液体流量検知の簡略化

U. Kanne, Sensirion AG, Staefa, Switzerland マイクロセンサ技術の進歩は、マイクロ流体アプリケーションにおけるパフォーマンスの信頼性の向上につながる可能性を秘めている。この技術とその可能性について論じる。 マイクロセンサソリューション Kanneマイクロ流体システムにおける液体の確実な移動は、困難であることが知られている。最高のパフォーマンスと高い信頼性を可能にするため、流体システムは少量の液体を扱うと同時に、目詰まり、漏出、そして気泡を識別できなければならない。一貫した再現可能な流速は様々なアプリケーションで不可欠であるが、それらアプリケーションで使用されるポンプは安定性が不足しているか、価格が高すぎる。 この分野における改良を限定する一般的な因子は、適切なセンサの不足である。それにもかかわらず、市場と監督機関はより高い安全性、プロセス監視機能、そして電子的なプロセスの記録を要求している。マイクロセンサ技術とラボオンチップ技術の組み合わせで、液体流量検知と気泡検出用のマイクロセンサの非常にコンパクトで経済的な世代の開発が可能になっている。この開発は、血液ガス分析装置やフローサイトメータ、麻酔気化器、薬物送達システムなどのポイントオブケア装置に利益をもたらすことが予想される。 センサにアクチュエータを組み合わせると、あらゆるタイプのメカトロニクスシステムの信頼性と精度が向上される事はよく知られている。流量センサは、バルブやポンプの機械的な低精度を補う事ができ、同時に目詰まりと漏出の検出もできる。比較的新しい分野であるマイクロフルイディクスでは、小型で費用対効果に優れたセンサ部品の不足のため、この一般的な戦略はまだ広く使用されていない。従来の産業用流量センサユニットは、コンピュータのハードディスクドライブと少なくとも同程度の大きさがあり、大量生産されていても価格下落にはつながっていない。爪ほどのサイズで約 1g の重量に縮小されたパッケージに必要な機能性を詰め込むことができれば、多くのアプリケーションに新たな機会が開かれる。 より小さく、速く、効率的に マイクロマシンシステム (MEMS) テクノロジーにおける技術的進歩は、革新的で信頼性の高いマイクロセンサ部品の製造を可能にし、それら部品はより小さく、より手頃な価格で、より低電力のアプリケーションに対応できる様になっている。この小型化は、自動的に時定数の減少につながり、結果としてはるかに短い応答時間を実現する。

図 1:熱流量測定の運用原理(画像をクリックして拡大)

図 1:熱流量測定の運用原理(画像をクリックして拡大)

熱測定の原理は、少量の液体流量の検知に最もよく使用される。 最新の相補型金属酸化膜半導体 (CMOS) ベースのマイクロセンサは、微量のエネルギー(1 測定あたり 100~200 マイクロジュール)を液体に注入する微小な発熱体を含んでいる(図 1)。 専用に最適化された一対の低ノイズ熱電対がマイクロ発熱源の上流と下流に対称に設置される。これら熱電対が数ミリ秒内に摂氏 15 マイクロ度の分解能で温度を測定する。 この差温情報を使用して、個別の装置の較正データ(参照表など)を利用する事により、実際の絶対流速または投与量(標準精度 3%)を判定する。マイクロセンサ素子のサイズが微小なため、その時定数は小さく、流量測定の応答時間は約 30 ms である。これはつまり、例えば拍動型ポンプによって形成される変化の様な非常に動的な変化でさえも、このセンサでモニタできる事を意味する。この高速性の証拠は、センサを通過する微細気泡への瞬間応答において見ることができる(図 2)。信号処理のため、デジタル CMOS マイクロセンサは 1 つの CMOS マイクロチップ上でマイクロセンサ技術とデジタル信号処理を組み合わせている(CMOSens 技術と呼ばれる)。またこれらのチップは、使い捨てのアプリケーションに不可欠な機構である個別の装置の較正データ用メモリを含む。これにより、ユーザによる現場での較正の必要なく、センサ部品の完全な互換性が保証される。

図 2:応答時間の短縮で気泡検出が可能になる。(画像をクリックして拡大)

図 2:応答時間の短縮で気泡検出が可能になる。(画像をクリックして拡大)

各センサは製造工程の一部として個別に較正される。表 I にマイクロセンサ技術の発展の概要を示す。 大量生産のための簡素化

図 3:標準的なマイクロ流体チップ。(出典:Micronit Microfluidics BV)。(画像をクリックして拡大)

図 3:標準的なマイクロ流体チップ。(出典:Micronit Microfluidics BV)。(画像をクリックして拡大)

これら最新のマイクロセンサの感度は、完全に隔離された流路の壁を通過して非侵襲的に温度差と流速を測定する事ができる。 この流路はガラス、プラスチック、セラミック、そして鋼鉄から作る事ができる。また、平板状のマイクロ流体基板に流路を形成する事もでき、これらを作るための技術はラボオンチップシステム(図 3)で使用されるものと同じである。流路を覆う最上層の厚さが 100μm を超えていない限り、マイクロセンサチップを外部に取り付け、この最上層を通して流速を確実に測定することができる。平板状基板の外表の金属皮膜がマイクロセンサチップと外部との電気接続に必要な回路を提供する。接続は、正確に 2 つのマイクロ部品の位置合わせをして接続するために、半導体業界に一般的に使用されるフリップチップ接続により形成される。この新しい平面実装技術に基づいた流量センサは、流路を含む平板マイクロ流体チップと、マイクロ流体チップの最上層を通して非侵襲的に測定を行うマイクロセンサチップの 2 つの部品から構成されるデバイスにおいて、機械的堅牢性、電気的接続、及び流体接続を兼ね備える(図4)。

図 4:爪ほどのサイズの非侵襲性デジタル液体流量センサ。(画像をクリックして拡大)

図 4:爪ほどのサイズの非侵襲性デジタル液体流量センサ。(画像をクリックして拡大)

2 つの中核的テクノロジーがここで結合されている。マイクロ流体チップとデジタルマイクロセンサチップが直接一体として結合される。通信はデジタルマイクロセンサチップの不可欠の一部である標準デジタル I²C バスインターフェースによって提供され、線形化した温度補償済みの流速値を容易に読み取ることができる。 上述の流路を備えたマイクロ流体チップは、アプリケーションの特定の要件に従い標準の製造プロセスを使用して製造する事ができる。例えば、センサ流路基板は追加の流量検知機能を備えた別個のラボオンチップシステムとしたり、あるいは図 4 に示すように、ディスクリートで小型化された流量センサ素子の基礎を形成する簡単な流路基板としたりする事ができる。下部に流体入口と出口があるこのタイプのディスクリート型生体適合性センサ素子は、あらゆる流体マニホールドシステムに確実に接続することが可能である。これらのセンサ素子でより高い流速を測定するには、シャント構造を利用して流れの特定の一部を測定することで、流れの流速を測定することができる。 センサの信頼性と長期的安定性が立証されていない場合、センサの設計品質は疑わしいものとなる。平面実装技術に基づくこのタイプの流量センサに対しては、統計的に適切な数の試料を用いて -40 ℃から +80 ℃までの温度衝撃サイクル 1000 回を行う試験を含む負荷試験が実行されている。これら試験によって新しいセンサ技術は、負荷試験後に測定の安定性と再現可能性を 1% の範囲内に保つというハードルを越えたことが示されている。そして紛れもなく、良いセンサ設計のもう 1 つの重要な要素は、製造のしやすさである。これは大量の製品に対するマイクロ技術、データ管理、そして較正の豊富な専門技術を必要とする。ほかのタイプのマイクロセンサの大量生産の経験があれば、この課題に確実な基礎を提供し、生産量の増加を成功させる事ができる。 将来的な可能性 更なる小型化とプロセス監視増加のトレンドは、大量生産技術を具現化したこれらの極めてコンパクトなセンサ素子によってサポートされる。高効率な平面実装アプローチは、液体流量マイクロセンサの簡素化における飛躍的な進歩である。これらセンサ素子は、マイクロポンプあるいは気泡検出を含むアクティブ制御やプロセス監視用のバルブなどのアクチュエータに組み合わせられる。この種のソリューションは、例えば血液と尿のサンプルを用いる診断装置などにおいてますます一般的になる。より高レベルの統合で、直接あらゆる種類のラボオンチップシステムとマイクロリアクタチップに結合させる事が可能である。この技術に基づいて革新が期待されるもう 1 つの分野は、集中治療室用輸液システム、インスリンポンプ、体内埋込用ポンプ、そして定量噴霧式吸入剤などを含む薬物送達セクタである。 追加の電子モニタリングと制御機能を加えると同時に、精度と安全性を高めるための技術的オプションの範囲は、低流量のアプリケーション向けに大幅に拡大されている。経済的で、小型化されたセンサ/アクチュエータの組み合わせが新しい視点を切り開くだろう。 Ulf Kanne is Director of Sales and Marketing for Liquid Flow Products at Sensirion AG, Laubisruetistrasse 50, CH-8712 Staefa, Switzerland, tel. +41 44 306 4000, e-mail: info@sensirion.com http://www.sensirion.com/ 本記事は、Medical Device Technology 2009 年9 月号に英語で掲載されました。

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