は、感染の可能性を減少する。従って、修正数の減少につながる。これは生活の質を向上すると同時に、医療サービスにおける負担を減らすために重要である。マットはその固有の構造的強度と組み合わせ、再生医工学、細胞治療、薬物送達を含む再生医療の多くの局面で使用する事ができる。

 

エレクトロスピニングプロセス

図 1 エレクトロスピニングで作られた不織ポリマーナノファイバマット。
図 1 エレクトロスピニングで作られた不織ポリマーナノファイバマット。
 エレクトロスピニングは、おそらく最も汎用的で経済的なポリマーナノファイバの作製法である(図 1)。溶解可能なポリマーのほとんどをこの方法で処理する事ができる。エレクトロスピニングに必要な最も基本的なコンポーネントは、ポンプ、シリンジ、注射針、高圧電路(数 kV)、コントロールされた処理環境、そして繊維のコレクタである。

ナノファイバのエレクトロスピン作製は、選択したポリマーを適切な溶媒と混合してエレクトロスピニング溶液を作る。システムに溶液が入れられ、シリンジの先に液滴が形成される。高電圧が針とコレクタの間で印加され、高電場が形成される。静電力によって液滴が引き伸ばされる。静電力が十分大きくなると表面張力が打ち破られ、伸長した液滴の先端から薄いジェットが生じる。このジェットは溶媒、長いポリマー分子、蓄積電荷またはイオンから構成される。帯電したジェットがコレクタに向かって引っ張られるのに伴い、揮発性の溶媒はジェットから気化する。 これにより、ポリマー分子が相互により近づき、相互に絡み合う機会が増加する。収縮によって静電気帯電密度が増加し、繊維内での反発力が増加する。この力が繊維をその軸に沿って広がらせ、ポリマー分子を相互上で滑らせる。繊維に溶媒がなくなるまでこれが続けられ、乾いた繊維、すなわちナノファイバがコレクタ上に付着する。 ファイバはポリマーの選定によってカスタマイズできるだけではなく、例えば抗菌剤、抗生物質、治療薬などの異なる薬剤を組み込むことによってもカスタマイズする事ができる。これらは、ポリマー溶液に追加するか、ファイバメッシュの上にスプレーするか、あるいは特殊な同心のファイバ中に封入する事が可能である。

 

研究分野

図 2 エレクトロスプレーおよびエレクトロスピニングのアプリケーション用のシリコンノズル 20000 個の一部。
図 2 エレクトロスプレーおよびエレクトロスピニングのアプリケーション用のシリコンノズル 20000 個の一部。

MNTC のエレクトロスピニングチームは、これらファイバを生産するための技術を開発している。チームは特に組織修復と細胞成長用の薬剤を封入するためのシステムの提供に興味を持っており、その結果、いくつかの特殊なエレクトロスピニングソースを開発している。これらソースは、例えば治癒過程の異なる段階をターゲットとして、各セクションに異なるポリマーと薬剤を含む事ができる、多層の同心ファイバを生産するために使用される。整形外科用コーティングについて、研究者はコアのマルチシェルエレクトロスピニングソースを開発しており、この複雑なファイバのコアは骨の成長因子を含み、隣接したシェルまたはコーティングは血管成長因子を、そして外側のシェルは抗菌剤をそれぞれ含む事ができる。選定されたバイオポリマーの厚さと種類は、ファイバの劣化性質を決定付け、それが次に生物活性物質の遊離動態をコントロールする。ファイバ断面の均質性とファイバ内の機能的薬剤の配分を維持するために優れた工程管理が必要である。これにより、抗菌剤で骨組織のインターフェース周辺にある細菌を変性させる事ができる。これは、再生過程をサポートし、最終的に骨基質の細胞産生のための骨成長因子をリリースするのに必要な血管を提供する血管新生を促進する。

 

 

図 3 従来のコバルトクロムインプラント 2 つ、1 つはナノファイバコーティング済み、1 つはコーティングなし。
図 3 従来のコバルトクロムインプラント 2 つ、1 つはナノファイバコーティング済み、1 つはコーティングなし。

エレクトロスピニング業界が直面している 1 つの重大な問題が、生産されるファイバの量である。上述の標準的な単一針の方法では、mg/h 範囲の量しか生産できない。この制限を克服することが現在の活動のもう1つの焦点である。生産速度の大幅な増加を可能にする、導入可能なエレクトロスピニングモジュールの開発作業が進行中である(図 2)。初期のプロトタイプは生産速度を大幅に向上してナノファイバを生産する事ができた。低コストなソース製造のために設計の向上が進められている。これは特に医療、エネルギー、環境セクターで、広い分野の機能性ファイバ、または大量の機能性ファイバを幅広い用途向けに生産することを可能にするだろう。 チームは異なるパートナーと共に、目の疾患、脊椎修復、整形外科用インプラント、そして免疫システム強化に対する細胞に基づいた治療法を開発するための研究プログラムに取り組んでいる。2008 年、整形外科用インプラント改良のための表面工学の研究が Orthopaedics (www.medicalfutures.co.uk [3]) で Medical Futures Translational Research Innovation Award (医療の未来を変える研究革新賞)を受賞した。この賞は上述のインテリジェントなナノファイバコーティングに対して授与された。現在、骨をインプラントに接着する過程はセメントを必要とする。しかし、数年間使用するとセメント付けされたインプラントが感染によって緩んでしまい、矯正外科手術が必要になる事がある。一方で、インプラント上のナノファイバコーティングは細胞が付着し、成長して入り込む自然の生物模倣構造を提供し、セメントが必要なくなる(図 3)。研究者はエレクトロスピニング設備を市販可能にする事を目標に、エレクトロスピニング技術を商業化している。チームは常に新しいコラボレーションと新素材に関するアイデア探究を求めている。 Dr Robert Stevens, Principal Scientist, Science and Technology Facilities Council, Micro and Nanotechnology Centre, Rutherford Appleton Laboratory, Harwell Science and Innovation Campus, Didcot OX11 0QX, UK, tel. +44 1235 445 000, e-mail: bob.stevens@stfc.ac.uk [4] www.stfc.ac.uk [5] Copyright ©2009 Medical Device Technology 本記事は、Medical Device Technology 2009 年9月号に英語で掲載されました。

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