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新時代の神経刺激療法

新時代の神経刺激療法

新時代の神経刺激療法 Rahul Sathe Sathe企業は商品開発戦略とビジネスモデルの見直しにより、神経刺激療法の分野において優位に立てる。 破壊的革新は医療機器産業の歴史を定義付けてきた。新しいデバイスと手順は、何十年にも渡り様々な医療市場で確立されていた医療行為を取って代わっている。 例えば、1930 年代に初の人工膝関節と股関節が開発され、1958 年には初の埋め込み型ペースメーカー、そして1980 年に初の植え込み型除細動器が開発された。 それぞれの革新が治療成果の向上と患者のリスク低下を新たなレベルへと導き、当時の医療水準を高めた。それぞれの主要な市場と臨床的成果を定義付けている特徴は、十分な処置を受けられない患者と市場のニーズを満たすことに焦点を置いた、革新的な製品設計である。 神経刺激療法は数十年前に誕生したが、この産業はここにきて破壊的革新の機が熟し、転換点に到達している。破壊的革新とは往々にしてユーザのニーズ、製品戦略、そしてビジネスモデルを定義し直すことによって生まれる、異なった一連の価値を適用することにより、新たな市場を創設することを意味する。1 これは破壊的技術(市場における優位性を形成する単一の技術・製品を指す語)の生成よりも包括的で持続可能な製品設計に対するアプローチである。 通常市場で優位に立つ企業は、予期せぬ新たな市場空間を形成したり、市場シェアを高めたりすることでそれを可能にしている。神経刺激技術のメーカーは、より優れたユーザインターフェースの設計、有効なデバイス対デバイス通信の組み込み、そして迅速かつ効率的に製品を市場に投入する方法の発見を通して、破壊的革新を達成することができる。 この記事は、神経刺激療法の分野の状況について、市場、臨床、技術の観点から論じると共に、商品開発の機会および破壊的革新が、どのように患者と市場により向上された臨床的価値を生み出せるかについても検討する。 臨床的適応と市場

図 1 主要な神経刺激療法向けのアプリケーションは今後数年間で拡大する可能性がある。

図 1 主要な神経刺激療法向けのアプリケーションは今後数年間で拡大する可能性がある。(画像をクリックして拡大)

神経刺激装置はてんかん、パーキンソン病、うつ病、慢性疼痛などの状態を管理するのに役立つ能動型埋め込み機器である。この装置は密閉されたチタンケースの中に封入された先進的電子装置を含み、低レベルの電気を神経系に印加して、脳と周辺の細胞組織または器官の間の神経信号をブロックする。 神経刺激療法はこれまで患者治療の切り札となってきた。従来薬剤や物理療法が防御の第一線であり、難治性疾患の治療には神経外科手術が次の最良の選択である。神経の病気には比較的高確率で、難治性疾患が発生する。例えば、30~40% のてんかん患者は最大量の薬剤投与を受けていても発作が続く。2 現在、神経刺激装置で収益を確立している上場企業は 4 社あり、Medtronic 社、Boston Scientific 社、St. Jude Medical 社、そしてCyberonics 社である。各企業がほとんど重複していない特定のニッチ市場を持っている。これらの豊富なリソースを持つ企業がプラットフォーム技術を拡大するのに伴い、競争が大幅に増加するはずである。現在 20 社を超える新興企業がさまざまな病気を処置するための神経刺激装置を開発している。これらの企業は、ベンチャー投資会社および前述の上場企業の開発部門からの資金提供により資金面のサポートを受けている。これらの企業の製品は現在さまざまな開発段階にあり、多くが 5 年以内に臨床試験に入ると見込まれている。 埋め込み型神経刺激療法には主に迷走神経刺激療法 (VNS) 、脊髄電気刺激療法 (SCS)、脳深部電気刺激療法 (DBS) の 3 つの方法がある(図 1 参照)。 VNS:1997 年に Cyberonics 社が製造したてんかん処置向けの VNS 製品が最初に承認された。様々な器官の状態を制御する迷走神経は、脳幹から頚部、胸部、そして腹部に広がっている。 てんかん処置の一般的な外科的方法は、パルス発生器と左迷走神経束の周りに巻き付けた、らせん状の接触電極を有するリードを頚部の皮下に植え込む。しかしながら、VNS はてんかんの金字塔ではない。難治性てんかんの外科手術を代替することはなく、実行可能な代替治療法として捉えられている。3 VNS は特に迷走神経に接続された器官および筋機能など、その他疾患の処置にも用いられている。例えば、EnteroMedics 社は肥満に対処するため胃とすい臓の活動を整えるデバイスを開発している。 DBS:DBS は現在パーキンソン病、本態性振戦、失調症の処置に適応されている。DBS は脳の視床に電極を挿入するが、この療法は脳組織を切除する破壊的神経外科手術に比べ大きな利点がある。これまでのところ、Medtronic 社が唯一 FDA によって承認された DBS 装置を製造している。しかし、脳の異なる部分を刺激することで、複数の新たな DBS の臨床的応用が試みられている。Neuropace 社はてんかん処置向けの脳刺激装置を開発しており、IntElect Medical 社は脳卒中および脳外傷から患者が回復するのに役立つ装置を開発している。主に薬物療法の効力が乏しく、神経外科手術のリスクが高いという理由で、これらの新しい適応が保険適用となる可能性は十分にある。 SCS:SCS は主に物理療法と薬物療法が効かない場合、慢性疼痛の処置に使用される。SCS は、非疼痛性刺激が疼痛性刺激を抑制できると主張するゲートコントロール理論に基づいている。4 パルス発生器が脊髄後柱の神経線維に刺激を与える電極と共に腰部の皮下に植え込まれる。パルス発生器は最大 25mA の連続した電流を印加するが、これは VNS または DBS より高い出力である。より高い出力の結果として、SCS 装置は外部電源で充電されるパルス発生器内のバッテリーを使用する。埋め込まれた後、パルス発生器は医師によってプログラムされ、患者はハンドヘルド型インターフェースで調節することができる。 VNS、SCS、DBS は神経刺激療法の主な方法であるが、一方で他の方法もさまざまな臨床適応向けに開発されている。 新興企業は、神経刺激装置が患者に提供できる利益の拡大を促進する。例えば、CVRx 社は高血圧や心不全に対処する、頚動脈上に設置された刺激を与える圧受容器で、血流を改善する装置を開発している。 また、Apnex Medical 社は睡眠中に咽頭筋を刺激することにより、睡眠時の無呼吸に対処するシステムを開発している。

図 2 新しい装置はより先進的な技術を取り入れる必要がある。

図 2 新しい装置はより先進的な技術を取り入れる必要がある。(画像をクリックして拡大)

装置の有効性 神経刺激装置は、有効性が 30~60% と比較的低い。対照的に、植え込み型除細動器の変換有効性は通常低 - 中 - 90% の範囲である。5 神経刺激装置の臨床的有効性が低いことにはいくつかの理由がある。この産業全般がまだ有効な神経刺激効果を定義している段階であり、そして最適な臨床的価値を提供する装置を設計することは難しい。神経刺激療法は、モーター制御や疼痛、うつ、肥満、失禁の対処など、幅広い用途を網羅している。 臨床的分野が多様であり、各用途にそれぞれ有効性の定義があって、それぞれの有効性が完全には特徴付けられていないのである。 さらに、神経刺激療法の実際のメカニズムはよく理解されておらず、かつ VNS のメカニズムはほとんどが未知である。このブラックホールによって、療法がどのように最適の臨床結果を実現できるかを理解することが困難になっている。信号電流や周波数、パルス幅、パルス間のオン/オフ時間など一部の療法パラメータはプログラム可能である。従って、埋め込んだ後に医師がパラメータを調整し、患者に対して装置の性能を最適化することができる。 しかしながら、最適化の過程は時間がかかり、不確実である—臨床的な改善を得るために一年かかることもある。6 異常な神経の挙動がまだよく特徴付けられていないため、企業は療法の提供に保守的なアプローチを取っている。ほとんどの神経刺激装置は、異常な神経の挙動が生じているか否かに関係なく、電気を体の特定の部位に無期限に印加することによって作動する。これはこれまで、異常な神経の挙動が連続しており、かつ幾分予測可能な、特に慢性疼痛の処置に際して奏効してきた。しかしながら、てんかんなどの様に症状が間歇的、または重篤性にばらつきがある疾患の処置において、この対処法は不要な装置電力を使用することになる。 2015 年の神経刺激療法 5 年以内に開発される神経刺激装置は、神経症状の発現を検知し、アルゴリズムを使用して処置が適切で最適化されているかどうかを判定してから、治療を提供することができるはずである。これらのクローズドループデバイスは正確な検知に依存しており、そして正確な検知は明確に定義された脳活動のデータベース、電極、センサ配置および精度、信号処理のスマートなアルゴリズムなどの様々な要素に依存している(図 2 参照)。これらの改良は、電源管理や遠隔測定通信、患者中心の設計における進歩と組み合わされて、より高い装置の有効性を実現するはずである。 検知、検出、治療:神経刺激療法産業における脳波に関するデータベースはまだ広く普及しておらず、特徴付けられていない。NeuroVista 社はこの問題に取り組むべく、神経活動を検知・検出して、てんかん患者の発作の始まりを予測する埋め込み型装置を開発している。これは神経病理学の信号キャラクタリゼーションに対する初の大きな商業的試みである。この検知技術がさらに開発・評価されるにつれて、真に破壊的革新をもたらす治療アルゴリズムに重要な情報が提供される可能性がある。 しかしながら、そのような技術の実現は容易ではない。デバイスアーキテクチャは神経刺激装置の検知、検出、治療提供の性能を促進しなければならない。 これら装置の裏側にある頭脳、マイクロエレクトロニクスの設計は、この装置のインテリジェンスを獲得するための主要なアーキテクチャ要素の 1 つである。マイクロエレクトロニクスは厳格な品質と高信頼性の性能で、さまざまな電力、速度、処理、そしてメモリ要件全てを達成する必要がある。 また、アナログおよびデジタル ASIC(特定の用途向け集積回路)の開発も非常に重要である。これによって、企業がプラットホームアーキテクチャをカスタマイズし、堅牢な製品設計を開発できるようになるためである。しかし、ASIC の開発は完成するまでに何カ月もの時間がかかり、かつリソースと時間、材料に 100 万ドル以上かかることがある。ビジネスリスクを大幅に減少させるため、企業は ASIC チップにエミュレーションを行うことができる。エミュレーションは、 ASIC チップの性能をリアルタイムで監視しながらシミュレーションとテストを行うことを可能にする。 ASIC チップとマイクロエレクトロニクスがソフトウェアとファームウェアに可能な限り最高のアーキテクチャを提供するよう確約することで、改良された信号検知、検出、および治療につながる。 電極の設計と配置:歴史的に、電極の設計は神経学的構造向けに最適化されていない。初期の電極設計は心臓ペーシングと除細動用から転用したものである。以来、設計は進化してマルチノード電極アレイを含むようになり、プログラミングにおける柔軟性を実現している。将来の電極には以下の 3 つの理由により一層の革新が必要である。 電極設計の改良は適用される治療にさらなる指向性を提供できる。 電極が局所的な瘢痕組織を最小にできれば、信号検知の感度を向上できる。 電極の配置は検知と治療の送達に非常に重要なため、電極の機械的設計は簡単でより正確な挿入を促進しなければならない。 手術後に電極を視覚化することは容易であるが、手術中に正確に電極を視覚化して付着させることは未だ困難である。手術の後に電極の位置を変えることは難しいため、これは問題である。幸い、臨床上のデータでは電極の配置で合併症を起こす確率は低いことが示されており、配置がよくないケースでは電極の指向性をプログラムし直すことで通常は問題を解決できる。7 神経刺激療法の適応が拡大するにつれて、特に DBS では、より正確な電極配置が必要である臨床的シナリオが生じるだろう。

図 3 4 つのサブシステムから成る現行の神経刺激装置。

図 3 4 つのサブシステムから成る現行の神経刺激装置。(画像をクリックして拡大)

電源管理神経刺激装置は、通常連続した低レベルの電流を印加することによって作動する。VNS と DBS で印加される電流は 1.0~3.5mA の範囲であり、バッテリーの寿命は通常 8~12 年である。SCS では 20~25mA の電流が必要であり、より大型の電源が必要となるため、より大きなバッテリーを格納できる装置の全体的な大きさが必要となる。8 埋め込み型デバイスの小型化傾向が強まるにつれて、SCS 装置を開発している企業は充電式の電源システムの使用を選択するようになっている。その結果として、SCS システムは(通常は誘導式電力伝達による)外部電源によって充電される内部バッテリーを備えている。このアーキテクチャは、埋め込み型装置の小型化を実現したものの、代わりに患者が頻繁に生命を左右するバッテリーを充電する必要を生じさせている。バッテリーの充電は必要ではあるが、神経刺激療法の電源には次のような 2 つのチャンスがあり、二次電池を排除して結果的に患者の生活の質を向上できる可能性がある。 第一に、バッテリー部品技術は高エネルギー密度セルを装置の設計に組み入れ、改良し続ける必要がある。厳格な水準の品質管理、信頼性試験、設計検証が要求されるため、このプロセスは複雑になる可能性がある。将来的には、人体から不要となったエネルギーを収穫するエネルギースカベンジングシステムを組み込むことで、神経刺激装置に補助的な電力を提供できるかもしれない。例えば、Zarlink Semiconductor 社は Perpetuum 社およびその他企業と組んで、Self-Energizing Implantable Medical Microsystem (SIMM;自己給電式埋め込み型医療用マイクロシステム) を作製するプロジェクトを行っている。2008 年、SIMM コンソーシアムはエネルギースカベンジングシステムの臨床試験を実施し、植え込み型心臓ペースメーカーを部分的に動かすことに成功した。この装置は、ジェネレータを駆動するために心室内圧較差を使用するカテーテルを介して、心拍出量からエネルギーを収穫する。この技術は神経刺激装置の電源管理に役立つかもしれないが、技術的課題は残っている。心拍出量またはその他エネルギー源を利用する追加の埋め込みシステムを持つことのコストと、利益を評価する必要がある。 第二に、電源管理は神経刺激療法の開発の中で集中的に実行される必要がある。装置は最小量の電力で治療の適用が必要な時に覚醒し、発現時に動作する高度な睡眠―覚醒アルゴリズムを用いることで電力消費量を最小にすることができる。これは、この様なアルゴリズムと正確な検知機能をサポートするための電気構造が必要となる。また、改良された電極設計と配置は、不正確に配置された電極と同様の臨床効果を達成するために必要とする電力がより少ないため、電力消費量を向上することができる。 遠隔測定法およびデータネットワーク:埋め込まれた神経刺激装置において、遠隔測定法は医師が識別情報やバッテリー状態などの基本情報、および神経の活動履歴などより詳細な情報を収集することを可能にする。また医師は、パルス発生器をプログラムして定期的にその性能を高めることができる。患者は自身の神経刺激装置と相互作用し、自身の処置を制御できるようになるため、遠隔測定法は破壊的革新の重要な分野である。 今後数年で、遠隔測定法は神経刺激療法の患者に対する総合的な有効性の向上において、極めて重要な役割を果たすようになる可能性がある。神経の活動は包括的かつ集中化した方法で特徴付けられておらず、そして将来の有効性は既存のデータベースの品質に依存する。治療中に神経の活動を記録することで、改良された装置の開発に貴重な情報を提供できる。遠隔測定法は、埋め込まれた電気地図の様に作用する、複数の電極にわたる複数のユニットの記録から中央へのデータ伝送を可能にすることにより、科学的理解と今後の製品改良に貢献できる可能性がある。 患者中心の設計と制御:個人に合わせてカスタマイズされた療法は、神経刺激療法において至高の目標である。 同じ疾患を持つ多くの患者が重篤度および進行の療法において非常に異なる症状を示し、これは製品設計を複雑化する。プラットフォーム技術は効率的な設計と製造を可能にするが、非常に個人的な症状を示す患者にとって、最良の臨床的価値を生まない可能性がある。 また、特に新興企業など一部の企業にとって、個人に合わせた療法に焦点を置く事は財政上実行不能である。 システム構築に関する重要な決定は設計プロセスの早期に下す必要がある。理想をいうと、プラットフォーム技術は様々な用途に広く互換性がある要件を満たすことに重点を置く一方で、外科的手順、医師によるプログラミング、または患者用インターフェースを介したカスタマイズを可能にし、製品の性能を最適化して臨床的価値を向上させることができなければならない。 通常、埋め込み型装置の操作は、患者の治療に関する心配事を取り除き、普通の生活を追求できる様にするため、患者から分離されている。患者が自身の治療をより意識する様になるにつれて、患者は詳しい情報とコントロールを主張するようになる。複雑な医療機器のプログラミングと操作には医療と技術の専門家が必要であるため、装置に対する患者のコントロールは困難である。だが、装置での治療経験に患者を取り入れる製品設計の機会は残っている。 神経刺激装置、具体的には SCS は、患者用のインターフェース装置の組み込みを始めている。Boston Scientific 社の Precision Plus システムは、このコンセプトの先駆けであり、患者がジョイスティックコントローラで疼痛処置の位置を拡大したり、変えたりする事ができる。また、St. Jude Medical 社もプログラムされた処置の強さと位置を患者が調整できるリモートコントロールがある。

SatheFig4-2これらは患者のニーズに対応する第一歩である。 将来の製品革新は、包括的なユーザ調査を通して患者のニーズを特徴付けることにより、臨床的有益性を高める事ができる。ユーザ調査は臨床的成果と生活品質の向上の確約における重要な設計のステップであり、このステップが最終的に力強い市場拡大につながるのである。

迅速な製品投入 破壊的革新の機会は、デバイス技術の進歩に存在しているだけではなく、企業による装置の市場投入を加速するプロセスの中にも存在する。装置設計が成熟するにつれ、設計移管、製造プロセス開発、および製造立ち上げの重要なステップが、企業の臨床試験の実施と市場への浸透性の獲得を可能にする。一般に確立されたインフラストラクチャを擁する大企業では、これらのフェーズがよく管理されている。しかしながら新興企業においては、作業のこれらのフェーズに進んでいくための取り組み、コスト、時間がしばしば過小評価され、意図している出口戦略とキャッシュフローに影響する相当のスケジュールの遅れをもたらすことがある。そのような遅れは非常に競争が激しく、浸透性が不十分な神経刺激装置市場では特に深刻化する。従って、神経刺激装置の新興企業の競争における成功は、研究企業から設計および製造企業へと効率的に移行する能力に大きく依存する(図 4 参照)。 撤退の計画:早期段階にある神経刺激装置の企業は、多くの医療デバイス新興企業と同様に、買収される、知的財産をライセンスする、または株式公開する、などの出口戦略を用意して設立される。余裕のない資金繰りに財政的な監視の強化が加わると、良好な臨床試験データを示す事ができない限り、Class III デバイスを展開する新興企業が買収される事は、ほとんどないと言う事を意味する。企業は安定して増加している収入源で市場への浸透を示す必要がある。買収を検討する企業は、買収の前に投資リスクが十分に減少されたことを確認したがるものである。 結果として、神経刺激装置の新興企業は適切な出口戦略を念頭においた上で、製品開発プロセスを行わなければならない。これら新興企業はより優れたデバイス性能、品質、そして減少されたリスクを示すために、より長期間自らに資金を供給する準備ができている必要がある。これは、堅牢な品質システムの構築と、設備や研究室スペース、材料、リソースを格納できる適切な施設の建設と同時に達成されなければならない。これらの要件は全てお金がかかり、そして余裕のない資金の観点から、コンセプト生成から増産までの製品開発プロセス全体をより効率的にする必要がある。 設計移管および製造プロセス開発:設計移管、プロセス開発および検証は、効率的に管理されていない事がよくある製品開発のフェーズである。設計移管はすべての設計ファイルを製造チームに手渡す 1 つの時点を単に意味するのではない。それは製造とアセンブリのために設計の様々なレベルの分析にかかわる段階的なプロセスである。設計移管を行う前に、クリーンルームの建造、製造プロセスのマッピング、資本設備の購入と据付、そしてプロセス手順の定義を行う必要がある。また、サプライヤと製造提携先を選定かつ監査し、コンポーネントの安定したサプライチェーンを構築する必要もある。設計が移管される際、製造プロセスには、設備運転時適格性評価により厳格な性能マッピングを行い、設備性能適格性評価の前にプロジェクトのリスクを大幅に減少する事が必要である。設計確認試験は、装置のシステムと試験法を包括的に評価するため、試運転に割り当てる時間も含めて慎重に計画しなければならない。 臨床的価値の向上 医療のコスト上昇は、向上された臨床的価値を提供する装置の開発をより強調する事になる。CE マークと FDA(食品医薬品局)の認可は製品開発における重要な金字塔であると考えられているが、CMS からの認可は往々にして市場での成功か失敗のどちらかに導く二極化された重大事件である。この状況は、高価な神経刺激療法用埋め込み型装置では拡大される。 例えば、DBS 装置の平均コストは 25,000 ドルから 30,000 ドルの範囲であり、通常保険の適用で半分ほどのコストになる。保険適用範囲を広げるには、神経刺激装置の企業は積極的に CMS に関わりを持たなければならない。これは複数の分野での取り組みを必要とする。第一に、装置と治療成果を一貫して評価するため、臨床の有効性を定義するより、標準化したプラクティスを様々な神経刺激療法の方式向けに開発する必要がある。第二に、神経刺激装置の企業は、製品設計の早期に臨床試験の設計を取り入れる必要がある。臨床試験では臨床成績を示すだけではなく、ターゲットとする適応の代表的な製品と比べて、装置の全体的な利点とコストを確立しなければならない。トライアル設計にこのコンセプトを取り入れる神経刺激装置の企業は、製品に対する保険適用範囲を向上する事ができる。

図4 新興企業にとっては、研究・開発・製造の工程を迅速におこなえるかが焦点になってくる。

図4 新興企業にとっては、研究・開発・製造の工程を迅速におこなえるかが焦点になってくる。(画像をクリックして拡大)

既存の企業は、早期に革新し、市場シェアを高めるために製品ラインを拡張すると共に、販売力と流通を確立することによって成長してきた。 流動性がより大きかった時、小規模の企業の買収は確立された流通販売に新たな製品を組み込んだ。例えば、2005 年の St. Jude Medical 社による Advanced Neuromodulation Systems 社の買収は、神経修飾ビジネスを促進した。現在、既存の企業にはビジネスモデルを進化させる機会がある。大企業は、装置のコストとメリットに焦点を合わせた製品と臨床試験を設計するためのリソースと資金を持っている。大企業の大型研究チームは、革新の動力となる事ができる。同時に、これらの企業は早期のコモディティ化を回避しなければならない。CMS から見て臨床的価値を高める設計改良に重点を置くことは、製品ラインの拡張よりはるかに実りが多い可能性がある。 新興企業は、ベンチャーキャピタル旋風を巻き起こし、迅速に臨床試験を行い、買収され、そして次のベンチャーへ移行する、というモデルが典型的である。しかし、神経刺激療法の市場には破壊的革新の十分な機会がある。個人に合わせた治療向けにカスタマイズされたプラットフォーム技術を作り出す新興企業は、スタミナと評定が高まる。これには賢い製品計画、効率的な商品開発および製造が必要となる。 終わりに より良い臨床的価値の達成への道のりにおいて、神経刺激装置の企業は市場調査、製品戦略、パイプライン、デバイス開発、そして技術の実行に再び焦点を合わせる必要がある。神経学的病変の検知・検出とアルゴリズム開発の重要な技術革新は、デバイスの有効性向上に役立つ。人間工学を通したユーザのニーズの再定義と、遠隔測定技術の利用は、患者が自身の疾患に対してより多くのコントロールを獲得する事を可能にする。 革新はデバイス設計の域を超える。革新はより効率的な設計移管と製造立ち上げの機会を提供し、神経刺激装置の企業が迅速に製品を市場に投入する事ができる。早期の段階にある企業は、ほとんど浸透していない市場に参入すべく競争するため、それら企業にとってこれは特に重要である。最終的には、臨床的価値の向上に取り組む神経刺激装置企業がマーケットリーダーとして台頭し、患者と医療システム全体にメリットをもたらすだろう。 参考文献 1.CM Christensen, The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail (Boston: Harvard Business Press, 1997). 2. S Wiebe et al., “A Randomized, Controlled Trial of Surgery for Temporal-Lobe Epilepsy,” New England Journal of Medicine 345, no. 5 (August 2, 2001): 311–318. 3. AA Cohen-Gadol et al., “Neurostimulation Therapy for Epilepsy: Current Modalities and Future Directions,” Mayo Clinic Proceedings 78, no. 2 (February 2003): 238–248. 4. R Melzack and PD Wall, “Pain Mechanisms: A New Theory,” Science 150, no. 3699 (November 19, 1965):971–979. 5. M Gold et al., “Comparison of Defibrillation Efficacy and Survival Associated With Right Versus Left Pectoral Placement for Implantable Defibrillators,” American Journal of Cardiology 100, no. 2 (2007): 243–246. 6. JL Vitek, “Deep Brain Stimulation: How Does It Work?,” Cleveland Clinic Journal of Medicine 75, (March 2008): S59–65. 7. A Foletti, A Durrer, and E Buchser, “Neurostimulation Technology for the Treatment of Chronic Pain: A Focus on Spinal Cord Stimulation,” Expert Review of Medical Devices 4, no. 2 (March 2007): 201–214. 8. D Panescu, “Emerging Technologies. Implantable Neurostimulation Devices,” IEEE Engineering in Medicine and Biology Magazine 27, no. 5 (September-October 2008): 100–113. Rahul Sathe is senior mechanical engineer at Cambridge Consultants (Cambridge, MA). 本記事は、MD+DI 誌2010 年2月号に英語で掲載されました。

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